コーヒー豆を買うとき、パッケージに浅煎り・中煎り・深煎り、あるいはシティロースト、フレンチローストといった表示を見かけますよね。なんとなく苦そう、酸っぱそうと想像はつくけれど、焙煎の最中に豆の中で何が起きていて、なぜ味が変わるのかまでは知らない、という人は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、焙煎は無味無臭の生豆から酸味・苦味・甘味・香りを引き出す工程で、どこまで煎るかによって味の傾向が変わります。全日本コーヒー協会の解説では、焙煎度は8段階、大まかには浅炒り・中炒り・深炒りの3段階に分けられ、一般的には浅いほど酸味が、深いほど苦味が感じられるようになるとされています。
この記事では、全日本コーヒー協会・農林水産省・食品安全委員会の公開情報をもとに、珈琲の焙煎の仕組み、8段階の焙煎度の違い、用途ごとの選び方、ブレンドと焙煎の関係、焙煎後の豆の扱い方、そして家で焙煎するときの注意点までを、理屈から順番に整理していきます。
・焙煎で生豆から味と香りが生まれる仕組み
・8段階の焙煎度の名前・色・用途の違い
・アイス・エスプレッソ・ミルク入りに合う焙煎度の考え方
・焙煎後の豆を挽くタイミングと、家で焙煎するときの注意点
珈琲の焙煎とは?無味無臭の生豆から味と香りが生まれる仕組み

生豆のままではコーヒーの味も香りもしない
焙煎とは、コーヒーの生豆に熱を加えて、豆が持っている味と香りを表に引き出す工程です。全日本コーヒー協会の解説ページには「無味無臭の生豆は焙煎することで、豆が内部に隠し持っている酸味、苦味、甘味、香りなどが引き出されます。」と書かれています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
つまり、お店に並ぶ茶色い豆は焙煎を終えた後の姿で、コーヒーらしい味わいは焙煎によって初めて生まれているんですね。歴史をさかのぼっても、協会の年表では13世紀後期について「この頃、豆を煎って煮出すようになったとされる」と紹介されています(全日本コーヒー協会のコーヒーの歴史)。豆を煎るという工程は、それだけ長くコーヒーの飲み方の中心にあったわけです。
やりがちな誤解が、焙煎は苦味をつけるための工程だと思い込むこと。実際には酸味や甘味、香りも焙煎で引き出されるものなので、苦味が少ない浅煎りも、焙煎が足りない豆ではなく、そういう狙いで煎られた豆と考えるのが自然です。豆を選ぶときは、パッケージの焙煎度表示をまず確認し、後で紹介する8段階のどこにあたるかを照らし合わせてみてください。
焙煎の前に味の土台をつくる、精製と選別
焙煎で引き出せる味は、焙煎の前の段階(生産国・銘柄・精製方法)でも方向づけられています。協会は、生産国や銘柄、精製方法によって違いのあるコーヒーの個性を引き出すように焙煎度を決める、と説明しています。焙煎は素材の個性を引き出す工程であって、素材そのものを入れ替える工程ではないんですね。
精製方法について、協会の加工処理の解説では、水洗式を「コーヒーチェリーから果肉を除去し、豆についた粘液質(ミューシレージ)を発酵させてから、きれいな水で洗い、乾燥させる製法」、非水洗式を「果肉がついたままのコーヒーチェリーを天日干しで乾燥させて、その後、脱穀してコーヒー豆を取り出す製法」と説明しています(全日本コーヒー協会の加工処理の解説)。さらに出荷前には、クラシフィケーション・シートと呼ばれるマットの上で欠点豆の数を目視でカウントし、カップテストで異味異臭がないかを確認すると紹介されています。
よくある失敗は、焙煎度だけで味が決まると考えて、精製方法の表示を見落とすこと。同じ焙煎度でも、精製方法が違えば味の印象は変わり得ます。袋に精製方法が書かれていれば、焙煎度とセットでメモしておくと、次に選ぶときの手がかりになります。
水洗式=果肉を除去し、粘液質を発酵させてから水で洗って乾燥させる製法。
非水洗式=果肉がついたまま天日干しで乾燥させ、脱穀して豆を取り出す製法。
スマトラ式=水洗いしてから外皮と果肉を除去し(ミューシレージは完全には除去しない)、乾燥させる製法。
いずれも全日本コーヒー協会の加工処理の解説に基づく定義です。
香りは焙煎で生まれ、焼きあがった時点から減りはじめる
