「ドリッパーもペーパーフィルターも持っていない。家にある急須でコーヒーは淹れられるの?」――そんな疑問から、急須コーヒーが気になった方も多いのではないでしょうか。急須コーヒーは、コーヒー粉をお湯に浸して数分待ち、急須の網でこしてカップに注ぐ淹れ方です。紙フィルターを使わず、細口のケトルで湯を細く注ぐ技術もいらないので、道具を増やさずに始めやすいのが魅力です。
結論から言うと、急須でもコーヒーはきちんと淹れられます。ただし味を決めるのは、注ぎ方のテクニックよりも「湯温」「挽き目」「待つ時間」の3つです。たとえば、クラウドファンディング(Makuake)で販売されたコーヒー用の常滑焼急須のプロジェクトページでは、少量のお湯を回しかけて1分ほど蒸らし、そのあとお湯を注いで2〜3分待つ手順が案内されています。これは1製品の案内で、急須コーヒーに共通して決まった時間があるわけではありません。
この記事では、全日本コーヒー協会の「おいしいコーヒーを淹れるための基本原則」と、コーヒー用急須の販売ページに載った製品情報をもとに、急須コーヒーの仕組み、手順、挽き目と粉量の考え方、陶器の急須を割らないための注意点、洗い方、水出しやカフェイン量までを、理屈から順番に整理します。
・急須コーヒーがハンドドリップと違う「浸して待つ」仕組み
・製品例の「蒸らし1分ほど・2〜3分待つ」手順と、95度前後の湯温の意味
・苦い・薄いを防ぐ挽き目と粉量の考え方
・陶器の急須の扱い方と洗い方、水出しとカフェイン量の見方
急須コーヒーとは?ドリップとは抽出の仕組みが違う

粉をお湯に「浸して待つ」のが急須の淹れ方
急須コーヒーは、コーヒー粉とお湯を一定の時間いっしょにしておき、成分が溶け出すのを待ってからこす淹れ方です。ここを押さえておくと、手順の一つひとつに理由があることが見えてきます。
ハンドドリップは、上から注いだお湯が粉の層を通り抜け、下に落ちていく仕組みです。お湯が粉に触れている時間は、注ぐ速さや挽き目によって変わります。一方、急須ではお湯を注いだあと粉が湯に浸ったままになるので、粉とお湯が触れている時間を「待つ時間」で決められます。全日本コーヒー協会のコラムは、おいしく淹れるための基本原則の一つに適切な抽出温度と抽出時間を守ることを挙げ、抽出時間が短いと酸っぱくて薄く、長いと苦くてエグくなると説明しています。
急須でやりがちなのは、お湯を注いでからほかの家事を始め、気づいたら時間が過ぎていたというケースです。浸して待つ淹れ方では、待つ時間が延びるほど粉とお湯が触れ続けるので、苦味やエグみが目立つ一杯になりやすくなります。
コツは、お湯を注いだらすぐにキッチンタイマーやスマートフォンのタイマーをセットすることです。待つ時間を毎回そろえておけば、味が変わったときに「時間のせいか、豆や挽き目のせいか」を切り分けやすくなります。
浸漬(しんし)式=粉をお湯に浸し、一定の時間をおいて成分を引き出す淹れ方のこと。急須やフレンチプレスはこの考え方です。
透過式=お湯が粉の層を通り抜けながら成分を引き出す淹れ方のこと。ペーパードリップやネルドリップはこの考え方です。
どちらも、湯温と抽出時間で味が変わる点は共通しています。
紙フィルターの代わりに、急須の網が粉をこす
急須コーヒーでは、紙フィルターを使わずに急須の茶こし部分(網)で粉と液体を分けます。ドリッパーがなくても淹れられるのは、この「こす」役目を急須が引き受けてくれるからです。
コーヒー用に作られた急須では、網そのものもコーヒー向けに設計されています。たとえば常滑焼のコーヒー用急須のプロジェクトページ(Makuake)では、18-8ステンレス製の200メッシュ畳織フィルターを備え、紙フィルターは不要で繰り返し使えると紹介されています。消耗品を買い足さなくてよい点は、毎日飲む人にとって分かりやすい利点です。
一方で、お茶用の急須は茶葉をこす前提で作られているため、網の目の細かさや形は急須によってさまざまです。目が粗いものだと細かい粉がカップに流れ出やすく、逆に目の細かい網に細挽きの粉を入れると、目に粉が入り込んで注ぎにくくなることがあります。
手持ちの急須を使うなら、まず取扱説明書や製品ページで茶こしの素材と構造(陶製の穴なのか、金属の網なのか、取り外せるのか)を確かめておきましょう。初回は少ない杯数で試し、粉の抜け方と注ぎやすさを見てから量を増やすと失敗が少なくなります。
ハンドドリップ・フレンチプレスと並べると、急須はどこに入る?
