朝に1杯、昼に1杯、午後にもう1杯。そう数えていくと、「コーヒー1杯にカフェインはどれくらい入っているのか」が気になってきます。ところがネットで見かける「1杯◯mg」という数字は、カップの大きさも淹れ方の条件もばらばらです。そのまま足し算すると、思っていた量とずれることがあるんです。
結論から言うと、食品安全委員会のファクトシート「食品中のカフェイン」では、コーヒー(浸出液)のカフェインは100mlあたり60mgとされています。これは粉10gを熱湯150mlで淹れた条件での値です。この値を150mlのカップに当てはめて計算すると、約90mgになります。
この記事では、この数字の読み方から、カップ容量ごとの換算、インスタントやカフェインレスとの違い、紅茶・玉露・エナジードリンクとの比較、海外機関が示す1日の目安までを、公的機関の資料にそって順番に整理していきます。
・コーヒー1杯のカフェイン量の公的な目安と、その数字が成り立つ条件
・150ml・200ml・237mlなど、カップ容量による換算の考え方
・インスタント・カフェインレス・紅茶・玉露・エナジードリンクとの違い
・海外機関が示す1日の目安と、日本に摂取基準がない理由
コーヒー1杯のカフェイン量は何mg?「100mlあたり60mg」の正体

公的資料の出発点は「100mlあたり60mg」
家で淹れるレギュラーコーヒーのカフェイン量を調べるとき、出発点になるのが「100mlあたり60mg」という数字です。食品安全委員会のファクトシート「食品中のカフェイン」には、飲み物ごとのカフェイン濃度の表があり、コーヒーは60mg/100mlと記載されています。農林水産省のカフェインの過剰摂取についてのページでも、コーヒー浸出液は60mg/100mLとして紹介されています。
ここで押さえておきたいのは、この数字が「1杯あたり」ではなく「100mlあたり」だという点です。よくある取り違えは、60mgを「1杯分」と読んでしまうこと。カップに150ml注げば、そのぶん量は増えます。
もうひとつ、このファクトシートの作成日は平成23年3月31日です。公的機関の資料であっても、作成年が古いことは覚えておきましょう。数字を見たら「何mlあたりの値か」「どの資料の、いつの値か」の2点を確かめるクセをつけると、情報に振り回されにくくなります。
「粉10g・熱湯150ml」という条件とセットで読む
60mg/100mlという値は、淹れ方の条件とセットで示されています。食品安全委員会の表には「浸出方法:コーヒー粉末10g/熱湯150ml」と添えられています。文部科学省の「日本食品標準成分表2010」の解説でも、コーヒー浸出液は「ドリップ式で10 gの中びきレギュラーコーヒーを150 mLの熱湯で浸出したもの」と説明されています。
なぜ条件が大事なのかというと、カフェインは粉からお湯に溶け出す成分だからです。同じ150mlのお湯でも、粉の量が違えば、溶け出す成分の量が同じになるとは限りません。たとえば「濃いめが好きで、粉を多めに入れている」という場合は、公的資料の条件とずれています。60mg/100mlをそのまま当てはめると、実際とは差が出る可能性があります。
まずは自分のレシピで、粉を何g使い、お湯を何ml注いでいるかをメモしてみてください。メジャースプーン1杯が何gかは器具によって違うので、そこを確かめるだけでも計算の精度が上がります。

150mlのカップなら約90mgと考える
公的資料の条件どおり、粉10g・熱湯150mlで淹れて150mlを飲むなら、カフェインは約90mgと考えられます。計算は「60mg×150ml÷100ml」です。ただしこれは公的資料の数値を使った算術換算で、資料そのものに「1杯90mg」と書かれているわけではありません。
この計算が役に立つのは、自分のカップに置き換えられるからです。式は「カップの容量(ml)÷100×60」。容量さえ分かれば、おおよその量を出せます。
やりがちな失敗は、ドリップで抽出した量と、実際にカップに注いで飲んだ量を混同することです。150mlのお湯を注いでも、粉が水分を含むぶん、サーバーに落ちる量は注いだお湯より少なくなります。厳密に考えるなら、計算に使うのは「飲んだ量」のほうです。
