ドリッパーもペーパーフィルターも手元にないけれど、台所に茶こしならある。そんな朝に「これでコーヒーは淹れられるの?」と迷った経験はありませんか。紅茶用の網でコーヒー粉を受け止められるのか、粉がカップに落ちてざらつかないのか、味は薄くならないのか。気になる点はいくつもあります。
結論から言うと、茶こしコーヒーは淹れられます。ただし、ペーパードリップの「代わり」として上からお湯を注ぐより、粉をお湯に浸してから網で濾す「浸漬(しんし)」の考え方で淹れたほうが、味が安定しやすいのがポイントです。茶こし付きマグを出しているHARIOの取扱説明書でも、コーヒー粉を入れてお湯を注ぎ、フタをして待ってから網を外す、という浸す手順が案内されています。
この記事では、全日本コーヒー協会の抽出の基本、キーコーヒーの抽出法の解説、HARIOの取扱説明書など一次情報をもとに、茶こしで淹れるときの挽き目・粉の量・待ち時間の考え方、粉っぽさや薄さが出る原因、網の素材ごとの違い、目詰まりさせない洗い方までを順に解説します。
・茶こしコーヒーが「浸して濾す」抽出になる理由と、ペーパードリップとの違い
・粗めの挽き目・粉の量・待ち時間をメーカー公式と協会の資料から決める方法
・粉っぽい/薄い/苦いときの原因と直し方、網の素材ごとの味の傾向
・油分で目詰まりさせない洗い方と、茶こしコーヒーが向いている場面
茶こしコーヒーは本当に淹れられる?「浸して濾す」仕組みで考える

答えは「淹れられる」。ただしドリップではなく浸漬になる
茶こしでコーヒーは淹れられます。ただ、仕組みとしてはペーパードリップとは別物と考えたほうがうまくいきます。キーコーヒーの抽出ガイドでは、抽出方法を大きく2つに分けて説明しています。ひとつはキーコーヒーの解説にある「透過法は、ひとことで言えばコーヒーの粉にお湯を注ぎ、ろ過する方法。」で、ペーパードリップやネルドリップがこちらに入ります。もうひとつが「浸漬法は、コーヒーの粉を一定時間お湯に浸しておき、時間が経つと粉と液体を分離する方法です。」で、フレンチプレスが代表例です。
茶こしの網は、紙のように細かい粒子まで受け止めるほど目が詰まっていません。上からお湯を注いでも、お湯は網の目をすぐに通り抜けてしまい、粉とお湯が触れている時間が短くなりがちです。これが、茶こしに粉を入れて上からお湯をかけただけだと薄く感じやすい理由です。一方で、粉をお湯にしばらく浸しておけば、触れている時間を自分で決められます。茶こしは「濾すための網」として使い、味は「浸す時間」で作る。こう役割を分けると考えやすくなります。
家でやりがちなのは、ドリッパーと同じつもりで粉を山盛りにし、お湯を細く回しかけることです。網からお湯がそのまま落ち、色は付いても香りやコクが乗らない一杯になりやすいので、まずは「浸す」発想に切り替えてみてください。
透過法=粉にお湯を注いでろ過する淹れ方(ペーパードリップ、ネルドリップなど)。浸漬法=粉を一定時間お湯に浸してから、粉と液体を分ける淹れ方(フレンチプレスなど)。茶こしコーヒーは、網を「分けるための道具」として使う浸漬法に近い淹れ方です(キーコーヒーの抽出ガイドの分類にもとづく)。
浸す淹れ方は「注ぎ方の上手下手」が出にくい
浸漬法の利点は、注ぎ方の技術に味が左右されにくいことです。キーコーヒーの抽出ガイドでは、透過法は少しずつ注ぐことでクリアな味を再現しやすい一方、注ぎ方で味がぶれやすいと説明されています。対して浸漬法は、誰がいれても安定して豆の持ち味を引き出せる方法として紹介されています。
理由はシンプルで、透過法では「どこに・どのくらいの速さでお湯を注ぐか」で、粉とお湯が触れる時間が場所ごとに変わります。細口のケトルが勧められるのはこのためです。浸漬法では粉全体が同じお湯に同じ時間だけ浸かるので、条件をそろえやすいわけです。茶こしコーヒーも同じで、注ぎ口の太いやかんや電気ケトルしかなくても、浸す時間さえ守れば味の再現性を保ちやすくなります。
ありがちな失敗は、浸している間に何度もかき混ぜたり、網を上下に揺すったりすることです。網の目から細かい粒子が押し出され、カップの底に沈むざらつきが増えやすくなります。混ぜるなら最初に粉全体を湿らせる1回にとどめ、あとはフタをして待つのが扱いやすい方法です。