急須コーヒーは、粉を湯に浸して待ってからこすという点で、フレンチプレスに近い仲間です。違いは、最後に粉と液体を分けるやり方にあります。
フレンチプレスは金属のフィルターを押し下げて粉を底に寄せてから注ぎます。急須は注ぎ口の手前にある網で、注ぎながら粉をこします。ハンドドリップはお湯が粉の層を通り抜ける透過の仕組みで、全日本コーヒー協会のペーパードリップ式の淹れ方では、中細挽きの粉12gを使い、「20秒ほど蒸らす」手順が紹介されています。
同じ「蒸らし」でも、ペーパードリップの案内は20秒ほど、急須の製品例は1分ほどと、器具によって時間が違います。ドリップの感覚のまま急須で20秒だけ蒸らしてすぐに注いでしまうと、製品の案内どおりの抽出にはなりません。
器具を持ち替えたときは、前の器具の手順をそのまま当てはめず、その器具の取扱説明書や製品ページの手順から始めましょう。下の表は、公式情報で確認できた範囲だけを並べたものです。
| 項目 | 急須(コーヒー用急須の製品ページ) | ペーパードリップ(全日本コーヒー協会) |
|---|---|---|
| 抽出の仕組み | 粉を湯に浸して待つ(浸漬) | 湯が粉の層を通り抜ける(透過) |
| 蒸らし | お湯を少し回しかけて1分ほど | 20秒ほど |
| 蒸らしのあと | お湯を注いで2〜3分待つ | お湯を注ぎ、粉を通して落とす |
| 粉 | 器具に合わせた挽き方を選ぶ(協会の基本原則) | 中細挽き12g |
| こすもの | 200メッシュ畳織ステンレスフィルター(紙フィルター不要) | ペーパーフィルター |
急須で淹れる手順は?製品例の「蒸らし1分・2〜3分」と待つ理由
お湯は別に沸かし、95度前後に落ち着かせてから使う
急須コーヒーのお湯は、やかんや電気ケトルで別に沸かし、ぐらぐらが静まった程度まで落ち着かせてから使います。急須そのものを火にかけて沸かすわけではありません。
全日本コーヒー協会は、おいしいコーヒーを淹れるための基本原則の中で「お湯は、沸騰後にポットを火から離し、湯面がぐらぐらしているのが静まった程度(95度前後)が適温です」としています。また、陶器のコーヒー用急須の製品ページでは、直火での使用には対応しておらず、お湯は別途沸かしてから使うよう案内されています。
やりがちなのは、沸いた瞬間のお湯をそのまま急須に注いでしまうことです。協会が示す目安より熱い状態で抽出することになり、湯温の条件が毎回そろいません。逆に、沸かしてから長く放置したお湯はぬるくなり、こちらも目安から外れてしまいます。
温度計がなくても、火を止めて湯面の泡が落ち着くのを待つだけで目安に近づけます。電気ケトルなら「沸騰して電源が切れたら、少し置いてから使う」と決めておくと、毎回の湯温がそろいやすくなります。
粉を入れて少量のお湯を回しかけ、1分ほど蒸らす
粉を急須の網に入れたら、いきなりお湯を全部注がずに、まず少量を回しかけて蒸らします。コーヒー用急須の製品例では、この蒸らしを1分ほどとっています。
製品ページには「カゴ網フィルターにコーヒー粉を入れ、お湯を少し回しかけて1分ほど蒸らします」とあります。蒸らしは、乾いた粉全体にまずお湯をなじませ、あとから注ぐお湯が粉に行き渡りやすくするための工程と説明されることがあります。