とはいえ、毎回ぴったり量る必要はありません。いつも使うカップの容量を一度だけ確かめて、「自分の1杯はおおよそ何mg」という目安を持っておけば十分です。
焙煎度や器具で変わる?公的資料で言えること・言えないこと
「深煎りと浅煎りでカフェイン量は違うの?」という疑問はよく見かけます。ただ、今回確認した範囲(食品安全委員会のファクトシート、農林水産省のカフェインのページ、日本食品標準成分表の解説。2026年10月5日時点)では、焙煎度別や抽出器具別のカフェイン量は示されていませんでした。公的資料の値は、あくまで「粉10g・熱湯150ml」という1つの条件での値です。
そのため、焙煎度や器具の違いを「何mg違う」と数字で言い切ることはできません。注意したいのは、出どころのはっきりしない「深煎りは◯%少ない」といった数字をそのまま計算に使うことです。根拠が確かめられない数値を足し算に入れると、目安そのものがぶれてしまいます。
家で判断するときは「自分の淹れ方が公的資料の条件にどれくらい近いか」を基準にしましょう。粉と湯の比率が近ければ60mg/100mlを目安に使えます。比率が大きく違うなら「目安から外れているかもしれない」と考えておくのが、根拠にそった読み方です。
浸出液=粉や茶葉にお湯を注いで成分を溶け出させた液体のこと。日本食品標準成分表では、コーヒー浸出液を「ドリップ式で10gの中びきレギュラーコーヒーを150mLの熱湯で浸出したもの」と説明しています。粉そのものではなく、カップに入る液体の値です。
「1杯」はカップで変わる!150ml・200ml・237mlで比べてみると
海外の資料では「1杯」の容量がそもそも違う
「コーヒー1杯」の大きさは、資料によって違います。食品安全委員会のファクトシートでは、カナダ保健省がコーヒー1杯を237mlとし、1杯あたり約135mgとしていることが紹介されています。同じファクトシートには、フィンランドの食品安全局(EVIRA)がコーヒー1杯(200ml)で100mgとしていることも載っています。
つまり、海外の資料で「1日◯杯」と書かれていても、その「1杯」は日本の家庭で使うカップと同じ大きさとは限りません。ありがちな誤解は、海外の「3杯」を自宅の小さめのカップ3杯に置き換えてしまうことです。容量が違えば、同じ「3杯」でもカフェインの合計は変わります。
海外機関の目安を読むときは、杯数より先に「1杯は何mlの想定か」を確かめましょう。ここを押さえておくと、次に紹介する1日の目安も、自分のカップに当てはめて考えやすくなります。
同じ60mg/100mlでも容量で差がつく
容量の違いがどれくらい効いてくるかを、食品安全委員会の60mg/100mlを使って並べてみます。濃度が同じなら、カフェイン量は容量に比例します。150mlなら約90mg、200mlなら約120mg、237mlなら約140mgです。
| 項目 | 150ml | 200ml | 237ml |
|---|---|---|---|
| 資料での扱い | 食品安全委員会の浸出条件(粉10g・熱湯150ml) | フィンランドEVIRAの「1杯」 | カナダ保健省の「1杯」(マグカップ) |
| 機関が示す値 | 60mg/100ml | 1杯で100mg | 1杯あたり約135mg |
| 60mg/100mlで計算した値 | 約90mg | 約120mg | 約140mg |
出典:食品安全委員会ファクトシート「食品中のカフェイン」。最下段は編集部による算術換算で、資料の原文の値ではありません。
表を見ると、機関が示す値と60mg/100mlで計算した値は、ぴったりとは一致しません。各機関がどんな濃さのコーヒーを想定しているかは資料ごとに異なり、同じ前提とは限らないためです。数字の差を「どれが正しいか」で比べるより、「1杯の容量が大きいほどカフェインも増える」という傾向をつかむのが実用的です。
やりがちな失敗:マグカップを「1杯」と数えてしまう
カフェイン量を数えるときに起こりやすいのが、カップの大きさを気にせずに杯数だけを数えることです。150mlのカップ1杯も、たっぷり入るマグカップ1杯も、どちらも「1杯」として記録してしまう。こうなると、合計量は実際より少なく見積もられます。