コーヒーの香りは焙煎がつくるもので、同時に焙煎が終わった瞬間から少しずつ失われていくものでもあります。協会は、生豆には感じられないコーヒー独特の香りは焙煎によるものだとしたうえで、「焙煎されたてのコーヒーが香気成分が最も多く、次第に劣化していきます。」と説明しています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
ここから言えるのは、焙煎度選びと同じくらい、焙煎してからの時間も味に関わるということ。たとえば、気に入った豆をまとめて買い、開封したまま棚に置いておくと、後半になるほど香りが弱く感じられるのは、この劣化の流れに沿った変化と考えられます。
コツは、飲みきれる量ずつ買うこと、そしてできるだけ豆の状態で保存しておくことです。豆が粉になると劣化が早まる理由は、この記事の後半で協会の説明を引きながら詳しく見ていきます。保存の日数については出所を示せる公的な目安が見当たらないため、この記事では具体的な日数は書きません。
焙煎度は8段階、名前と色の違いを一覧で見てみよう
8段階と3段階、2つの呼び方の関係
焙煎度には、細かく分けた8段階の呼び方と、ざっくり分けた3段階の呼び方があります。協会の解説では「焙煎度は最も浅いライトローストから真っ黒になるまで炒り上げたイタリアンローストまで8段階ありますが、大まかには浅炒り、中炒り、深炒りの3段階。」と整理されています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
協会ページの区分では、浅煎りがライトローストとシナモンロースト、中煎りがミディアムロースト・ハイロースト・シティロースト、深煎りがフルシティロースト・フレンチロースト・イタリアンローストの3つです。ただしシティを深煎りに含める資料もあるので、シティは中煎りと深煎りの境目あたりと覚えておくと迷いが減ります。
やりがちなのは、浅煎り・中煎り・深煎りと、ローストの名前を別々の基準だと思ってしまうこと。実際は同じ物差しを細かく刻むか、大きく刻むかの違いです。袋にどちらか一方しか書かれていなくても、下の表で対応関係を確認すれば、おおよその位置がつかめます。
| 焙煎度 | 3段階の区分 | 色・状態 | 味の傾向・用途 |
|---|---|---|---|
| ライトロースト | 浅煎り | 黄色がかった小麦色。うっすら焦げ目 | 香り・コクはまだ薄い |
| シナモンロースト | 浅煎り | シナモン色 | ごく浅い炒り方で、青くささが残る |
| ミディアムロースト | 中煎り | 茶褐色 | アメリカンタイプの軽い味わい |
| ハイロースト | 中煎り | ミディアムよりやや深い | レギュラーコーヒーに多い |
| シティロースト | 中煎り | 鮮やかなコーヒーブラウン | 標準的な炒り方。エスプレッソ用にも |
| フルシティロースト | 深煎り | ダークブラウン | アイスコーヒー用はこの段階まで。エスプレッソにも |
| フレンチロースト | 深煎り | (色の記載なし) | 強い苦味と独特の香り。カフェ・オ・レなど向き |
| イタリアンロースト | 深煎り | 黒に近い | 強い苦味と濃厚な味わい。エスプレッソ・カプチーノなど |
浅煎りのライトとシナモンは、青くささが残る段階
浅煎りの2段階は、焙煎がまだ序盤の状態です。協会の説明では、ライトローストは黄色がかった小麦色でうっすらと焦げ目がついた状態、香りやコクはまだ薄いとされ、シナモンローストはシナモン色で、ごく浅い炒り方のため青くささが残るとされています。
この2段階は、焙煎で引き出される味と香りがまだ出きっていない位置と理解するとわかりやすいでしょう。協会が示す基本の傾向は浅炒りほど酸味が強いというものなので、浅煎りの豆を選ぶと酸味を中心にした印象になりやすい、という見当がつきます。
やりがちな失敗は、浅煎りを飲んで青くさい、物足りないと感じたときに、淹れ方のせいだと決めつけること。協会の説明どおり、この段階は焙煎そのものの性格として香りやコクが控えめです。浅煎りが合わないと感じたら、無理に淹れ方で補おうとするより、中煎りに1段階寄せて比べるほうが原因を切り分けやすくなります。
中煎りのミディアム・ハイ・シティは、軽さから日常の一杯へ