「ドリッパーもペーパーフィルターも持っていない。家にある急須でコーヒーは淹れられるの?」――そんな疑問から、急須コーヒーが気になった方も多いのではないでしょうか…
ペーパードリップと比べたときの得意・不得意
茶こしで淹れたコーヒーは、ペーパードリップとは口当たりが変わります。紙は細かい粒子とコーヒーの油分の多くを受け止めますが、網は目が粗いため、それらがカップ側へ通りやすくなります。HARIOは金属メッシュのカフェオールドリッパーについて、製品ページで「特殊ステンレスメッシュ採用なのでコーヒーオイルが抽出でき、コーヒー本来の独特なアロマを楽しめます。」と説明しています。網で濾すと、油分由来のとろみや香りが残りやすいということです。
そのぶん、得意・不得意がはっきりします。得意なのは、コクや口当たりの厚みを楽しみたいとき、ドリッパーがない旅先や職場、1杯だけ手早く用意したいときです。不得意なのは、透明感のあるすっきりした味を求めるときと、カップの底のざらつきが気になるときです。
やりがちな誤解は「ペーパーと同じ味にしたい」と目標を置いてしまうことです。網を使う以上、ペーパーと同じ澄んだ味にはなりにくいので、比べるならフレンチプレスに近い飲み物だと考えると期待とのずれが小さくなります。すっきりさせたいときは、後で触れるように粉を粗めにして、最後の数口を残す飲み方が役立ちます。
味を決めるのは挽き目・粉の量・待ち時間の3つ
挽き目は「粗め」から。細かい粉は網をすり抜ける
茶こしコーヒーでいちばん先に決めたいのが挽き目です。網の目より細かい粒子は、どうしてもカップへ落ちます。金属メッシュで浸して濾す器具であるHARIOのカフェプレス・Uの取扱説明書では、コーヒー粉は粗挽きを使うよう案内されており、あわせて粉の粗さによって微粉が多くなり、粉っぽくなることがあると注意書きがあります。網で濾す器具のメーカーが粗挽きを指定しているのは、茶こしにもそのまま当てはまる理屈です。
市販の粉はペーパードリップ向けの中細挽き前後のものが多く、茶こしで使うと細かい粒子が網を通りやすくなります。手元にその粉しかない場合は、量を少し控えめにする、浸す時間を短めにする、最後の一口を飲まずに残す、といった工夫で粉っぽさを和らげられます。ミルがあるなら、いつもより数段粗く挽くのがいちばん効きます。
注意したいのは、粗くしすぎると成分が出にくくなり、薄く酸っぱい方向に寄ることです。全日本コーヒー協会は、抽出時間が短いと酸っぱく薄く、長いと苦くエグくなると説明しています。粗挽きにした分は、浸す時間で補う、と覚えておくと調整しやすくなります。
粉の量は協会の表とメーカーの目安を手がかりに
粉の量について、一般の茶こしで淹れる場合の公式な基準は見当たりません。そこで手がかりになるのが、全日本コーヒー協会の「おいしいコーヒーを淹れるための基本原則」にある挽き方別の1杯分の目安です。協会のページでは、中細挽きが約10g、中挽きが12~13g、粗挽きが約15gと、粗いほど多めの粉を使う表になっています。粗い粉は表面積が小さく成分が出にくいため、量で補う考え方です。
茶こしで淹れる製品の公式値としては、HARIOのティー&コーヒーメーカーマグの取扱説明書があります。ここではコーヒーの目安量が16g、待ち時間が3~4分、お湯はストレーナーの7~8分目(約200mL)までと書かれています。なお、説明書には上記はあくまでも目安で、銘柄や種類によって好みで量を調節するよう注記があります。
やりがちな失敗は、ティースプーンで「なんとなく2杯」と量ることです。スプーンの大きさや山の盛り方で粉の量は簡単に変わり、毎回味がぶれる原因になります。最初の数回だけでもキッチンスケールで量り、自分のスプーン何杯分かを把握しておくと、その後は計量なしでも安定します。
待ち時間は3~4分を基準に、味を見て前後させる