「今日は3杯だけ」と思っていても、使ったのが237mlのマグカップなら、60mg/100mlで計算して1杯あたり約140mg。150mlのカップ(約90mg)と同じ感覚で数えると、合計が大きくずれます。原因は杯数だけを数えていること。対策は、普段使うカップの容量を一度量り、「自分の1杯=約◯mg」をメモしておくことです。
この失敗は、来客用の小ぶりなカップとマグカップを日によって使い分けている人ほど起こりやすくなります。在宅で仕事をしながら大きなマグで何度もおかわりする日は、特に注意したいところです。
まずは「どのカップで何杯飲んだか」を分けて数えるだけで、見積もりのずれは小さくなります。
自分のカップの容量は「水を量る」だけで分かる
カップの容量は、計量カップかキッチンスケールがあれば家ですぐに確かめられます。カップに普段コーヒーを注ぐ高さまで水を入れ、その水を計量カップに移すか、スケールで重さを量ればOKです。水は1mlがおよそ1gなので、スケールの数字をそのまま容量の目安にできます。
ここで大事なのは「縁ぎりぎりまでの容量」ではなく「普段注ぐ高さまでの容量」を量ることです。商品の表示にある満水容量で計算すると、実際に飲んでいる量より多く見積もってしまいます。逆に、ラテ用の大きなカップにコーヒーを半分だけ注いでいるなら、その半分の量が計算のもとになります。
容量が分かったら「容量÷100×60」で、その1杯のおおよそのカフェイン量が出せます。よく使うカップが2〜3種類あるなら、それぞれの値を冷蔵庫のメモやスマホに残しておきましょう。数え方の「物差し」をそろえておくのが、カフェイン量を把握する第一歩です。
インスタント・缶・カフェインレスは同じ「1杯」でも別物

インスタントは100mlあたり57mg(2g・熱湯140ml)
インスタントコーヒーのカフェインは、食品安全委員会のファクトシートで57mg/100mlとされています。浸出方法は「インスタントコーヒー2g/熱湯140ml」です。レギュラーコーヒーの60mg/100mlと並べると近い値ですが、条件がまったく違う点に注意が必要です。
レギュラーは粉10gを150mlで淹れる条件、インスタントは粉2gを140mlに溶かす条件です。インスタントは抽出済みのコーヒーを乾燥させた粉なので、溶かすだけで成分がそのままお湯に入ります。このように粉の性質が違うため、使う粉の量も異なる条件で示されているわけです。
やりがちなのは、インスタントを「ティースプーン山盛り」で多めに入れているのに、資料の57mg/100mlをそのまま当てはめること。資料の条件は2gです。粉を増やせばそのぶんカフェインも増えると考えておきましょう。インスタントのラベルにある「1杯あたりの粉の量」の案内と、自分が実際に入れている量を一度見比べてみてください。
農林水産省の「1杯80mg」は2g使用時の値
農林水産省のカフェインのページでは、インスタントコーヒーを「1杯あたり80mg(2g使用時)」として紹介しています。食品安全委員会の「100mlあたり57mg」とは、単位も前提も違う数字です。
この2つは、混ぜて使わないのが正解です。一方は「100mlあたり」、もう一方は「1杯あたり」。片方の数字にもう片方の単位を付けてしまうと、計算そのものが成り立たなくなります。たとえば「インスタントは1杯57mg」と書いてしまうのは、食品安全委員会の100mlあたりの値を1杯の値として読み違えた例です。
どちらの数字を使うかは、自分の飲み方に近いほうを選ぶのがコツです。お湯の量を量って飲むなら「100mlあたり57mg」から計算する。「粉2gで1杯」と決めて飲むなら「1杯80mg」を目安にする。使った数字の出典と単位をメモしておけば、あとから見直したときも迷いません。
缶やボトルのコーヒーは製品ごとの情報を確かめる
缶コーヒーやペットボトルのコーヒー飲料は、ここまでの「浸出液」の値をそのまま当てはめにくい飲み物です。理由はシンプルで、製品ごとに容量も、コーヒーの使用量も、ミルクや砂糖などの配合も違うからです。今回確認した公的資料には、缶やボトルのコーヒーの共通のカフェイン量は示されていませんでした。
