お店のメニューで「ブレンド」と書かれていると、とりあえずそれを頼んでいる。スーパーの豆売り場でも「○○ブレンド」がずらりと並ぶけれど、いったい何と何が混ざっているのか、ストレートの豆と比べて何が違うのかは、案外はっきりしないものです。「ブレンドって、余った豆を混ぜたもの?」と思っている人もいるかもしれません。
先に結論を言うと、ブレンドは全日本コーヒー協会の説明によれば「単体では出せない風味を出すために、数種類の豆を配合すること」です。好みの風味を出す、新しい風味をつくる、品質を揃える、価格を安定させる、という4つの目的があり、配合する種類は一般的に3〜5品種が適当とされています。
この記事では、協会やメーカーの公式情報をもとに、ブレンドの定義からストレート(シングル)との違い、豆ごとの役割、酸味・苦味・コクの配合例、焙煎のタイミングによる味の差、パッケージ表示の読み方、そして家で自分のブレンドを作る手順までを、理屈から順番に整理します。
・ブレンドの定義と、全日本コーヒー協会が挙げる4つの目的
・ストレート(シングル)との違いと、場面ごとの選び分け
・酸味・苦味・コクの配合例と、3〜5種類が目安とされる理由
・パッケージの「○○ブレンド」表示や生産国名の読み方と、家での作り方
コーヒーブレンドとは?協会の定義と「混ぜる目的」を最初に押さえる

答えは「単体では出せない風味」をつくるための配合
ブレンドとは、ひと言でいえば複数の豆を組み合わせて一杯の味を設計することです。全日本コーヒー協会のコラムでは、ブレンドを「単体では出せない風味を出すために、数種類の豆を配合すること」と説明しています(全日本コーヒー協会「焙煎・配合・粉砕」)。
ここで大事なのは、定義の主語が「風味」になっている点です。つまりブレンドは、豆を節約するための混ぜ物ではなく、狙った味に近づけるための手段として位置づけられています。1種類の豆には、それぞれ酸味が出やすい、苦味が出やすい、香りが立ちやすいといった個性があります。その個性を足したり引いたりして、単品では届かない味のバランスをつくるのがブレンドの考え方です。
家で豆を選ぶときにやりがちなのが、「ブレンド=特徴のない無難な味」と決めつけてしまうこと。実際には、酸味寄りにも苦味寄りにもコク寄りにも設計できるので、パッケージの説明や生産国名を見て、どんな味を狙った配合なのかを読み取るほうが選びやすくなります。まずは「ブレンドは味の設計図」と覚えておくと、この先の話がすっと入ってきます。
UCCの用語辞典では「配合」とも呼ぶ
メーカー側の定義も見てみましょう。UCCのコーヒー用語辞典では、ブレンドを「各コーヒー豆の特徴を踏まえて新しい味わいを創造するために、割合を決めて合わせること。「配合」とも言う。」と説明しています。
協会の定義と並べると、共通しているのは「豆の特徴を知ったうえで、目的の味に向けて合わせる」という点です。UCCの説明はさらに「割合を決めて」と明記していて、何をどれだけ入れるかという比率までがブレンドの中身だと分かります。同じ2種類の豆でも、半々にするのと片方を多めにするのとでは、カップに出る味が変わるわけです。
やりがちな誤解は、「ブレンドは銘柄の名前」と思い込むこと。実際には「ブレンド」は配合という行為や、その結果できた豆を指す言葉で、特定の銘柄名ではありません。だからこそ、同じ「ブレンド」という名前でも、作り手によって中身も味もまったく違います。豆を選ぶときは、名前より「どの豆を、どんな割合で、何を狙って」合わせたかに目を向けると、自分の好みに近いものを見つけやすくなります。
4つの目的は「味」と「安定」の2つに分けると分かりやすい
全日本コーヒー協会は、ブレンドには「①好みの風味を出す②新しい風味をつくる③調和の取れた品質を維持する④価格を維持・安定させるという、4つの目的があります。」と整理しています(全日本コーヒー協会)。
この4つは、大きく2つのグループに分けると頭に入りやすくなります。①と②は「味をつくる」目的、③と④は「同じ味を続ける」目的です。①は作り手や飲み手が思い描く味に近づけること、②は単品にはない組み合わせの味を生み出すことです。③と④は、毎回同じ品質・同じ位置づけの商品として届け続けるための目的といえます。