やりがちなのは、少量のつもりが粉が浮くほど注いでしまうことと、蒸らしを省いていきなり満水まで注ぐことです。粉の一部が乾いたまま浮いていると、その部分だけお湯と触れる時間が短くなり、味のばらつきにつながりえます。
回しかけるときは、粉の表面全体がしっとり湿る程度を目安に、中心から外へ向けて静かに注ぎます。蒸らしの1分もタイマーで測っておくと、2回目以降に味を比べるときの基準になります。
お湯を注いで2〜3分待ち、最後まで注ぎ切る
蒸らしが終わったらお湯を注ぎ、2〜3分待ってからカップに注ぎます。ここが急須コーヒーの抽出の中心で、待つ時間がそのまま抽出時間になります。
製品ページの手順では、蒸らしのあとにお湯を注いで2〜3分待つと案内されています。全日本コーヒー協会が説明するとおり、抽出時間が短いと酸っぱくて薄く、長いと苦くてエグくなるので、この幅の中で好みの時間を探すのが基本の考え方です。
見落としやすいのが、注いだあとの急須の中です。カップ1杯分だけ注いで残りを急須に置いたままにすると、残ったコーヒーは粉と触れ続けるので、2杯目は1杯目より長く抽出されたことになります。「2杯目だけ苦い」と感じるときは、まずここを疑ってみてください。
複数杯を淹れるときは、時間が来たら温めておいたポットやサーバーに一度すべて注ぎ切ってから、カップに分けると味がそろいます。カゴ型の網なら、時間が来た時点で網ごと引き上げる方法もあります(取り外せるかどうかは製品の説明で確認を)。
杯数と急須の容量から、粉の量を決める
粉の量は「何杯淹れるか」から考え、急須の容量に収まる範囲で決めます。容量いっぱいまで淹れようとして粉もお湯も増やしすぎると、蒸らしや注ぎがしにくくなります。
全日本コーヒー協会のコラムは、1杯分の粉量の目安として、中挽きなら12〜13g、粗挽きなら約15g、中細挽きなら約10gを挙げています。コーヒー用急須の製品例では満水容量が約600mlで、最大量は小カップで約3杯分、通常カップで約2杯分と案内されています。
やりがちなのは、満水まで注ぐ前提で粉を入れ、カップの数とお湯の量が合っていないケースです。粉に対してお湯が多すぎれば薄く、少なすぎれば濃くなり、湯温や時間をいくら調整しても狙った味に近づきません。
はじめは「淹れたい杯数×1杯分の粉量」を出発点にし、急須の容量を超えないお湯の量で淹れてみましょう。粉はキッチンスケールで量ると、計量スプーンで量るより毎回の量をそろえやすくなります。
苦い・薄いはなぜ起きる?挽き目と粉量の考え方

基本原則に「器具にあった挽き方」が入っている理由
挽き目は、急須コーヒーの味を左右する大きな要素です。全日本コーヒー協会の基本原則には、新鮮な焙煎豆を使うこと、器具にあった挽き方をすること、器具に合わせたコーヒー量を使うことが並んでいます。
挽き目が細かいほど粉の表面積が増え、同じ時間でも成分が溶け出しやすくなる、という理屈があります。ペーパードリップのようにお湯が通り抜ける淹れ方と、急須のようにお湯に浸して数分待つ淹れ方では、粉とお湯が触れている時間の長さが違うため、同じ挽き目が合うとは限りません。
やりがちなのは、ドリップ用として挽いた粉をそのまま急須に使い、ドリップのときと同じ味を期待してしまうことです。器具が変われば抽出時間も変わるので、味の出方も変わりやすくなります。