やりがちなのは「缶コーヒー1本=ドリップ1杯と同じ」と考えることです。容量が違えば、同じ濃さでも合計量は変わりますし、そもそも濃さが同じとは限りません。
缶やボトルについて知りたいときは、パッケージの表示や、製造元が公表している情報を確認してください。容量の表示の読み方は、次の記事でくわしく整理しています。

カフェインレスは「ゼロ」ではなく90%以上除去
カフェインレスコーヒー(デカフェ)は、カフェインがまったく入っていないコーヒーではありません。全日本コーヒー協会のコラムでは、全日本コーヒー公正取引協議会の定義として「カフェインを90%以上除去したコーヒー」と紹介されています。
カフェインを取り除く方法として、全日本コーヒー協会のコラムでは、生豆を水に浸して溶け出たカフェインを特殊フィルターなどで除去する水抽出法や、二酸化炭素を使う超臨界二酸化炭素抽出法が紹介されています。いずれも焙煎前の生豆の段階で処理する方法です。
やりがちな誤解は「カフェインレスなら何杯飲んでもカフェインは増えない」と考えることです。定義は「90%以上除去」なので、わずかに残っている可能性があります。製品ごとの残量は今回確認した資料には示されていないため、気になる場合は製品の表示や製造元の情報を確かめましょう。

紅茶・玉露・エナジードリンクと並べると?100mlあたりの比較表
100mlあたりでそろえると違いが見えてくる
コーヒーのカフェイン量がほかの飲み物と比べて多いのか少ないのかは、単位を「100mlあたり」にそろえると見えてきます。食品安全委員会のファクトシートと農林水産省のページから、数値を確認できた飲み物を並べたのが次の表です。
| 飲み物 | 100mlあたり | 浸出条件 | 出典 |
|---|---|---|---|
| コーヒー | 60mg | 粉10g・熱湯150ml | 食品安全委員会 |
| インスタントコーヒー | 57mg | 粉2g・熱湯140ml | 食品安全委員会 |
| 紅茶 | 30mg | 茶5g・熱湯360ml、1.5〜4分 | 食品安全委員会 |
| せん茶 | 20mg | 茶10g・90℃の湯430ml、1分 | 食品安全委員会 |
| 玉露 | 160mg | 茶葉10g・60℃の湯60ml、2.5分 | 農林水産省 |
| エナジードリンク | 28〜300mg | 製品により異なる | 農林水産省 |
出典:食品安全委員会ファクトシート「食品中のカフェイン」(平成23年3月31日作成)、農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
この表から分かるのは、100mlあたりで見るとコーヒーは紅茶(30mg)の2倍、せん茶(20mg)の3倍の値だということです。ただし、茶葉の量・湯の量・時間の条件は飲み物ごとに違います。「同じ条件で比べた差」ではなく「それぞれの代表的な条件での値」として読むのがポイントです。
玉露は100mlあたり160mg。「お茶だから少ない」は思い込み
表の中で目を引くのが玉露です。農林水産省のページでは、玉露浸出液(茶葉10g・60℃の湯60mL・2.5分)のカフェインは160mg/100mLとされ、コーヒー浸出液の60mg/100mLより大きな値です。
「コーヒーは控えて、お茶にしておこう」と考える人は多いのですが、お茶の種類によっては100mlあたりのカフェインがコーヒーを上回ります。やりがちなのは「緑茶系はどれも少ない」とひとまとめにしてしまうこと。せん茶は20mg/100mlでも、玉露は160mg/100mLと、同じ緑茶の仲間でも値に大きな幅があります。
コツは、飲み物の「名前のイメージ」で判断せず、100mlあたりの値と飲む量の両方で考えることです。玉露を少量ずつ味わうのか、湯のみで何杯も飲むのかで、合計は変わります。1日のカフェインを数えるときは、コーヒーだけでなくお茶も同じ物差しで数えましょう。
エナジードリンクは28〜300mgと幅が広い