家庭でありがちなのは、①②だけに目が行き、③④の視点を忘れることです。たとえば気に入ったブレンドを自分で再現しようとして、毎回なんとなくの量で混ぜると、味が日によってぶれます。「割合を記録して同じ配合を繰り返す」こと自体が、③の調和の取れた品質を保つという目的の家庭版です。4つの目的を知っておくと、市販のブレンドがなぜ定番として長く続くのか、その理由も見えてきます。
意外と知られていない「ブレンド=格下」ではない理由
実は、ブレンドをストレートより一段下の豆とみなす根拠は、協会やメーカーの定義からは出てきません。全日本コーヒー協会の定義の出発点は「単体では出せない風味」であり、UCCの説明も「新しい味わいを創造するために」です。どちらも、ブレンドを単品の代用品ではなく、別の目的を持った選択肢として扱っています。
確かに④の「価格を維持・安定させる」という目的もあるため、「安くするために混ぜている」という印象を持つ人もいるでしょう。ただ、それは4つのうちの1つにすぎず、①〜③の味と品質の目的と並んで挙げられています。価格の安定も、言い換えれば「同じ味を同じ位置づけで飲み続けられる」ことにつながる目的です。
注意したいのは、だからといって「ブレンドのほうが上」でもないことです。ストレートには豆の個性をそのまま味わえる良さがあり、どちらが優れているかではなく、何を楽しみたいかで選ぶものです。次の章では、この2つの違いをもう少し具体的に比べていきます。
ブレンド=単体では出せない風味を出すために、数種類の豆を配合すること(全日本コーヒー協会)。UCCの用語辞典では「配合」とも呼ぶとされています。
ストレート=特定の産地など、単品のコーヒー豆のこと。数種を混合した「ブレンド」に対比した言い方(UCC用語辞典)。「シングル」と呼ばれることもあります。
ストレート(シングル)と何が違う?味の出方とメニュー表記で比べる
ストレートは「単品の豆」で、個性がはっきり出る
ストレートについて、UCCの用語辞典は「特定の産地など、単品のコーヒー豆のこと。」と説明し、数種を混合したブレンドに対比した言い方だとしています。UCC COFFEE MAGAZINEでも、一種類のコーヒー豆からなるものをストレートと呼び、「シングル」と呼ばれることもあると紹介されています。
ストレートの良さは、1種類の豆の性格がそのままカップに出ることです。UCC COFFEE MAGAZINEでは「ストレートでは、味や香りがはっきりしており、その豆の個性をダイレクトに味わうことができます。」と説明されています。
やりがちな失敗は、ストレートを飲んで「酸っぱい」「クセが強い」と感じ、コーヒー自体が苦手だと思ってしまうことです。個性がはっきり出るということは、好みに合わないときも、その差がはっきり出るということでもあります。ストレートを試すときは、パッケージに書かれた生産国名や焙煎度を確かめ、一度に多く買わず少量から始めると、自分に合う豆を探しやすくなります。
ブレンドは長所を生かし、短所を補い合う
一方のブレンドについて、UCC COFFEE MAGAZINEは、それぞれのコーヒー豆の長所を活かし合ったり、短所はカバーし合ったりと、味の相乗効果を生み出せる点を魅力に挙げています。ストレートが「1人の演奏」だとすれば、ブレンドは「合奏」に近いイメージです。
理屈としては、豆ごとに得意な味の方向が違うからです。たとえば酸味が出やすい豆だけでは酸味が前に出すぎるところに、苦味やコクが出やすい豆を少し加えると、口に含んだときの印象が丸くなる、といった調整ができます。この「足し引き」で単品にはない味をつくるのが、前の章で見た「新しい風味をつくる」目的にあたります。
注意点は、混ぜれば必ずおいしくなるわけではないことです。個性の強い豆どうしをぶつけると、互いの良さを打ち消してしまうこともあります。だからこそ、作り手はベースとなる豆とアクセントとなる豆を分けて考え、割合を決めて配合します。ブレンドを選ぶときは「何を主役にした配合か」を意識すると、味のイメージをつかみやすくなります。
メニューやパッケージの表記で見分けるコツ
お店のメニューやパッケージでは、表記の仕方でブレンドかストレートかをある程度見分けられます。UCC COFFEE MAGAZINEによると、ストレートは「モカ」「ブルーマウンテン」「ブラジル」など、単一の品種名・産地・生産国名で書かれるのが一般的です。対してブレンドは、店頭では「●●●ブレンド」のような名前がついていたり、パッケージ商品では複数の生産国名が表記されていたりします。