急須向けの挽き目が製品の説明で案内されていない場合は、同じく粉を浸して待つフレンチプレスに協会のコラムが中挽き・粗挽きを示しているので、中挽きを起点にすると、粉量もあわせて決めやすくなります。また、豆の鮮度も基本原則の一つです。粉にしたあとの保存の考え方は、こちらの記事で整理しています。

細かすぎる粉を長く浸すと、苦くエグくなりやすい
急須で「苦い」「エグい」と感じたら、まず疑いたいのが挽き目の細かさと待つ時間の組み合わせです。どちらも抽出を強める方向に働くため、重なると苦味が前に出やすくなります。
協会は、抽出時間が長いと苦くてエグくなると説明しています。急須はもともと2〜3分お湯に浸す淹れ方なので、細かい粉を使うと、その時間いっぱい成分が引き出され続けることになります。さらに細かい粉は網の目を通りやすく、カップに微粉が入ると口の中でざらつきも感じやすくなります。
典型的な失敗は、「濃いめが好きだから」と細挽きの粉を多めに入れ、さらに3分を過ぎるまで待ってしまうパターンです。濃くしたいという狙いに対して、苦味とエグみばかりが目立つ一杯になりがちです。
濃さが欲しいときは、挽き目を細かくする前に、粉の量を1杯分の目安の範囲で少し増やすほうが、苦味だけが強くなる事態を避けやすくなります。時間はまず製品例の2〜3分を目安にし、挽き目・粉量・時間のどれか1つだけを変えて比べましょう。
細かく挽いた粉をたっぷり入れ、タイマーなしで長く浸すと、抽出が進みすぎて苦くエグい一杯になりやすくなります。挽き目を一段粗くするか、待つ時間を2〜3分の範囲に戻すところから見直しましょう。変えるのは毎回1か所だけにすると、原因がはっきりします。
実は「注ぎ方」より「量と時間」で味が決まる
意外と知られていないけれど、急須コーヒーは、細口ケトルで湯を細く注ぐような技術の差が出にくい淹れ方です。味の差は、粉量・挽き目・湯温・待つ時間という「数えられる条件」にほぼ集約されます。
ハンドドリップでは、注ぐ速さや湯の当て方によって、お湯が粉の層を通る時間が変わります。急須では粉が湯に浸ったまま待つので、注ぎ方の上手・下手による時間のぶれが入りにくく、時間はタイマーで決められます。条件を数値で管理しやすいのが、浸して待つ淹れ方の特徴です。
ドリップで味が安定しない人ほど、「注ぎ方が悪いのかも」と技術のせいにしがちです。ところが実際には、粉量を目分量にしていたり、湯温が毎回違っていたりと、数えられる条件のほうがぶれていることも少なくありません。急須はこのぶれに気づくきっかけにもなります。
コツは、淹れるたびに「粉の量・挽き目・待った時間・味の感想」を1行メモしておくことです。下の表の粉量の目安を起点に、条件を1つずつ動かしていけば、自分の好みの組み合わせが見つけやすくなります。
| 項目 | 中細挽き | 中挽き | 粗挽き |
|---|---|---|---|
| 1杯分の粉量の目安 | 約10g | 12〜13g | 約15g |
| 急須で使うときの考え方 | 成分が出やすいぶん、待ち時間の延びに注意。網から粉が抜けやすい | 粉量の目安から決めやすい起点 | 網に引っかかりやすい。薄いと感じたら時間を2〜3分の範囲で調整 |
金属の網で淹れると、口当たりはどう変わる?