エナジードリンクのカフェインは、農林水産省のページで28〜300mg/100mLと紹介されています。同じページでは製品1本あたりでは50〜170mg(市販12製品の成分表示等、2026年7月23日農林水産省調べ)とも紹介されています。下限と上限で10倍以上の開きがあり、「エナジードリンクは何mg」と一つの数字で言えない飲み物です。
消費者庁の食品安全に関するページでは、「いわゆるエナジードリンクは、缶や瓶1本当たりにすると、コーヒー2~3杯分に相当するカフェインを含むものもあります」と説明されています。容量が大きめの缶や瓶なら、1本でコーヒー数杯分になることもある、ということです。
見分けるコツは表示を見ることです。同じページによると、カフェインを多く添加した清涼飲料水については、業界の自主的なガイドラインにもとづき、「カフェイン量とともに小児や妊婦等に対して飲用を控える旨の表示」がされています。コーヒーと合わせて飲む日は、この表示のカフェイン量も1日の合計に加えて考えましょう。
実は、お茶もコーヒーと並ぶカフェインの摂取源
カフェインの話になると、コーヒーばかりが注目されがちです。でも意外と知られていないのが、お茶もコーヒーと同じくらい大きな摂取源として扱われていることです。食品安全委員会のファクトシートでは、カフェインの摂取源として、コーヒーと茶の2つが突出していると紹介されています。
この視点を持つと、カフェインの数え方が変わります。たとえば「コーヒーは1日2杯までにしているから大丈夫」と考えていても、食事のたびにお茶を飲み、午後に紅茶も飲んでいれば、カフェインは別のルートからも入っています。コーヒーの杯数だけを管理するのは、全体の一部しか見ていない状態です。
家で実践するなら、1日に飲んだ「カフェインを含む飲み物」をすべて書き出してみるのがおすすめです。コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク。それぞれの容量と100mlあたりの値から合計を出すと、コーヒー以外の飲み物がどれくらいの割合を占めているかが見えてきます。
1日に何杯まで?海外機関の目安と、日本に基準がない理由
カナダ保健省:健康な成人は最大400mg(マグカップ約3杯)
1日の目安としてよく引かれるのが、カナダ保健省の数字です。食品安全委員会のファクトシートでは、カナダ保健省が健康な成人について、「健康な成人は最大 400 mg/日(コーヒーをマグカップ(237 ml 入り)で約 3 杯)まで」としていることが紹介されています。
ここで見落としやすいのが「マグカップ(237ml入り)」という前提です。150mlのカップで考えると、同じ400mgでも杯数の感覚は変わります。前の章で計算したとおり、150mlのカップなら1杯約90mg、237mlなら約140mgです。「1日3杯」という杯数だけを覚えて、カップの大きさを考えないと、目安の意味がずれてしまいます。
この数字を自分に当てはめるときは、「400mg」というmgの値を基準に持ち、自分のカップの1杯あたりの量で割って考えるのが確実です。なお、これはカナダ保健省が示した目安を日本の公的機関が紹介しているもので、日本の基準ではありません。
オーストラリア・ニュージーランドは2010年の指標と今の推奨量を分けて読む
海外機関の目安は、国や機関によって考え方が異なります。食品安全委員会のファクトシートによると、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)は2010年に、3mg/kg体重/日を指標として設定しました。これは子ども(5〜12歳)で1日約95mg、成人で1日約210mgに相当するとされています。
一方、同じファクトシートでは、ニュージーランド食品安全庁(NZFSA)が2010年に、健康な成人が1日400mgまで適度に摂取しても健康への悪影響の可能性はないとしたことも紹介されています。
ただし、これは2011年作成のファクトシートが紹介した2010年時点の内容です。農林水産省のカフェインのページ(各国の注意喚起の一覧)では、FSANZの現在の推奨摂取量(上限)は18歳以上で1日400mgまで・1回200mgまで、妊婦や授乳婦で1日200mgまで、18歳未満で1回あたり体重1kgにつき3mgまでと紹介されています。3mg/kg体重/日は「子供」の不安レベルが上昇する根拠として示され、大人では240mgに相当するとされています。古い資料の数字と今の数字を並べて「差がある」と読まないよう、機関名・年・対象者をセットで確かめましょう。