つまり、名前に国名や産地名が1つだけなら単品の可能性が高く、「ブレンド」の文字や複数の国名が並んでいれば配合された豆、と読むのが基本です。パッケージの原材料欄の書き方には業界の決まりもあり、これは後半の表示ルールの章で詳しく扱います。
やりがちな勘違いは、「○○ブレンド」の○○に産地名が入っていると、その産地の豆だけでできていると思ってしまうことです。名前に産地名が入っていても、それはあくまで配合された豆の1つで、ほかの豆も入っています。表の見出しだけでなく、原材料欄の生産国名まで目を通す習慣をつけると、思っていた味と違うという失敗を減らせます。
どちらを選ぶ?場面と好みで決める使い分け
ストレートとブレンドは優劣ではなく、楽しみ方の違いです。豆の個性をはっきり味わえるストレートと、バランスや安定を狙えるブレンド、それぞれに向く場面があります。
毎朝同じ味で一日を始めたい人や、ミルクや砂糖を合わせることが多い人には、味のバランスを設計したブレンドが選びやすいでしょう。産地ごとの違いを知りたい人、週末にじっくり一杯を味わいたい人には、ストレートの飲み比べが向いています。ドリップを始めたばかりで味が安定しない人は、まず定番のブレンドで淹れ方を固め、慣れてからストレートで豆の違いに目を向けると、どこで味が変わったのかを判断しやすくなります。
注意したいのは、淹れ方が安定しないうちに豆の種類をどんどん変えると、味の違いが豆のせいなのか淹れ方のせいなのか分からなくなることです。豆を変えるときは、豆の量・湯の量・挽き目などの条件をなるべく揃えて比べるのがコツです。
| 項目 | ブレンド | ストレート(シングル) |
|---|---|---|
| 中身 | 数種類の豆を割合を決めて配合 | 特定の産地など単品の豆 |
| 味の出方 | 長所を生かし短所を補い合う相乗効果 | 味や香りがはっきりし、豆の個性をそのまま味わえる |
| 表記の例 | 「●●●ブレンド」、複数の生産国名 | 「モカ」「ブラジル」など単一の名前 |
| 向いている人 | 毎日同じ味で飲みたい、ミルクと合わせたい | 産地の違いを知りたい、飲み比べたい |
出典:UCC用語辞典・UCC COFFEE MAGAZINE・全日本コーヒー協会の説明をもとにコーヒーの教科書編集部が整理
どの豆が何を担当する?品種と産地から見る「ベース」と「アクセント」

飲用の品種はアラビカ種とカネフォラ種の2つ
ブレンドに使われる豆を理解するには、まず品種の大枠から。全日本コーヒー協会は「飲用目的で栽培され流通しているのは「アラビカ種」「カネフォラ種(通称ロブスタ)」の2つです。」と説明しています(全日本コーヒー協会「コーヒーの基礎知識「栽培」」)。
同じコラムによると、アラビカ種は生産量全体の6割弱を占め、ストレートの飲用に適しているとされる一方、サビ病などの病害虫に弱い性質があります。カネフォラ種は生産量全体の4割強で、単品で飲むにはあまり適さず、主にインスタントコーヒーの原料に使われていると紹介されています。
ここでやりがちな誤解は、「ロブスタ」と「カネフォラ」を別の豆だと思うことです。協会の説明では、ロブスタはカネフォラ種の通称で、同じものを指しています。配合例やパッケージに「ロブスタ」とあれば、カネフォラ種のことだと読み替えて大丈夫です。品種の違いは味の方向に直結するので、ブレンドの中身を読むときの最初の手がかりになります。
カネフォラ種は「苦味の担当」として加わることが多い
カネフォラ種は単品向きではない一方、ブレンドでは役割があります。全日本コーヒー協会の別のコラムでは、カネフォラ種は酸味が控えめで苦みが強く、「そのためカネフォラ種はインスタントコーヒーのような加工用あるいはブレンド用に用いられることが多いことが特徴です。」と説明されています(全日本コーヒー協会)。
UCC COFFEE MAGAZINEでも、カネフォラ種は苦味のあるパンチがきいた味わいで、アラビカ種とブレンドすることで飲みやすくなると紹介されています。つまりカネフォラ種は、単体では強すぎる苦味を、アラビカ種と合わせることで「味の骨格」として生かす使われ方をしているわけです。
注意したいのは、カネフォラ種が入っている=苦い、と単純に決めつけないことです。苦味の強さは配合の割合や焙煎度によっても変わります。後の章で紹介する全日本コーヒー協会の配合例でも、カネフォラ種(ロブスタ)は苦味系の配合とポピュラーな配合に、それぞれ割合を変えて登場します。原材料や説明に「ロブスタ」の文字があれば、苦味やパンチを出す役として入っているのかもしれない、と読むのがちょうどよい距離感です。