中煎りは、浅煎りの酸味と深煎りの苦味の間に位置する段階です。協会の説明では、ミディアムローストは茶褐色でアメリカンタイプの軽い味わい、ハイローストはミディアムよりやや深い炒り方で、レギュラーコーヒーに多い焙煎度とされています。中煎りの最後に置かれるシティローストは「最も標準的な炒り方。鮮やかなコーヒーブラウン。」と説明されています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
協会はハイローストを「喫茶店や家庭で飲まれるレギュラーコーヒーに多い」焙煎度と説明しています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。初めて豆を買う人が迷ったときの出発点として、中煎りはとらえやすい位置にあります。
やりがちなのは、ミディアムとハイを同じものとして扱ってしまうこと。同じ中煎りでも、ハイローストはミディアムより一歩深いので、軽さを求めるならミディアム、もう少し香ばしさを足したいならハイ、と袋の表記で選び分けられます。焙煎度の名前が書いていない場合は、販売者の説明にある浅・中・深の表記を手がかりにしてください。
深煎り3段階は、フルシティからイタリアンまで
深煎りは協会の区分でフルシティ・フレンチ・イタリアンの3段階です。協会の解説では、最も深い段階について「イタリアンロースト 色は黒に近い。強い苦味と濃厚な味わい。最も深い炒り方で、エスプレッソ、カプチーノなどに使用される。」と書かれています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
深煎りの入り口にあるフルシティローストはダークブラウンでアイスコーヒーやエスプレッソにも用いられ、その次のフレンチローストは強い苦味と独特の香りが楽しめる焙煎度と紹介されています。つまり深煎りの中でも、ダークブラウンのフルシティから、黒に近いイタリアンまで幅があるということです。
失敗しやすいのは、深煎りならどれも同じ苦さだと思って選ぶこと。フルシティとイタリアンでは色も用途も違うので、苦味を少し足したいだけなら中煎りのシティや深煎りの入り口のフルシティ、ミルクと合わせる前提ならフレンチ以降、と段階を意識して選ぶと好みに近づけやすくなります。
酸味と苦味は、なぜ焙煎度で入れ替わるの?

浅いほど酸味、深いほど苦味が基本の傾向
焙煎度と味の関係を一言でいえば、浅いほど酸味、深いほど苦味です。協会は「一般的には浅炒りほど酸味が強く、深炒りになるほど苦味を感じるようになります。」と説明しています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
ここで押さえておきたいのは、協会の書き方が一般的には、感じるようになる、という傾向の表現になっている点です。焙煎中に豆の中でどの成分がどう変化するかという化学的な仕組みまでは、協会のページでは解説されていません。そのため、この記事でもメカニズムを断定するのではなく、焙煎が深くなるにつれて引き出される味の比重が酸味から苦味へと移っていく傾向がある、と理解しておくことをおすすめします。
具体的な場面で言うと、酸っぱいコーヒーが苦手な人が浅煎りを選ぶと、その傾向がそのまま出て合わないと感じやすくなります。反対に、苦味が苦手な人がイタリアンローストを選ぶと同じことが起きます。酸味と苦味のどちらが気になるかを先に自分で言葉にしておくと、焙煎度の表で選ぶ位置がほぼ決まります。
実は、焙煎度の名前は色と状態で説明されている
意外と知られていないのですが、シティロースト、フルシティローストといった名前は呼び名であって、全日本コーヒー協会の解説ページにも、色を数値で測った厳密な基準は書かれていません。協会が示しているのは、それぞれの段階の色や状態、用途の説明です。
このため、販売者や書籍によって、区分の仕方や用途の説明が異なることがあります。たとえば、協会ページではシティローストが中煎りに入っていますが、UCCやキーコーヒーの解説ではシティを深煎りに含めています。同じシティと書かれた豆でも、販売者が違えば仕上がりの深さが同じとは限らない、ということです。