浸す時間は味の濃さと苦味を左右します。HARIOのティー&コーヒーメーカーマグの取扱説明書では、コーヒーの待ち時間を3~4分としています。同じくHARIOのカフェプレス・Uでは、粉全体が湿る程度のお湯をかけて1分蒸らし、残りのお湯を注いでフタをして2分程度、粉の対流が収まるまで待つ手順です。どちらも、粉とお湯を数分間なじませてから分ける、という点で共通しています。
時間で味が変わる理由は、成分の溶け出す速さが成分ごとに違うからです。全日本コーヒー協会の基本原則のページには「抽出時間が短いと「酸っぱくて薄く」なり、長いと「苦くてエグく」なります。」とあり、時間は短すぎても長すぎても味のバランスを崩すとされています。
家でありがちなのは、タイマーをかけずに浸したまま別のことを始めてしまうことです。網を入れたまま放置すると抽出が続き、苦味やエグみが前に出やすくなります。待ち時間が来たら網ごと粉を引き上げる、別の容器で浸した場合はすぐ濾して移す、というように、時間が来たら粉とお湯を必ず分けてください。
| 項目 | HARIO ティー&コーヒーメーカーマグ(茶こし付き) | HARIO カフェプレス・U(金属メッシュ) | 全日本コーヒー協会の表(参考) |
|---|---|---|---|
| 粉の量 | 16g | 1杯分 約10g | 粗挽き 約15g/中挽き 12~13g(1杯分) |
| お湯の量 | ストレーナーの7~8分目(約200mL) | 1杯分 120mL | 湯温は95度前後が適温 |
| 待ち時間 | 3~4分(フタをして待つ) | 1分蒸らし+2分程度 | 短いと酸っぱく薄く、長いと苦くエグく |
| 挽き目 | 取扱説明書に指定の記載なし | 粗挽きを使用 | 挽き方ごとに粉量が変わる |
出典:HARIO各製品の取扱説明書、全日本コーヒー協会「おいしいコーヒーを淹れるための基本原則」。メーカーにより目安は異なり、一般の茶こし向けの公式値ではありません。

ドリッパーにお湯をためて、しばらく待ってから一気に落とす。浸漬式ドリッパーは、ハンドドリップを始めたばかりの人ほど気になる器具ではないでしょうか。一方で、注ぎ方…
茶こしコーヒーの淹れ方:カップで浸すか、別の器で浸すか

深型の茶こしならカップの中で浸せる
カップの縁に引っかけたとき網の部分がお湯に沈む深型の茶こしなら、カップの中でそのまま浸せます。HARIOのティー&コーヒーメーカーマグはこの形で、取扱説明書の手順は、ストレーナーに粉を入れる、7~8分目(約200mL)までお湯を注ぐ、フタをして待つ、ストレーナーを外して出来上がり、の4段階です。
この形が扱いやすいのは、粉がずっと網の中にあるので、最後に網を持ち上げるだけで抽出を止められるからです。待ち時間の管理がしやすく、後片付けも網の中身を捨てるだけで済みます。お湯の温度は、全日本コーヒー協会のページにある、沸騰後にポットを火から離し、湯面のぐらぐらが静まった程度(95度前後)が目安になります。
やりがちな失敗は、浅い茶こしで同じことをしようとすることです。網の底がお湯にわずかしか触れないと、粉の上半分が乾いたまま残り、浸っている部分と浸っていない部分で抽出に差が出ます。網の深さが足りないときは、次に紹介する「別の器で浸して最後に濾す」方法に切り替えるほうが確実です。フタがない場合は小皿をのせると、香りと温度が逃げにくくなります。
浅い茶こしなら、別の器で浸してから濾す
手持ちの茶こしが浅い場合は、浸す器と濾す網を分けます。耐熱の計量カップや急須、ポットなどに粉を入れてお湯を注ぎ、時間が来たら茶こしをカップにのせて、そこへ注いで粉を受け止める方法です。粉とお湯を器の中で自由に動かせるので、網の深さに関係なく粉全体を同じ条件で浸せます。
流れはHARIOのカフェプレス・Uの手順が参考になります。器を温めてから粉を入れ、粉全体が湿る程度のお湯をかけて1分蒸らし、残りのお湯を静かに注いで2分程度待つ。蒸らしを入れるのは、焙煎した豆に含まれるガスを先に抜き、お湯が粉の中まで入りやすくするためです。フタがあれば温度が下がりにくくなります。