| 生産量の位置づけ | 生産量全体の4割強(全日本コーヒー協会) |
| 味の傾向 | 酸味が控えめで苦みが強い(全日本コーヒー協会) |
| 主な用途 | インスタントコーヒーなどの加工用、ブレンド用 |
| ブレンドでの役割 | アラビカ種と合わせることで飲みやすくなるとされる(UCC) |
ベースに向くと紹介される産地:ブラジル・コロンビア・エルサルバドル
ブレンドの土台になる「ベース」の豆には、主張が強すぎず、他の豆と合わせやすい性格が求められます。全日本コーヒー協会の生産地紹介ページでは、ブラジルについて「酸味と苦味のバランスが良く、ブレンドのベースにも最適。」、コロンビアについて「他の豆との相性も良く、ブレンドにも適している。」と紹介されています(全日本コーヒー協会「コーヒーの生産地」)。同じページでは、エルサルバドルもバランスの良さでベーシックなブレンドに欠かせない存在とされています。
共通するキーワードは「バランス」と「相性」です。ベースの豆は配合の中で割合が大きくなるため、極端な個性があると全体がその味に引っ張られてしまいます。酸味と苦味のどちらにも偏りすぎない豆が土台にあると、そこにアクセントの豆を加えたときに、狙った方向へ味を動かしやすくなります。
やりがちな失敗は、好きなストレートの豆をそのままベースにして、アクセントを足したら味がまとまらなくなるケースです。個性が強く魅力的な豆ほど、ベースより「少量のアクセント」に回したほうが生きることがあります。
「ストレート向き」と紹介される豆もある
反対に、ブレンドより単品で味わうことをすすめられている産地もあります。同じ全日本コーヒー協会の生産地紹介ページでは、コスタリカについて「本来の美味しさを味わうには、ブレンドよりストレートがおすすめ。」と紹介されています(全日本コーヒー協会)。
この紹介から分かるのは、すべての豆が混ぜるほど良くなるわけではない、ということです。豆によっては、単品で飲んだときにこそ持ち味がはっきり伝わるものがあり、そうした豆を配合に入れると、せっかくの個性がほかの豆に紛れてしまいます。豆ごとの公式紹介に「ブレンドのベースに」「ストレートで」といった言葉があれば、その豆の生かし方のヒントとして読むことができます。
家で豆を選ぶときのコツは、気になる産地の紹介文に「ブレンド」という言葉があるかどうかを見ることです。ブレンド向きとされる豆は土台候補、ストレート向きとされる豆はまず単品で味わう候補、と分けておくと迷いにくくなります。なお、配合例によく登場するモカについては、名前の由来や種類を別記事で詳しく整理しています。

配合の割合はどう決める?酸味・苦味・コクの4パターンと「3〜5種類」の理由
酸味のある配合例:モカやグアテマラを加える
具体的な配合を見ると、ブレンドの考え方が一気に分かりやすくなります。全日本コーヒー協会のコラムでは、酸味のある配合例として「コロンビア30%・ブラジル30%・グアテマラ20%・モカ20%」が紹介されています。
この配合を眺めると、コロンビアとブラジルを同じ割合で土台に置き、そこにグアテマラとモカを加える構成になっています。前の章で見たとおり、ブラジルとコロンビアはどちらもブレンドに向くと紹介されている豆です。土台を安定させたうえで、残りの豆で味の方向性をつけている、と読むことができます。
やりがちな失敗は、「酸味のあるブレンドにしたいから」と、酸味を感じやすい豆だけを集めてしまうことです。それでは土台がなくなり、狙った酸味ではなく尖った印象になりがちです。協会の例のように、土台となる豆で全体の半分程度を支え、その上に方向づけの豆を重ねる、という骨組みを意識すると、配合を考えやすくなります。焙煎度を浅めにすると酸味が強く出やすいという一般的な傾向も、後の章で合わせて押さえておきましょう。
苦味のある配合例:ロブスタで骨格をつくる
同じ全日本コーヒー協会のコラムでは、苦味のある配合例として「コロンビア30%・ブラジル30%・キリマンジャロ20%・ロブスタ20%」が挙げられています。
酸味のある配合例と比べると、土台のコロンビアとブラジルの割合は同じで、組み合わせる豆がグアテマラとモカから、キリマンジャロとロブスタに入れ替わっています。ロブスタはカネフォラ種の通称で、協会の説明では酸味が控えめで苦みが強い品種でした。土台を揃えたまま組み合わせる豆を入れ替えるだけで、配合の方向が酸味から苦味へと変わる。この対比は、ブレンドの「足し引き」の考え方をよく表しています。