ここでの失敗例は、前に買った別の販売者のシティが好みだったから、今度も名前だけでシティを選ぶ、というパターン。名前が同じでも味の印象がずれることがあります。対策は、名前に加えて販売者の説明文にある味の傾向や浅・中・深の表記もあわせて読むこと。焙煎度の名前は共通語として便利ですが、絶対的な目盛りではないと考えておくと、選ぶときの期待外れが減ります。
焙煎度は豆の個性に合わせて決められている
同じ深煎りでも、豆が違えば味は違います。協会は、生産国や銘柄、精製方法によって違いのあるコーヒーの個性を引き出すように焙煎度を決める、と説明しています。焙煎度は単独で決まるものではなく、豆との組み合わせで選ばれているわけです。
この考え方を知っておくと、ある銘柄が浅煎りで売られ、別の銘柄が深煎りで売られている理由が見えてきます。販売者はそれぞれの豆の持ち味が出やすい焙煎度を選んでいる、と読めるからです。産地や銘柄ごとの味の特徴は、生産国の公的機関や協会の紹介の範囲で知っておくと選びやすくなります。
家でやりがちなのは、気に入った焙煎度を見つけたら、どの産地の豆でもその焙煎度で買えばよいと考えること。豆の個性に合わせて焙煎度が決まるという協会の説明に沿えば、産地を変えたときは販売者がすすめる焙煎度を一度試してから、自分の好みに寄せていく順番のほうが失敗が少なくなります。

やりがちな失敗:焙煎度の名前だけで豆を選んでしまう
ここまでの内容を踏まえると、焙煎度選びで多い失敗は、名前の印象だけで買ってしまうことです。たとえば、苦いのが苦手だからとにかく浅いほうがいいと考えてライトローストを選び、青くささや薄さに戸惑う。あるいは、しっかりした味がほしくてイタリアンローストを選び、苦味が強すぎて飲みきれない。どちらも、焙煎度ごとの性格を知らずに選んだことが原因です。
協会の説明に照らすと、ライトローストは香り・コクがまだ薄い段階、イタリアンローストは強い苦味と濃厚な味わいの段階で、どちらも両端に位置します。初めての人がいきなり両端を選ぶと、想像とのずれが大きくなりやすいんですね。
対策はシンプルで、まず中煎り(ミディアム・ハイ・シティ)あたりから始め、酸味がほしければ浅い側へ、苦味がほしければ深い側へ、1段階ずつ動かしていくことです。
焙煎度の名前の印象だけで両端(ライトやイタリアン)を選ぶと、青くささや強い苦味で想像とずれやすくなります。中煎りかシティから始め、好みの方向へ1段階ずつ動かすのが、原因を切り分けやすい選び方です。
アイス・エスプレッソ・ミルク入り、用途ごとに合う焙煎度は?
アイスコーヒーはフルシティまで熱を加える
アイスコーヒーには深めの焙煎度が使われます。協会の解説には「フルシティロースト ダークブラウン。アイスコーヒー用はこの段階まで熱を加える。」とあります(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
協会の基本の傾向に照らすと、フルシティは深煎りの領域で、苦味を感じやすい位置にあります。アイスコーヒー用の豆がこの段階まで煎られるという説明は、冷たい一杯にもしっかりした味を持たせる狙いと読むのが自然でしょう。
家でやりがちなのは、ホットで飲んでいる浅煎りの豆をそのままアイスに使い、物足りなさを感じるパターンです。浅煎りが悪いわけではありませんが、協会がアイス用として示しているのはフルシティの段階です。アイスを淹れるときは、袋にアイス用と書かれた豆か、フルシティ以降の深煎りを選ぶと、協会の説明に沿った組み合わせになります。淹れ方は器具メーカーの抽出ガイドに案内があるので、そちらを起点にしてください。
エスプレッソやカプチーノには深い焙煎度が使われる
エスプレッソ系の飲み物には、中煎りのシティから深煎りまでの深めの焙煎度が使われます。協会の説明では、シティローストはエスプレッソ用としても用いられ、フルシティローストもエスプレッソに用いられ、イタリアンローストはエスプレッソ、カプチーノなどに使用されるとされています。
つまり、エスプレッソに使われる焙煎度は1つに決まっているわけではなく、シティからイタリアンまで幅があります。どの段階を選ぶかで、苦味の強さや濃厚さの出方が変わる、と考えておくとよいでしょう。粉の細かさについては、協会はエスプレッソに極細挽き(上白糖くらい)を挙げています。