日本では「何mgまで」の基準は設定されていない
日本には、カフェインの摂取量について「1日何mgまで」という公的な基準はありません。厚生労働省の食品に含まれるカフェインについてのQ&Aでは、カフェインの一日摂取許容量(ADI)について「個人差が大きいことなどから、日本においても、国際的にも設定されていません。」と説明されています。
食品安全委員会のファクトシートでも、海外の情報によると、食品中のカフェインについては一日摂取許容量(ADI)のような、健康への悪影響がないと推定される摂取量は設定されていないとされています。また、同ファクトシートの作成時点(2011年)では、日本人の摂取状況にもとづいた、天然にカフェインを含む食品についての食品健康影響評価は実施していないと記されています。
「日本の基準では1日◯mg」と書かれた情報を見かけたら、その数字がどの国のどの機関のものかを確かめてください。多くの場合、カナダ保健省など海外機関の数字を紹介したものです。
「1日400mg」はカナダ保健省などが健康な成人向けに示した目安で、日本の基準ではありません。日本では個人差が大きいことなどから、1日の摂取量の基準は設定されていません。海外の数字を見るときは、機関名・年・対象者・「1杯」の容量の4点をセットで確認しましょう。
同じ量でも感じ方は人それぞれ
海外機関の目安があっても、それがすべての人に同じように当てはまるわけではありません。食品安全委員会のファクトシートでは、カナダ保健省の説明として「カフェインに対する耐性は人によって著しく異なるため」という趣旨が紹介されています。日本で基準が設けられていない理由として、厚生労働省が個人差を挙げているのも、この点と重なります。
やりがちなのは、「家族や同僚が1日4〜5杯飲んで平気だから、自分も同じでいい」と考えることです。目安の数字は大勢を想定した値であって、一人ひとりの体質までは表していません。
自分に合った量を考えるときは、目安の数字を「上限の参考」として持ちつつ、ふだん飲んでいる量を把握することから始めましょう。何杯目からどう感じるかは人によって違うので、量を知っておくこと自体が、自分のペースを見つける材料になります。
妊娠中・授乳中・子どもの目安は?機関ごとの数字を並べて読む
妊娠中・授乳中:機関によって200mg〜300mgと幅がある
妊娠中や授乳中の目安も、機関ごとに数字が違います。食品安全委員会のファクトシートで紹介されている内容を、機関・年・対象者とあわせて並べると次のようになります。
| 機関(年) | 対象者 | 示している目安 | コーヒー換算の記載 |
|---|---|---|---|
| カナダ保健省(2010年) | 妊娠中・授乳中・妊娠を予定している女性 | 最大300mg/日 | マグカップで約2杯 |
| 英国食品基準庁(2008年) | 妊娠した女性 | 1日200mgに制限 | マグカップで2杯程度 |
| WHO(2001年) | 妊婦 | コーヒーを一日3〜4杯まで | 杯数での記載 |
| カナダ保健省 | 健康な成人 | 最大400mg/日 | マグカップ(237ml入り)で約3杯 |
出典:食品安全委員会ファクトシート「食品中のカフェイン」(平成23年3月31日作成)。各機関の現在の見解とは異なる場合があります。
表を見ると、同じ「妊娠中」でも、カナダ保健省は最大300mg、英国食品基準庁は200mgと、数字が違います。ファクトシートが紹介したWHOの2001年の冊子は杯数で示していて、mgの値は書かれていません(農林水産省のカフェインのページでは、WHOが2016年の勧告で1日300mg以上の高カフェイン摂取の妊婦に摂取量を減らすよう呼びかけたことも紹介されています)。注意したいのは、杯数で示された目安をmgに置き換えるときです。「1杯」の容量が書かれていなければ、正確な換算はできません。