注意点は、苦味を出したいからといってロブスタの割合を大きく増やしすぎることです。協会の例でもロブスタは配合の一部にとどまっていて、土台はあくまでアラビカ種の産地の豆が支えています。家で苦味寄りの味を目指すときも、まず土台を決め、苦味担当の豆は少しずつ足していくほうが、全体のバランスを崩しにくくなります。
コクのある配合例とポピュラーな配合例
全日本コーヒー協会は、コクのある配合例として「コロンビア40%・グアテマラ20%・マンデリン20%・ブラジル20%」、ポピュラーな配合例として「コロンビア40%・ブラジル30%・モカ20%・ロブスタ10%」も紹介しています。
この2つでは、どちらもコロンビアが40%と最も大きな割合を占めています。コクのある配合ではマンデリンが加わり、ポピュラーな配合ではモカとロブスタを少量ずつ入れています。特にポピュラーな配合でロブスタが10%にとどまっている点は、苦味系の配合の20%と比べると、同じ豆でも割合次第で役割の強さが変わることを示しています。
家でやりがちなのは、配合例の豆の名前だけを真似て、割合を目分量にしてしまうことです。同じ4種類でも、割合が違えば別のブレンドになります。配合例を参考にするときは、豆の名前と割合をセットでメモし、まずはそのとおりに合わせてから、自分の好みに合わせて少しずつ動かしていくと、どこを変えたら味がどう変わったのかを追いかけやすくなります。
| 狙う味 | 配合例 |
|---|---|
| 酸味のある配合 | コロンビア30%・ブラジル30%・グアテマラ20%・モカ20% |
| 苦味のある配合 | コロンビア30%・ブラジル30%・キリマンジャロ20%・ロブスタ20% |
| コクのある配合 | コロンビア40%・グアテマラ20%・マンデリン20%・ブラジル20% |
| ポピュラーな配合 | コロンビア40%・ブラジル30%・モカ20%・ロブスタ10% |
出典:全日本コーヒー協会「焙煎・配合・粉砕」の配合例をもとに編集部が一覧化
なぜ「3〜5種類」が目安なのか
配合する豆の数について、全日本コーヒー協会は、種類が多すぎるとバランスが崩れるため、一般的には3〜5品種が適当としています(全日本コーヒー協会)。UCC COFFEE MAGAZINEでも「ブレンドに使用するコーヒー豆はベースも含めて3〜5種類程度にしましょう。」と案内されています(UCC COFFEE MAGAZINE)。
協会とメーカーで同じ幅が示されているのは心強いところです。種類を増やせば増やすほど、1種類あたりの割合は小さくなり、それぞれの豆の個性が薄まっていきます。前の章で見た4つの配合例も、すべて4種類の豆で組まれていて、この目安の範囲に収まっています。
家で試すなら、最初はベースとアクセントの2〜3種類程度から始め、物足りなさを感じたら1種類ずつ足していくのが無理のない進め方です。足すたびに味を確かめれば、どの豆がどんな役割を果たしているのかが自然と分かってきます。
手元にある好きな豆を少しずつ全部混ぜると、1種類あたりの割合が小さくなり、どの豆の個性も感じにくい、輪郭のない味になりがちです。原因は種類の多すぎ。全日本コーヒー協会やUCCが示す3〜5種類の範囲に収め、まず土台の豆を決めてから、アクセントの豆を足すようにしましょう。
焙煎の前に混ぜるか後に混ぜるか?単品焙煎と混合焙煎で変わる味
同じ豆でも「いつ混ぜるか」で味が変わる
ブレンドの味を決めるのは、豆の種類と割合だけではありません。全日本コーヒー協会は「焙煎前に配合するか焙煎後にするかによって、同じ豆でも味わいが異なります。」と説明しています(全日本コーヒー協会)。
同じ配合表でも、生豆の段階で混ぜてから焙煎するのか、別々に焙煎してから混ぜるのかで、出来上がりの味が変わるということです。生豆は産地や品種によって性質が違うため、同じ条件で焙煎したときの火の通り方も揃うとは限りません。そのため、配合のタイミングが仕上がりの差につながります。
やりがちな誤解は、「ブレンドの味は配合表だけで決まる」と考えることです。市販のブレンドを家で再現しようとして、同じ産地の豆を同じ割合で混ぜても同じ味にならないのは、焙煎の仕方や焙煎度が違うことも理由の1つと考えられます。ブレンドを選ぶとき、作るときは、「どんな豆を」「どれだけ」に加えて、「どう焙煎したか」という視点も持っておくと、味の違いを理解しやすくなります。