やりがちなのは、エスプレッソ用と書かれていない浅煎りの豆を、エスプレッソ風に濃く淹れれば同じになると思うこと。協会がエスプレッソに挙げているのは深煎りの段階です。マキアートやカプチーノなどミルクを合わせるメニューを家でつくるときも、まずは深煎りの豆を基準にすると組み立てやすくなります。
ミルクと合わせるならフレンチローストが向くとされる
ミルクを入れて飲むことが多い人は、フレンチローストを候補に入れておくとよいでしょう。協会はフレンチローストを、強い苦味と独特の香りが楽しめる焙煎度とし、カフェ・オ・レやウィンナーコーヒーなどに向くと紹介しています。
協会が示しているのは用途の対応までで、なぜ合うのかの詳しい理屈までは書かれていません。ただ、強い苦味と独特の香りという特徴は、ミルクやクリームを加えても味の輪郭が残りやすい方向の性格だと受け取れます。
家でやりがちなのは、ブラックで飲むときと同じ浅めの豆にミルクを足し、味がぼやけたと感じるパターンです。これは焙煎度と飲み方の組み合わせの問題であることが多いので、ミルクを入れる日はフレンチロースト、ブラックの日は中煎り、と豆を使い分けるのも一つの方法です。豆を2種類持つのが手間なら、ミルクを入れる頻度が高いほうに合わせて焙煎度を決めてください。
好みと場面で選ぶ、焙煎度の使い分け
ここまでの協会の説明をもとに、読者のタイプ別に整理してみます。酸味のある軽い一杯が好きな人は浅煎りから中煎りのミディアム、毎日飲む定番を決めたい人はレギュラーコーヒーに多いハイロースト、苦味やコクを求める人はシティからフルシティ、ミルクを合わせる人はフレンチ、エスプレッソ系を楽しみたい人はシティからイタリアン、という目安になります。
夏場にアイスを多く飲む人は、協会がアイス用として示すフルシティまで煎った豆を1袋持っておくと、ホット用とアイス用で迷いません。家族で好みが分かれている場合は、中煎りを共通の豆にして、苦味がほしい人はミルクを控えめに、といった飲み方の調整で歩み寄るのも手です。
注意したいのは、この使い分けはあくまで協会の説明に沿った出発点だということ。協会の解説でも焙煎度は色や状態で説明されていて数値の基準までは示されていないので、販売者ごとの説明文も一緒に読んで、自分の舌で微調整していくのが確実です。
軽い酸味ならミディアム、毎日の定番ならハイ、苦味とコクならシティ〜フルシティ、アイスはフルシティ、ミルク入りはフレンチ、エスプレッソ系はシティ〜イタリアン。いずれも全日本コーヒー協会の説明に沿った出発点です。
ブレンドは焙煎の前に混ぜる?後に混ぜる?
ブレンドをつくる4つの目的
ブレンドは、複数の豆を組み合わせて1つの味をつくることです。協会はブレンドの目的として、好みの風味を出す、新しい風味をつくる、調和の取れた品質を維持する、価格を維持・安定させる、の4つを挙げています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
このうち調和の取れた品質を維持するという目的は、焙煎と深く関わります。豆はそれぞれ個性が違い、焙煎度もその個性に合わせて決めるものだと協会は説明しています。だからこそ、どの段階で混ぜて、どう焙煎するかが、ブレンドの仕上がりを左右するわけです。
また協会によると、レギュラーコーヒーは焙煎、配合、粉砕といった製造工程を経て、包装され、製品チェックを受けて完成します。家で飲む一袋の豆の裏には、こうした工程が順番に積み重なっています。ブレンドを選ぶときは、どんな目的の味づくりなのかを販売者の説明から読み取ると、自分の好みとの相性が判断しやすくなります。
単品焙煎は、豆ごとに焼いてから合わせる
ブレンドのつくり方は、焙煎のタイミングで大きく2つに分かれます。その1つ目が単品焙煎によるブレンドで、協会は「それぞれの生豆に適した条件で 1 種類ずつ焙煎した後に配合。」と説明しています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
この方法の利点として、協会は生豆の特徴を最大限に生かせることを挙げています。豆ごとに適した焙煎度があるという考え方を、そのまま実行できるのが単品焙煎です。ある豆は浅めに、別の豆は深めに、とそれぞれの持ち味を引き出してから合わせられます。
その代わり、豆の種類の数だけ焙煎の回数が必要になるので、手間と時間がかかります。家で焙煎する人が複数の豆をブレンドしたい場合も、この考え方は参考になります。種類ごとに分けて焼いてから混ぜれば、それぞれの豆の焼き上がりを確認しながら進められるからです。