この表は2011年作成の資料にもとづく整理です。農林水産省のカフェインのページの現在の一覧では、妊婦及び授乳婦について、欧州・英国とオーストラリア・ニュージーランドが200mg/日、カナダが300mg/日、WHO(妊婦)が300mg/日と紹介されています。数字の幅を知るための整理なので、どの数字を自分の目安にするかを、この表だけで決めないようにしてください。
子ども:カナダ保健省は体重1kgあたり2.5mg(2010年は年齢別に45mg〜85mg)
子どもについては、食品安全委員会のファクトシート(2011年作成)で、カナダ保健省が2010年に4〜6歳は最大45mg/日、7〜9歳は最大62.5mg/日、10〜12歳は最大85mg/日としたことが紹介されています。農林水産省のカフェインのページの現在の一覧では、カナダ保健省の推奨摂取量(上限)は「18歳未満:1日当たり体重1 kg当たり2.5 mgまで」と紹介されています。
これを家のコーヒーに置き換えると、どれくらいの量になるでしょうか。コーヒー浸出液の60mg/100mlで計算すると、4〜6歳の45mgは100mlに満たない量で届く値です。子どもがコーヒーを飲む場面は少なくても、コーヒー牛乳やコーヒー味の飲み物、お茶、エナジードリンクなど、カフェインを含む飲み物はほかにもあります。
やりがちなのは、「コーヒーは飲ませていないから大丈夫」と考えて、ほかの飲み物を数えないことです。子どもの目安は大人よりずっと小さい値なので、飲み物の種類ごとの値を知っておくことが役に立ちます。前の章の比較表で、100mlあたりの値を確かめてみてください。
13歳以上や体重で考える目安もある
食品安全委員会のファクトシートでは、2010年時点のカナダ保健省は13歳以上の青少年について確定した勧告を作成せず、1日2.5mg/kg体重以上を摂取しないこととしていた、と紹介されています。現在の農林水産省の一覧では、カナダは18歳未満をまとめて体重1kgあたり2.5mgまでとしています。年齢ではなく体重を基準にする考え方です。
体重を基準にする考え方は、前の章で紹介したFSANZ(2010年)の3mg/kg体重/日という指標にも見られます。FSANZはこれを子ども(5〜12歳)で約95mg/日に相当するとしています。2010年時点のカナダ保健省の10〜12歳の85mgと、FSANZの5〜12歳の約95mgは、対象の年齢幅も計算の方法も違うので、数字だけを比べて「どちらが厳しい」と判断するのは適切ではありません。
体重を基準にした目安を使うときは、体重(kg)に、機関が示す「mg/kg体重」の値を掛けて計算します。ただし、これは海外機関の考え方を紹介したものです。家庭での判断の材料の一つとして、機関名と対象年齢を添えて理解しておきましょう。
数字がばらつくときは「機関・年・対象者」をセットで読む
ここまで見てきたように、妊娠中・授乳中・子どもの目安は、機関によって数字も単位もばらばらです。これは、どれかが間違っているからではなく、それぞれの機関が別々の時期に、別々の考え方で示した値だからです。英国食品基準庁は2008年、WHOは2001年、FSANZとカナダ保健省は2010年と、示された年にも差があり、その後に見直された数字もあります(農林水産省のカフェインのページに現在の一覧があります)。
やりがちなのは、検索で最初に目にした数字だけを覚えてしまうことです。数字だけが一人歩きすると、どの機関の、どの対象者向けの値なのかが分からなくなります。数字を見るときは、必ず「機関名・年・対象者・単位(mgか杯か)」をセットで確認しましょう。
そして、妊娠中や授乳中、持病があるときなど、体調に関わる判断は数字だけでは決められません。体調や妊娠中のカフェインについては医師に相談してください。この記事で紹介している数字は、相談するときに「どんな目安があるのか」を知っておくための材料として使ってください。
飲みすぎを防ぐには?家でカフェイン量を把握する工夫
食品安全委員会が挙げている急性の症状
カフェインをとりすぎたときに起こりうる症状について、食品安全委員会のファクトシートでは、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症が挙げられています。また、消化管系の興奮状態として、下痢や吐き気をもたらすことがあるとされています。