単品焙煎:1種類ずつ焼いてから配合する
1つ目の方法が単品焙煎によるブレンドです。全日本コーヒー協会によると、それぞれの生豆に適した条件で1種類ずつ焙煎した後に配合する方法で、生豆の特徴を最大限に生かせ、理想の味に近づけられるとされています。
理屈としては、豆ごとに合った焙煎ができるからです。酸味を残したい豆は酸味が残るように、苦味を引き出したい豆は苦味が出るように、それぞれ焙煎度を調整してから合わせられます。協会のコラムでも、生産国や銘柄、精製方法によって違うコーヒーの個性を引き出すように焙煎度を決めると説明されていて、単品焙煎はその考え方をブレンドにそのまま持ち込める方法といえます。
家で市販の焙煎豆を混ぜてブレンドを作る場合も、実は単品焙煎の豆を配合していることになります。焙煎度の違う豆を組み合わせると、浅煎りの豆の酸味と深煎りの豆の苦味を同時に取り入れることもできます。ただし焙煎度の差が大きすぎると味がまとまりにくいこともあるので、最初は近い焙煎度の豆どうしで試すと安心です。
混合焙煎:生豆を先に混ぜて一緒に焼く
2つ目は混合焙煎によるブレンドです。全日本コーヒー協会は、生豆を焙煎前に配合し、全ての豆を同時に焙煎する方法と説明しています。手間や時間は省けるものの、それぞれの豆に合わせて焙煎具合を調整できない、という特徴があるとされています。
この方法のメリットは、配合と焙煎が1回で済むことです。一方で、すべての豆が同じ条件で焼かれるため、ある豆にはちょうどよくても、別の豆には浅すぎたり深すぎたりすることが起こり得ます。単品焙煎と混合焙煎はどちらが正しいというより、手間と仕上がりの調整のしやすさのどちらを優先するかの違いです。
家庭で手網やフライパンで焙煎する人は、性質の違う生豆を一緒に焼くと、仕上がりの色にむらが出ることがある点に注意しましょう。また、家庭での焙煎は煙やにおいが出やすく、火を扱うので、換気をしながら、その場を離れずに作業することが大切です。慣れないうちは、生豆を混ぜるより焙煎済みの豆を混ぜるほうが失敗が少なくなります。
焙煎度8段階と、ブレンドの味の関係
焙煎度もブレンドの味を大きく左右します。全日本コーヒー協会によると、焙煎度はライト・シナモン・ミディアム・ハイ・シティ・フルシティ・フレンチ・イタリアンの8段階です。協会の区分では、浅煎りがライトとシナモン、中煎りがミディアム・ハイ・シティ、深煎りがフルシティ・フレンチ・イタリアンにあたります。
味の傾向について協会は「一般的には浅炒りほど酸味が強く、深炒りになるほど苦味を感じるようになります。」と説明しています(全日本コーヒー協会)。つまり、同じ配合でも浅煎りに寄せれば酸味が、深煎りに寄せれば苦味が出やすくなります。
やりがちな混同は、シティローストを深煎りとして扱ってしまうことです。資料によって分類が異なる場合もありますが、全日本コーヒー協会の区分ではシティは中煎りです。パッケージの焙煎度表示を見るときは、8段階のどこにあたるかを確かめ、配合と焙煎度の両方から味を想像してみましょう。焙煎度と酸味・苦味の関係は、別記事でさらに詳しく解説しています。

パッケージの「○○ブレンド」と生産国名はどう読む?表示ルールの基本
「○○ブレンド」と名乗れるのは30%以上使っているとき
パッケージ名の「○○ブレンド」には、業界の決まりがあります。全日本コーヒー公正取引協議会のレギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約の施行規則では、「○○○」の部分に生豆の産地・品種・銘柄などを入れてブレンドと表示する場合、その生豆を30パーセント以上使用しているものに限り表示できると定められています。
つまり、名前に産地名が入ったブレンドは、その産地の豆が一定以上入っていることが前提になっているわけです。名前だけ借りて、ほんの少ししか入っていない、という表示を防ぐためのルールと読むことができます。
やりがちな誤解は、ここから「名前の産地が100%」と思い込むことです。30パーセント以上というのはあくまで下限の条件で、それ以外の豆も配合されています。名前の産地の味をそのまま期待するのではなく、「その産地の豆を中心の1つに据えた配合」と受け取ると、実際の味とのずれが小さくなります。熱源の名前がついたブレンドについても、ブレンドされているコーヒー全てがその熱源だけで焙煎された場合に限るという決まりがあります。