混合焙煎は、一度に焼く手軽さと調整できない弱点
もう1つの方法が混合焙煎によるブレンドです。協会は「生豆を焙煎前に配合し、全ての豆を同時に焙煎する方法。」と説明しています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
協会によれば、混合焙煎は手間や時間を省ける一方で、それぞれの豆に合わせて焙煎具合を調整できません。性格の違う豆を同じ条件で焼くことになるので、ある豆にとってはちょうどよくても、別の豆にとっては浅すぎたり深すぎたりする可能性がある、ということです。
家で焙煎する人がやりがちなのが、手持ちの豆を全部混ぜて一度に焼いてしまうこと。まさに混合焙煎の弱点がそのまま出る形になり、焼き色が揃わない原因になり得ます。違う豆を使うなら、慣れるまでは1種類ずつ焼くほうが、焼き上がりを確かめやすく安全です。
配合は3〜5品種が目安とされる理由
ブレンドに使う豆の数にも目安があります。協会は「配合するコーヒーの種類は多すぎるとバランスが崩れるため、一般的には3〜5品種が適当とされます。」と説明しています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
たくさん混ぜれば複雑な味になると考えがちですが、協会の説明では、種類が多すぎることはバランスを崩す原因になります。家で市販の豆を混ぜてオリジナルブレンドを試すときも、むやみに種類を増やさず、この目安の範囲に収めると味の方向が定まりやすくなります。
| 項目 | 単品焙煎 | 混合焙煎 |
|---|---|---|
| 混ぜるタイミング | 1種類ずつ焙煎した後 | 焙煎する前 |
| 利点 | 生豆の特徴を最大限に生かせる | 手間や時間を省ける |
| 弱点 | 焙煎の回数が増える | 豆ごとに焙煎具合を調整できない |
焙煎した豆はいつ挽く?鮮度を守る扱い方
粉にすると劣化が早まるわけ
焙煎で生まれた香りを守るうえで、いちばん影響が大きいのが挽くタイミングです。協会は「豆は粉状になると表面積が増えるため、湿気を吸いやすく酸化が進んで劣化します。」と説明しています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
豆の状態なら空気や湿気に触れるのは表面だけですが、粉にすると触れる面が一気に増える。だから劣化が早まる、という理屈です。焙煎直後から香気成分は減りはじめるという協会の説明と合わせると、焙煎後の豆は、なるべく豆のまま置いておくのがよいとわかります。
そのうえで協会は、コーヒーを淹れる直前に必要な分量だけを挽くことをすすめています。手間を省こうとして数日分をまとめて挽いておくのは、この理屈に反する扱い方です。ミルがない場合は、購入時に挽いてもらう量を少なめにして、早めに使い切るのが現実的な対応です。
挽き目5段階と器具の組み合わせ
焙煎度と並んで味を左右するのが挽き目です。協会は粒度を5段階で紹介しており、粗挽き(ザラメ糖くらい)はパーコレーター、中挽きはサイフォンやネルドリップ、中細挽き(グラニュー糖くらい)はペーパードリップや家庭用コーヒーメーカー、細挽きは水出し、極細挽き(上白糖くらい)はエスプレッソやイブリックに対応するとされています。
器具に合わない挽き目を使うと、狙った味になりにくくなります。器具ごとの細かな条件は、メーカーの抽出ガイドで確認するのが確実です。
摩擦熱と微粉が、焙煎で引き出した香りを損なう
挽き方そのものにも注意点があります。協会は摩擦熱について「挽く際に発熱すると、コーヒーが変色し、抽出後の香りが減少します。」と説明し、微粉については「微粉末によって、過剰抽出の原因になりがちです。」と注意をうながしています(全日本コーヒー協会の解説ページ)。
焙煎で引き出した香りを、挽く段階で失ってしまうのはもったいないですよね。ミルの説明書に連続使用や手入れの注意が書かれていれば、それに従うことが摩擦熱を抑える近道です。
まとめて挽いた粉を数日かけて使うと、表面積が増えた分だけ劣化が早まります。さらに微粉が多いと過剰抽出の原因になりがちです。淹れる直前に必要な分だけ挽き、微粉が目立つときは取り除いてから淹れましょう。