注ぐときの失敗で多いのが、最後まで一気に注ぎ切ってしまうことです。器の底には沈んだ細かい粒子がたまっているので、最後の少量まで注ぐと網を通り抜けてカップへ入ります。器を傾けるのは静かに、底の少量は残す。これだけで口当たりが変わります。注ぐ前に1分ほど置いて粉を沈めておくと、上澄みから先に注げて網が詰まりにくくなります。
アイスで飲みたいときは「少量の熱湯で濃く」が基本
茶こしでアイスコーヒーを作りたいときは、熱いお湯で少なめに濃く淹れてから、氷や水で薄めるのが基本です。HARIOのティー&コーヒーメーカーマグの取扱説明書にも、水出しの場合は少量の熱湯で抽出してから氷や水を入れるよう案内があります。最初から冷たい水を注ぐと成分がほとんど出ず、短い待ち時間では色の薄い飲み物になってしまうためです。
具体的には、ホットと同じ量の粉に対してお湯を減らし、同じ待ち時間で濃いめに抽出します。そこへ氷を入れると、溶けた分だけ薄まってちょうどよい濃さに近づきます。どこまで減らすかは氷の量で変わるので、最初はお湯を控えめにして、薄ければ次回さらに減らす、と調整していくのが確実です。
やりがちな失敗は、熱いコーヒーを薄めの濃さのまま氷に注ぐことです。氷が溶けて水っぽくなり、香りもぼやけます。氷で冷やす前提なら、抽出の段階から濃く作ることを意識してください。氷を入れた容器が急な温度変化に弱い素材でないかも、あわせて確かめておきましょう。
粉っぽい・薄い・苦い……よくある失敗はなぜ起きる?
粉っぽさの正体は網を通った細かい粒子
茶こしコーヒーの悩みで多いのが、カップの底がざらつく、口に粉が残るという粉っぽさです。原因は、網の目より細かい粒子がカップ側へ通り抜けることにあります。HARIOのカフェプレス・Uの取扱説明書でも、粉の粗さによって微粉が多くなり、粉っぽくなることがあると注意されています。金属の網で濾す以上、ある程度の細かい粒子が入るのは仕組み上避けにくい、と考えておくのが現実的です。
対策は3段構えです。まず挽き目を粗くして、そもそもの細かい粒子を減らすこと。次に、浸している間や注ぐときに網や器を揺すらず、粒子を沈めておくこと。最後に、カップの底の一口を残すことです。細かい粒子は重さで底に沈むので、最後の一口に集まりやすくなります。
ありがちなのは、ざらつきを嫌って網を二重にしたり、スプーンで網の中の粉を押しつけて絞り出したりすることです。押しつけると粒子が網目から押し出されるうえ、雑味も出やすくなります。HARIOのマグの取扱説明書にも、ストレーナーのメッシュ部を外側から強く押さないよう注意があり、網を傷める原因にもなります。
網の中の粉をスプーンで押しつけて絞ると、細かい粒子が網目から押し出され、ざらつきと雑味が増えやすくなります。網も傷みます。対策:時間が来たら網を静かに持ち上げて、しずくが自然に落ちるのを待つだけにする。ざらつきが気になる場合は挽き目を粗くし、カップの底の一口は残しましょう。
薄い・酸っぱいときは「接触時間」と「量」を疑う
色はついているのに味が薄い、酸っぱさばかりが目立つ。この場合は、粉とお湯が触れている時間が足りないか、粉の量が少ないことが多いです。全日本コーヒー協会は抽出時間が短いと酸っぱく薄くなると説明しています。茶こしに粉を入れて上からお湯を通しただけ、という淹れ方は、まさにこの状態になりやすいパターンです。
見直す順番は、まず待ち時間です。HARIOのマグの目安である3~4分を基準にし、薄ければ30秒ずつ延ばしてみます。それでも薄ければ粉を増やします。粗挽きにしている場合は、協会の表のように中挽きより多めの粉が目安になります。お湯の温度が低すぎないかも確認してください。電気ケトルで沸かしてから長く置いたお湯は、思ったより冷めていることがあります。
やりがちなのは、薄いからといって挽き目を一気に細かくすることです。成分は出やすくなりますが、網をすり抜ける粒子も増え、粉っぽさという別の問題を呼び込みます。茶こしの場合は、挽き目はなるべく粗めに保ったまま、時間と量で濃さを調整するほうがまとまりやすくなります。
苦い・エグいときは浸しすぎと湯温を見直す
逆に、苦味が強すぎる、舌に残るエグみがある場合は、浸しすぎが第一の疑いです。全日本コーヒー協会は、抽出時間が長いと苦くエグくなると説明しています。網をカップに入れたまま飲み始めると、飲んでいる間にも抽出が進み、後半ほど苦くなっていきます。