原材料欄の生産国は「多い順」に書かれる
ブレンドの中身を知る手がかりになるのが、原材料欄の生産国名です。全日本コーヒー協会は、レギュラーコーヒーの表示について「ブレンドの場合は原材料に使用された主要なコーヒー豆の生産国名を、原則としてブレンド比率の多い順に表示します。」と説明しています(全日本コーヒー協会「情報ラベル(一括表示)の見方」)。
公正競争規約の施行規則でも、ブレンドされている場合は主要な国名を原則として重量の多い順に表示し、3か国以上使っている場合は割合の高いものから順に2か国以上を表示して、それ以外は「その他」または「他」とすると定められています。協会が示す表示例は「コーヒー豆(生豆生産国=ブラジル、コロンビア他)」です。
この決まりを知っていると、原材料欄の先頭に書かれた国の豆が、配合の中で多めに使われていると読めます。ただし具体的な割合までは表示されないので、「先頭の国が中心」程度の読み方にとどめるのがコツです。「他」の文字があれば、書かれていない国の豆も入っていることを意味します。
「レギュラーコーヒー」は100%コーヒー豆に限られる
品名の欄も見ておきましょう。全日本コーヒー協会の表示例では、品名に「レギュラーコーヒー(豆)」と書かれています。そして協会は「原材料は100%コーヒー豆に限ります。」と説明しており、ほかの原材料を使うとレギュラーコーヒーとは表示できないとしています(全日本コーヒー協会)。
ブレンドという言葉は「混ぜる」という意味なので、コーヒー以外のものも混ざっていると誤解されることがあります。しかしレギュラーコーヒーとして売られているブレンドは、混ざっているのはあくまでコーヒー豆どうしです。品名欄で「レギュラーコーヒー」と確かめれば、コーヒー豆だけの配合だと分かります。
やりがちな見落としは、品名と原材料の欄を読まずに、表の商品名だけで判断することです。表示の欄は、名前の印象ではなく中身の事実を伝えるための場所です。豆を選ぶときは、品名・原材料名・生産国名を順番に確かめる習慣をつけると、自分が何を買っているのかがはっきりします。コーヒー豆が生豆の段階でどんな姿をしているかや、輸入の内訳は、別記事で解説しています。

単一産地をうたう表示はほかの豆を混ぜられない
ブレンドと対になるのが、単一の産地や銘柄をうたう表示です。公正競争規約の施行規則では、特定のコーヒー生豆の産地・品種・銘柄などのみを使用している旨を表示する場合は、その生豆以外を使用してはならないとされています。
つまり「○○だけを使用」とうたう豆は、混ぜ物のないストレートであることが表示のルールで担保されている、ということです。反対に、ブレンドの名前に産地名が入っている場合は、30パーセント以上という条件のもとでほかの豆も含まれています。同じように産地名が書かれていても、「のみ」をうたう表示か、「○○ブレンド」の表示かで中身の意味が違います。
家での豆選びに生かすなら、ストレートの個性を味わいたいときは単一産地をうたう表示を、バランスのとれた味を探すときは「ブレンド」の表示と原材料欄の生産国名を見る、と使い分けるのが近道です。表示のルールを知っておくと、パッケージから味の手がかりを読み取れるようになります。
①商品名:「○○ブレンド」の○○は、その生豆を30パーセント以上使っている場合に表示できる
②原材料名:生産国名は原則として多い順。3か国以上なら上位2か国以上を書き、残りは「その他」または「他」
③品名:「レギュラーコーヒー」は原材料が100%コーヒー豆に限られる
家で自分のブレンドを作るには?UCCの3ステップとカップテスト
まず「どんな味にしたいか」を決める3ステップ
自分でブレンドを作るときの手順として、UCC COFFEE MAGAZINEは3つのステップを紹介しています。①どんな味を作りたいかイメージする、②ベースとなる基本の豆を選ぶ、③味や香りをつけるアクセントの豆を選ぶ、という順番です。
最初に味のイメージを決めるのは、それがないと豆の選び方も割合も決まらないからです。酸味を楽しみたいのか、苦味のある一杯にしたいのか、コクを感じたいのか。全日本コーヒー協会の配合例も、酸味・苦味・コクという狙いごとに分かれていました。ゴールを先に決めることで、どの豆をベースに、どの豆をアクセントにするかが見えてきます。