ここで紹介しているのは、公的機関の資料に書かれている症状の一覧です。こうした症状があるからといって、その原因がカフェインだと決めつけることはできません。逆に、症状がないからといって量を気にしなくてよいということでもありません。
家でできるのは、自分がふだんどれくらいのカフェインをとっているかを知っておくことです。量を把握していれば、「今日はいつもより多く飲んだ」と気づくきっかけになります。症状が気になるときは自己判断せず、専門家に相談するようにしましょう。
やりがちな失敗:コーヒーとエナジードリンクを別々に数える
カフェインの量を気にしている人でも起こりやすいのが、飲み物ごとに別々に数えてしまうことです。
「コーヒーは朝と昼の2杯だけ」と決めていても、午後にエナジードリンクを1本、夕方に緑茶を何杯か飲めば、カフェインは合計で増えています。消費者庁は、エナジードリンクには1本でコーヒー2~3杯分に相当するカフェインを含むものもあると説明しています。原因は、コーヒーだけを「カフェインの飲み物」として数えていること。対策は、カフェインを含む飲み物をすべて同じ単位(mg)にそろえて足し合わせることです。
この失敗は、仕事や勉強で集中したい日に重なりやすくなります。忙しい日ほど飲み物の種類が増え、数えるのを忘れがちです。
あわせて知っておきたいのが、アルコールとの組み合わせです。農林水産省のページでは、エナジードリンクなどとアルコールを一緒にとることについて、アルコールによる機能の低下をカフェインが隠す可能性があるとして注意を呼びかけています。カフェインを含む飲み物とお酒を合わせる場面でも、量を意識しておきましょう。
1日のカフェイン量を数える3ステップ
カフェイン量の把握は、難しい計算をしなくても、3つのステップで始められます。ポイントは、最初に一度だけ「物差し」を作り、あとはそれを使い回すことです。
Step2で使う値は、あくまで公的資料の条件での目安です。粉を多めに使って濃く淹れているなら、実際の量は目安より多くなる可能性があります。そういうときは「少し多めかもしれない」と頭に置いて数えましょう。
毎日つける必要はありません。まずは平日1日と休日1日の2日間だけ記録してみると、自分のふだんの量がつかめます。そこで分かった量を、海外機関の目安と見比べてみるのが、無理なく続けられる方法です。
飲み方のタイプ別、量の調整のしかた
カフェイン量の調整のしかたは、ふだんの飲み方によって変わります。自分に近いタイプを参考にしてみてください。
朝にマグカップでたっぷり飲むタイプは、杯数は少なくても1杯あたりの量が大きくなりがちです。カップを150ml前後のものに変えるだけで、同じ「1杯」でも量を抑えられます。カップの容量を一度量っておくのが近道です。
在宅ワークで1日中少しずつ飲むタイプは、何杯飲んだか分からなくなりやすいのが難点です。サーバーやポットに「今日の分」を最初に淹れておき、なくなったらおしまいにすると、量が見えるようになります。
夕方以降もコーヒーの味を楽しみたいタイプは、カフェインレスに切り替えるのも一つの方法です。ただし「90%以上除去」でゼロではないので、杯数が増えれば合計も少しずつ増えます。
コーヒーとお茶の両方をよく飲むタイプは、お茶の種類を確かめましょう。せん茶と玉露では100mlあたりの値が大きく違います。どのタイプでも、まずは自分の量を知ることから始めるのがコツです。
まとめ
まずは、いちばんよく使うカップに水を注いで、容量を量ってみてください。その数字に0.6を掛ければ、あなたの「1杯」のおおよそのカフェイン量が分かります。その「物差し」が1つあるだけで、海外機関の目安も、お茶やエナジードリンクとの比較も、自分の飲み方に引き寄せて読めるようになります。
※本記事の数値は、食品安全委員会(平成23年3月31日作成のファクトシート)などの公表資料にもとづきます。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

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