挽いた粉を残すときの考え方
理想は淹れる直前に挽くことですが、ミルがない、時間がないなど、粉で買うほうが現実的な人もいます。その場合のポイントは、粉は豆より湿気を吸いやすく酸化が進みやすいという協会の説明を前提に、湿気と空気からできるだけ遠ざけることです。
開封した袋の口を開けたまま置いておく、湯気の立つケトルのそばに置く、といった扱いは、粉が湿気を吸いやすい状況をわざわざつくってしまいます。保存容器を選ぶときは、密閉できるかどうかを基準にすると、協会の説明する劣化の原因に沿った対策になります。
家で珈琲の焙煎をするなら押さえたい仕組みと注意点
手網やフライパンでも、焙煎の原理は同じ
家庭でも、手網やフライパンを使って生豆を焙煎することができます。道具は違っても、熱を加えて生豆から酸味・苦味・甘味・香りを引き出すという原理は、協会が説明する焙煎と同じです。
焼き加減の目安として役立つのが、協会が示す8段階の色の説明です。黄色がかった小麦色のライト、シナモン色のシナモン、茶褐色のミディアム、鮮やかなコーヒーブラウンのシティ、ダークブラウンのフルシティ、黒に近いイタリアンと、色の変化で焙煎の進み具合を見当づけられます。ただし、協会の説明は色や状態による目安で、数値の基準までは示されていません。この記事では、温度や時間の具体的な数値は一次情報で確認できなかったため書きません。
焼く前の準備として、協会が出荷前の工程で紹介している欠点豆のチェックを参考に、割れた豆や形の崩れた豆を目で見て取り除いておくのも一つの方法です。また、種類の違う豆を一緒に焼くと混合焙煎と同じく焙煎具合を調整できないので、1種類ずつ焼くのが基本です。
煙・におい・火の扱いで気をつけたいこと
家庭での焙煎でまず意識したいのは、煙とにおい、そして火の扱いです。焙煎は豆に熱を加え続ける作業なので、深く煎るほど煙やにおいが出ることを前提に準備しておく必要があります。
具体的には、換気扇を回す、窓を開けるなど換気を確保してから始めること。火を使っている間はコンロのそばを離れないこと。コンロの周りに燃えやすいものを置かないこと。集合住宅では、煙やにおいが共用部や近隣に流れることもあるので、時間帯や換気の方向にも気を配ってください。
やりがちなのは、焼き色に集中するあまり、手元の熱や火のそばに置いた布巾などに気づかないケースです。焙煎は豆の様子を見ながら手を動かし続ける作業なので、始める前に周りを片づけ、作業中は豆と火の両方に目を配れる環境を整えておくことが、いちばんの安全策になります。
焙煎で生じる成分、アクリルアミドのこと
焙煎は味や香りを引き出すだけでなく、加熱によって別の成分も生じさせます。その一つがアクリルアミドです。農林水産省のQ&Aでは、アクリルアミドは「食材にもともと含まれている特定のアミノ酸(アスパラギン)と糖(ぶどう糖、果糖など)が120℃以上で加熱されることにより反応」して生成し、「特に食材に含まれる水分が少なくなってから、多く生成」すると説明されています(農林水産省 アクリルアミドに関するQ&A)。
同じQ&Aでは、生豆や大麦、茶葉を焙煎する工程でアクリルアミドが生成すること、水に溶けやすいので水を加えると浸出液に含まれることも紹介されています。家庭の焙煎でも工場の焙煎でも、焙煎という工程そのものに伴う現象だということです。この記事では健康への影響や摂取量の評価には踏み込みません。詳しく知りたい人は、農林水産省のページを直接確認してください。
まとめ:焙煎度の名前より、味の傾向と用途で豆を選ぼう
焙煎度の名前は色や状態による目安なので、名前だけで決めずに、協会が示す味の傾向と用途、そして販売者の説明文をあわせて読むのが失敗しにくい選び方です。最初の一歩として、次に豆を買うときは中煎りかシティを1袋選び、酸味が気になれば浅い側へ、物足りなければ深い側へと1段階ずつ動かしてみてください。挽くのは淹れる直前、必要な分だけ。それだけで、焙煎で引き出された香りを無駄なく楽しめます。
※焙煎度の呼び名や区分は販売者によって異なることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

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