やりがちな失敗は、手元にある豆から考え始めてしまうことです。それだと「ある豆を全部使う」ことが目的になり、狙いのない配合になりがちです。最初に「朝に飲む、ミルクに合う苦味寄り」のように場面と好みを一言で書き出してから豆を選ぶと、配合の判断に迷いにくくなります。
初めてのベースはブラジルとコロンビアの組み合わせから
ベースの豆選びについて、UCC COFFEE MAGAZINEは、初めてブレンドを作るときはブラジルとコロンビアの定番コンビがおすすめだと紹介しています。風味が良く、品質や生産量が比較的安定していることから、商業的にもブレンドベースとしてよく使われるという説明です(UCC COFFEE MAGAZINE)。
この組み合わせは、全日本コーヒー協会の生産地紹介とも重なります。協会はブラジルを酸味と苦味のバランスが良くブレンドのベースにも最適、コロンビアを他の豆との相性も良くブレンドにも適していると紹介していました。協会の配合例4パターンでも、すべてにコロンビアとブラジルが入っています。
割合の決め方について、UCCは出来上がりの量を10として、大きく区切った割合で考えると案内しています。細かく刻まずに大まかな割合から始めると、味の変化を感じ取りやすくなります。たとえば協会の配合例の30%は、10のうち3にあたる、と置き換えて考えるとイメージしやすいでしょう。ベースが決まったら、狙いの味に合わせてアクセントの豆を少しずつ足していきます。
カップテストで配合を確かめてから豆を混ぜる
配合を決める前に、少量ずつ味を確かめる方法もあります。UCC COFFEE MAGAZINEで紹介されているのは、カップテストという方法です。豆の数だけガラス製のカップを用意し、粗めに挽いたコーヒーを8g程度入れてお湯を140cc程度注ぎます。香りをかぎ、粉が沈んだら浮遊物を取り除いて味わい、気に入った配合を豆に置き換える、という流れです(UCCの例)。
この方法の良いところは、豆ごとの味をそれぞれ確かめたうえで、どれをどれだけ合わせるかを考えられる点です。いきなり豆を混ぜてしまうと、あとから割合を変えたくなっても戻せません。カップテストで一度味を見ておけば、ベースとアクセントの役割分担を、実際の味に基づいて判断できます。
注意したいのは、比べるときの条件を揃えることです。粉の量やお湯の量がカップごとに違うと、豆の差なのか条件の差なのか分からなくなります。UCCの例の分量を目安に、すべてのカップで同じ量を守り、メモを取りながら進めると、気に入った配合をあとから再現しやすくなります。
配合を記録して、少しずつ動かしていく
気に入った配合が見つかったら、豆の名前と割合を書き留めておきましょう。全日本コーヒー協会がブレンドの目的の1つに「調和の取れた品質を維持する」ことを挙げているように、ブレンドは同じ味を繰り返し楽しめることにも価値があります。記録がなければ、次に同じ味を作ることはできません。
配合を変えるときは、1回に動かすのは1か所だけにするのがコツです。アクセントの豆の割合を少し増やす、あるいは1種類だけ別の豆に替える、といった具合に変更点を絞れば、その変更で味がどう動いたのかがはっきり分かります。複数の豆を同時に動かすと、何が効いたのか判断できなくなります。
また、焙煎度の違いも味に影響します。全日本コーヒー協会の説明のとおり、浅煎りほど酸味が、深煎りほど苦味が出やすい傾向があるので、豆を替えるときはパッケージの焙煎度表示もメモに残しておくと、味の変化の理由を後から振り返りやすくなります。
配合を頭の中だけで決めて、買ってきた豆を袋ごと全部混ぜると、好みに合わなかったときに割合を変えることができません。原因は試す前に確定させてしまうこと。まずはカップテストや少量の配合で味を確かめ、割合をメモしてから必要な量だけ混ぜるようにしましょう。
まとめ
ブレンドは、豆を節約するための混ぜ物ではなく、狙った味に向けて豆の個性を組み合わせる「味の設計」です。まずは手元のブレンドのパッケージを手に取り、品名・原材料欄の生産国名・焙煎度の3か所を読んでみてください。どの国の豆が中心で、どのくらいの焙煎度なのかが分かると、その一杯の味の理由が見えてきます。そこから一歩進めたくなったら、ブラジルとコロンビアをベースに少量ずつ合わせ、割合をメモしながら自分だけの配合を探してみましょう。
※最新情報は公式サイトでご確認ください。

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