紙と網では、カップに届くものが変わる
紙フィルターを使わない急須コーヒーは、紙でこしたコーヒーとは口当たりが変わることがあります。違いを生むのは、こす素材がカップに通すものの違いです。
紙フィルターは繊維の層で液体をこすため、細かい粉やコーヒーの油分を受け止めやすいと説明されることがあります。金属の網は紙と比べて目が粗いものが多く、細かい粉や油分がカップまで届きやすいとされています。そのため、コクやとろみのような質感を感じる人がいる一方で、カップの底に粉が沈むこともあります。
やりがちな誤解は、カップの底に細かい粉が残っているのを見て「淹れ方を失敗した」と思い込むことです。網でこす淹れ方では、ある程度の微粉はカップに入る前提で考えたほうが、仕組みとしては自然です。
気になるときは、カップの底の最後の一口を飲み切らずに残すだけでも、ざらつきを感じにくくなります。すっきりした口当たりを優先したい日は、紙フィルターを使う淹れ方と使い分けるのも一つの選択です。紙フィルターを切らしたときの代用品の考え方は、こちらの記事で解説しています。

200メッシュの畳織フィルターという一例
コーヒー用に作られた急須には、網の細かさや織り方に工夫がある製品があります。ここでは、公式の製品ページで仕様が確認できた一例を紹介します。
常滑焼のコーヒー用急須の製品ページでは、フィルターに特注の200メッシュ畳織ステンレスフィルターを採用し、「コーヒー粉の目詰まりが少ない設計」と説明しています。網でこす器具にとって、目詰まりのしにくさは注ぎやすさや手入れのしやすさに関わるポイントです。
この製品例では、本体は陶土(朱泥)、フィルターは18-8ステンレスで、満水容量は約600ml、重量は約380g、サイズは幅約20.5cm×奥行約12cm×高さ約10.8cmとされています。お茶用の急須を流用する場合は、網の細かさや素材がこうしたコーヒー用の設計とは違う可能性がある点を頭に入れておきましょう。
ここに挙げた仕様は特定の製品の値で、すべての急須に当てはまるわけではありません。手持ちの急須やこれから選ぶ急須は、網の素材・目の細かさ・取り外せるかどうか・容量を、取扱説明書や製品ページで確かめてから使い方を決めましょう。
| 本体の素材・生産国 | 陶土(朱泥)・日本(常滑焼) |
| フィルター | 特注200メッシュ畳織ステンレスフィルター(18-8ステンレス)。紙フィルター不要 |
| 容量・重量・サイズ | 満水容量約600ml(小カップで約3杯分/通常カップで約2杯分)・約380g・幅約20.5cm×奥行約12cm×高さ約10.8cm |
| 淹れ方と注意点 | 蒸らし1分ほど→お湯を注いで2〜3分。直火禁止、急激な温度変化に注意、使用後は早めに洗浄 |
網の目詰まりと粉の抜けを左右する条件
網でこす淹れ方では、粉の細かさと網の目の関係で注ぎやすさが変わります。注ぐ途中で流れが細くなったり、逆に粉がカップへ流れ出たりするのは、この組み合わせが合っていないサインです。
挽き目が細かすぎると、網の目に粉が入り込んで流れをふさぎやすくなります。反対に粗い粉は網に引っかかりやすい一方、協会の目安では1杯分の粉量が多め(粗挽きで約15g)になります。どちらに寄せても一長一短があるので、急須の網に合う挽き目を探すことが大切です。
やりがちなのは、注ぎが遅くなったときに急須を大きく傾けたり揺すったりすることです。網の上の粉が動いて細かい粉が網を抜けやすくなり、カップのざらつきが増える原因になります。
注ぎにくいと感じたら、次回は挽き目を少し粗くし、網に粉を入れすぎていないかを確認しましょう。注ぐときはゆっくり一定の角度で傾け、最後は急須を起こして切ると、粉が流れ込みにくくなります。
陶器の急須を割らないために守りたいことは?