見直す順番は、待ち時間を守れているか、時間が来たら粉とお湯を分けているか、の確認からです。次に湯温です。協会が適温としている95度前後は、沸騰したお湯を火から離して少し落ち着かせた程度の温度です。沸騰直後の湯をそのまま注ぐと、苦味が前に出やすくなります。深煎りの豆は苦味が出やすいので、待ち時間を短めにするところから試すとよいでしょう。
ありがちなのは、2杯目を作るために、1杯目に使った粉にもう一度お湯を注ぐことです。成分の出やすい部分は1杯目で出ているので、2回目は薄いうえに渋みやエグみが目立ちやすくなります。粉は1回ごとに新しく用意し、使い終わった粉はすぐ捨てるのが、味の面でも網の手入れの面でもおすすめです。
網の素材で味は変わる?金属・樹脂・紙を比べてみる

ステンレスの網は油分を通し、コクが出やすい
台所にある茶こしの多くはステンレスの網です。ステンレスの網は紙のように油分を吸い取らないので、コーヒーの油分がカップに入り、口当たりの厚みやコクとして感じられやすくなります。HARIOのダブルメッシュメタルドリッパーの製品ページでは「細かいエッチング加工を施したメッシュフィルターを二重に重ねたドリッパーです。」と説明され、ペーパーのような透明感と、メタルフィルターならではのコーヒーオイルを感じる味わいがうたわれています。
ここからわかるのは、金属の網でも目の細かさや構造で、通り抜ける粒子の量が変わるということです。コーヒー専用の金属フィルターは、細かい粒子を減らしつつ油分は通すよう設計されています。一般の茶こしはお茶の葉を受け止める前提の目の粗さなので、コーヒー専用品より粒子が通りやすい、と考えておくのが妥当です。
選ぶときに見るのは網の目の細かさです。光に透かして向こうがはっきり見えるほど目が粗いものは、細かい粒子が通りやすくなります。網が二重になっているもの、深さがあるものは、カップの中で浸す使い方にも向いています。
樹脂メッシュの茶こしは軽く、耐熱温度を確認したい
茶こしには、ポリエステルなど樹脂の網を使ったものもあります。HARIOのティー&コーヒーメーカーマグのストレーナーは、取扱説明書によるとメッシュがポリエステル(耐熱温度120℃)、フタとフレームがポリプロピレン(耐熱温度120℃)です。熱湯で使う前提の素材が選ばれていることがわかります。
樹脂の網は軽く、金属がカップに当たる音もしません。一方で、柔らかいため強くこすったり押したりすると破れやすい面があります。HARIOの説明書でも、研磨材のついたスポンジは使わないこと、メッシュ部をやぶらないよう注意することが書かれています。また、樹脂は製品ごとに耐熱温度が決まっているので、手持ちの茶こしを熱湯で使ってよいか、本体や包装の表示で耐熱温度を確認しておくと安心です。
やりがちな失敗は、樹脂の茶こしをコンロのそばに置いたり、電子レンジで温めたカップにそのまま入れたりすることです。表示の耐熱温度を超える使い方は、変形や劣化の原因になります。HARIOのマグも、直火やIH、電子レンジでは使わないよう説明書に明記されています。
紙と網を重ねる発想と、その注意点
網のざらつきがどうしても気になる場合、茶こしの上にペーパーフィルターや紙を敷いて濾すと、細かい粒子と油分の多くを紙が受け止め、口当たりはすっきりした方向に変わります。ただ、これは仕組みとしてはペーパードリップに近づくことになり、油分由来のコクも一緒に減ります。網で淹れる良さと引き換えになる点は知っておきたいところです。
キッチンペーパーを使う場合は注意点があります。キッチンペーパーはコーヒー抽出用に作られた製品ではないので、メーカーがコーヒーのドリップ用途を案内しているとは限りません。においや紙の繊維が気になることもあります。代用品ごとの考え方は、別記事で詳しく整理しています。

朝の一杯を淹れようとしてペーパーフィルターの箱を開けたら空っぽだった、という場面は珍しくありません。豆も挽いてあって、湯も沸かし始めている。そんなとき、台所にあ…
実は、茶こしコーヒーを「ペーパーがないときの間に合わせ」とだけ考えるのはもったいない見方です。網で濾す淹れ方は、フレンチプレスや金属フィルターと同じく、油分ごと豆の持ち味を味わう淹れ方の仲間です。メーカーが専用の金属フィルターをわざわざ作っているのも、その味わいに価値があるからだと読めます。ざらつきを抑える工夫さえ押さえれば、茶こしは「豆のコクを知る入り口」として十分に使えます。
| 項目 | ステンレスの網 | 樹脂(ポリエステル等)の網 | 紙(ペーパーフィルター) |
|---|---|---|---|
| 油分 | 通りやすい(コクが出やすい) | 通りやすい | 多くを受け止める |
| 細かい粒子 | 目の細かさしだいで通る | 目の細かさしだいで通る | ほぼ受け止める |
| 向く挽き目 | 粗め | 粗め | 器具の指定に合わせる |
| 手入れの注意 | 油分の付着で目詰まりしやすい | 破れやすい・耐熱温度を確認 | 使い捨て |
HARIOの金属フィルター製品ページ・取扱説明書の記載をもとに整理。網の目の細かさは製品ごとに異なります。
目詰まりさせない洗い方と、茶こしを選ぶときの見どころ
油分が網に残ると目が詰まっていく
茶こしをコーヒーに使い続けると、網の目が少しずつ詰まり、お湯の抜けが悪くなることがあります。原因はコーヒーの油分です。HARIOのティー&コーヒーメーカーマグの取扱説明書には、長く使ううちにまれに珈琲の油分の付着によってストレーナーの目詰まりが生じる場合があると書かれています。お茶の葉にはほとんどない油分が、コーヒーでは網に残っていくわけです。
油分は水だけではなかなか落ちず、乾くと網の目に膜のように残ります。そこに次の粉の細かい粒子が引っかかり、さらに詰まりが進む、という悪循環になりがちです。目詰まりした網は、浸している間の液の行き来も悪くなり、抽出のむらや、濾すのに時間がかかって苦味が出る原因にもなります。
やりがちなのは、使い終わった粉を網に入れたままシンクに置き、後でまとめて洗うことです。時間がたつほど油分と粒子が網に固まって落としにくくなります。使い終わったらすぐ粉を捨て、網の裏側からお湯を流して目に入った粒子を押し戻す、を習慣にしてください。
コーヒーの油分は水だけでは落ちにくく、網の目に残って少しずつ目詰まりを起こします。お湯の抜けが悪くなると抽出にむらが出て、苦味の原因にもなります。対策:HARIOの取扱説明書が案内するとおり、目詰まりしたら熱湯に浸け、やわらかいスポンジに中性洗剤をつけてやさしく洗う。普段から使ったらすぐ粉を捨て、網の裏からお湯を流しましょう。
洗剤とスポンジ、漂白剤の使い方
洗い方は、メーカーの取扱説明書に沿うのが基本です。HARIOのティー&コーヒーメーカーマグでは、フタとストレーナーは柔らかいスポンジに中性洗剤で洗い、クレンザーや研磨材のついたスポンジは使わないよう案内されています。目詰まりが生じたときは、熱湯に浸けてから、やわらかいスポンジに中性洗剤をつけてやさしく洗う方法が示されています。フタとストレーナーは食器洗い乾燥機が使える一方、マグ本体は使えないと書き分けられている点も見ておきたいところです。
漂白剤については、同じ説明書にプラスチック製ストレーナーを家庭用漂白剤に長時間浸け置きすると耐久性が低下するので短時間の使用にするよう注意があります。金属の網でも、HARIOのカフェプレス・Uの説明書では、金属製部品を家庭用漂白剤に長時間浸け置きすると耐久性が低下するとしています。素材を問わず、漂白剤は短時間にとどめるのが共通の注意点です。
やりがちな失敗は、金属たわしやクレンザーで網をこすることです。網が傷んだり破れたりすると、そこから粉が落ちるようになります。網の縁がほつれたり破れたりしたら交換の合図だと考えてください。
| ふだんの洗い方 | 柔らかいスポンジに中性洗剤。研磨材つきスポンジ・クレンザーは使わない |
| 目詰まりしたら | 熱湯に浸け、やわらかいスポンジに中性洗剤をつけてやさしく洗う |
| 漂白剤 | 長時間の浸け置きは耐久性が下がるため短時間で |
| 交換の目安 | 網の縁のほつれ・破れ(カフェプレス・Uの説明書ではフィルターメッシュの交換を案内) |