急須を直火にかけて温め直さない
陶器の急須は、火にかけて使う道具ではありません。冷めたコーヒーを温め直したいときも、急須ごとコンロにかけるのは避けましょう。
コーヒー用急須の製品ページでは「直火禁止」とし、直火での使用には対応していないため、お湯は別途沸かしてから使うよう案内しています。急須はあくまで、沸かしたお湯を受けて抽出し、注ぐための器です。
やりがちなのは、「やかんのように使えそう」と、粉とお湯を入れた急須をそのまま火にかけてしまうことです。器を傷めるおそれがあるうえ、湯温も抽出時間も管理できなくなり、95度前後・2〜3分といった条件がわからなくなります。
冷めたコーヒーを温めたいときは、急須から耐熱のカップや小鍋に移してから温めるのが基本です。そもそも冷めにくくしたいなら、淹れる前にカップをお湯で温めておくほうが、急須に負担をかけずに済みます。
急な温度変化は陶器の弱点
陶器の急須は、熱い・冷たいが急に切り替わる使い方に弱い性質があります。直火と並んで気をつけたいのが、この温度差です。
製品ページでは急激な温度変化への注意として、「陶器は特有の性質として、過度な温度変化に弱い特性があります」と説明しています。お湯の温度だけでなく、急須そのものの温度にも目を向ける必要があるということです。
やりがちなのが、水出し用に冷蔵庫で冷やしていた急須に、取り出してすぐ熱いお湯を注ぐケースです。同じ急須でアイスとホットを続けて淹れる人ほど起こりやすい失敗です。冷水で洗った直後や、冬の冷えた台所に置いていた急須でも、同じような温度差が生まれます。
冷蔵庫から出した急須は室温に戻るまで置いてから使い、熱いお湯を注ぐ前にぬるめのお湯で内側をなじませておくと、温度差を小さくできます。逆に、熱いままの急須をすぐ冷水で洗うのも同じ理由で避けましょう。
冷蔵庫で冷やした急須にすぐ熱いお湯を注ぐと、陶器が急な温度変化を受けます。水出しのあとは室温に戻してから使い、温め直しのために急須を火にかけることも避けましょう。熱いまま冷水で洗うのも同じ理由でNGです。
熱いお湯の入った急須は、必ず持ち手を持つ
熱いお湯を入れた急須は、本体も熱くなります。注ぐときやテーブルへ運ぶときは、本体ではなく持ち手を持ちましょう。
製品ページでも、熱湯を使うため火傷に注意し、必ず持ち手を使うよう案内されています。急須コーヒーでは2〜3分待つあいだに本体が温まるので、注ぐころには胴を素手で持つと熱く感じる状態になっていることがあります。
やりがちなのは、注ぎ終わりに急須を起こそうとして、もう片方の手で胴や蓋を押さえてしまうことです。お茶を淹れるときの習慣で蓋を押さえる人も、熱いお湯を使うコーヒーでは指先が熱い部分に触れやすくなります。
注ぐときは持ち手をしっかり握り、蓋が外れやすい急須なら布巾をあてて押さえると安心です。子どもの手が届く場所やテーブルの端に置かないといった置き場所の配慮も、熱い器具を扱うときの基本です。
洗い方とにおい移りはどうすればいい?