茶こし選びは「目の細かさ・深さ・耐熱」の3点で
これから茶こしをコーヒー用にそろえるなら、見るポイントは3つです。1つ目は網の目の細かさ。目が細かいほど粒子が通りにくく、ざらつきが減ります。2つ目は深さ。カップの縁にかけたとき網がしっかりお湯に沈む深さがあれば、カップの中で浸す淹れ方ができます。3つ目は耐熱温度と素材。樹脂を使っている部分があれば、熱湯で使える表示かどうかを確認します。
あわせて、使うカップの口径に合うかも大事です。茶こしの縁がカップに安定してかからないと、浸している間に傾いたり、持ち上げるときにしずくが外に垂れたりします。HARIOの茶こし付きマグのように、カップと網とフタがセットになった製品は、この相性の問題をあらかじめ解決している例と言えます。
やりがちなのは、紅茶用の浅くて小さい茶こしをそのままコーヒーに使い、網からあふれそうなほど粉を入れることです。粉がお湯の中で動けず、浸り方にむらが出ます。粉の量に対して網に余裕があるか、粉がお湯の中でほぐれる空間があるかを目安に選ぶと失敗しにくくなります。
どんな人・どんな場面に向く?使い分けとカフェインの目安
シーン別:茶こしコーヒーが活きる場面
茶こしコーヒーが向いているのは、まずドリッパーやペーパーが切れたときです。台所にある道具だけで、浸して濾す淹れ方に切り替えられます。次に職場や出張先などで1杯だけ淹れたい人。茶こしは小さく、ペーパーの買い置きもいりません。マグと茶こしがあれば、粉を持ち込むだけで用意できます。
コクや口当たりの厚みが好きな人にも向いています。油分を通す網の淹れ方は、フレンチプレスに近い味わいの方向です。一方で、すっきりした透明感のある味が好きな人や、カップの底のざらつきがどうしても気になる人は、ペーパードリップのほうが満足しやすいでしょう。
ドリップを始めたばかりで注ぎ方が安定しない人にとっては、味の基準を作る練習にもなります。浸漬法は注ぎ方の影響を受けにくいので、豆の量と時間だけを変えて味の違いを確かめやすいのです。同じ豆を茶こしとドリップの両方で淹れてみると、油分や粒子が味にどう効いているかがつかみやすくなります。
カフェイン量は淹れ方より「粉の量と液量」で考える
茶こしで淹れたコーヒーのカフェイン量を示す公的な数値はありません。参考になるのは、食品安全委員会のファクトシート「食品中のカフェイン」にある、コーヒー(浸出液)100mlあたり60mgという値です。これはコーヒー粉末10gを熱湯150mlで浸出した条件での値で、茶こし抽出を測ったものではありません。
カフェインは粉からお湯に溶け出すので、量を左右するのは主に使う粉の量と飲む量です。茶こしだから多い・少ないと決まるわけではなく、粉を多めに使えば多く、浸す時間が短ければ出方も変わります。HARIOのマグの目安のように16gの粉を使う場合と、10g前後で淹れる場合とでは、同じ1杯でも条件が違うことは意識しておきたいところです。
体調や妊娠中のカフェインについては医師に相談してください。夜に飲む量が気になる場合は、粉の量を控えめにする、デカフェの豆を使うといった選び方ができます。
迷いやすい疑問をまとめて解決
このほか、豆の鮮度も味を左右します。全日本コーヒー協会の基本原則では、新鮮な焙煎豆を使うこと、器具に合った挽き方をすることが最初に挙げられています。茶こしという器具に合わせて粗めに挽く、という考え方は、この原則にそのまま沿ったものです。挽いた粉を使う場合は、開封後なるべく早く使い切り、密閉して保存してください。
まとめ
まずは手持ちの茶こしの深さを確かめ、網がお湯に沈むならカップの中で、沈まないなら別の器で浸してから濾してみてください。同じ豆でも、待ち時間を30秒変えるだけで味の違いがつかめます。
※器具の仕様・取扱説明書の内容は改訂されることがあります。最新情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

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