使い終わったら、早めに洗うのが基本
急須コーヒーを淹れたら、粉を捨てて早めに洗いましょう。急須に粉やコーヒーを残したまま置いておくのは避けたい習慣です。
全日本コーヒー協会の基本原則には、清潔な器具を使うことが含まれています。コーヒー用急須の製品ページでも、使用後は早めに洗浄するよう案内されています。器具に前回のコーヒーが残っていると、次に淹れる一杯の香りや味に影響しうる、というのが清潔さが原則に入っている理由と考えられます。
やりがちなのは、朝に淹れて出かけ、夜まで粉が入ったまま急須を置いておくことです。湿った粉が網に張りつくと落としにくくなり、網の目に残った粉が次のコーヒーに混ざる原因にもなります。
飲み終えたら、まず網の粉を捨て、本体と網をそれぞれ水かお湯ですすぎます。洗剤やスポンジ・ブラシを使ってよいかは素材や製品によって違うので、取扱説明書の手入れ方法を確認してから選びましょう。
網の目に残った粉を落とすコツ
網の手入れで大切なのは、目に入り込んだ粉を残さないことです。見た目がきれいでも、目の中に粉が残っていることがあります。
網の目に粉が残ったまま乾くと、次に淹れるときにお湯の通りが悪くなり、注ぎにくさや微粉の原因になります。コーヒー用急須の製品例のように目詰まりしにくい設計の網でも、粉を残さない手入れが前提です。
やりがちなのは、粉を入れる側(内側)から水をかけるだけで済ませることです。粉は内側から網の目に押し込まれているので、同じ向きから水をかけると、目の中の粉がさらに奥に入り込むことがあります。
すすぐときは、網の外側から内側へ向けて水を流すと、目に入った粉を押し戻しやすくなります。洗ったあとは水気を切ってよく乾かしてから片づけると、次に使うときも気持ちよく淹れられます。乾かし方や収納の注意も、製品の取扱説明書に沿って行いましょう。
お茶用の急須と兼用するときの考え方
手持ちの急須をお茶とコーヒーの両方に使うことはできますが、兼用するなら洗い方と使い分けのルールを決めておくと安心です。
コーヒーもお茶も香りを楽しむ飲み物なので、前に淹れたものが残っていると、次の一杯の香りに影響しうるからです。協会が基本原則に清潔な器具を挙げているのも、同じ理由から理解できます。
やりがちなのは、コーヒーを淹れた急須を軽くすすいだだけで、すぐにお茶を淹れることです。網の目や注ぎ口の内側に粉が残っていると、お茶にコーヒーの粉が混ざってしまうこともあります。
兼用する場合は、毎回網と注ぎ口の内側まで流水で確かめ、乾かしてから次に使いましょう。香りの移りが気になる人は、コーヒー専用の急須を1つ決めておくと、手入れの手間も味の比較も単純になります。
急須コーヒーで水出しはできる?水選びとカフェインの疑問
冷水を注いで、急須ごと冷蔵庫で一晩おく方法
急須はホットだけでなく、冷たい水でじっくり抽出する水出しにも使えます。コーヒー用急須の製品ページでは、アイスは冷水抽出とし、急須ごと冷蔵庫に一晩置く方法も案内されています。
水はお湯に比べて成分が出るのに時間がかかるため、ホットの2〜3分ではなく、一晩という長い時間をかけて抽出するという考え方です。粉を浸して待つ急須の仕組みは、そのまま水出しにも生かせます。
やりがちなのは、冷蔵庫に入れたまま忘れて、一晩のつもりが翌日の夜まで置いてしまうことです。抽出時間が長いと苦くエグくなるという原則は水出しでも同じなので、仕込んだ時間を急須に貼ったメモなどで残しておくと安心です。
仕込みは寝る前、粉と液体を分けるのは翌朝、と時間帯を決めておくと抽出時間がそろいます。冷やした急須でそのままホットを淹れる場合は、前の章のとおり室温に戻してから熱いお湯を注ぎましょう。お湯で淹れて冷やすアイスコーヒーの作り方は、こちらの記事が参考になります。

水は軟水、できれば浄水器を通した水で
急須コーヒーの水は、軟水を基本に考えます。粉とお湯(水)だけで作る飲み物なので、水の違いは味にそのまま表れやすくなります。
全日本コーヒー協会のコラムは「コーヒーの味をダイレクトに楽しむには、軟水が適しています」とし、なるべく浄水器を通した水を使うことをすすめています。適切な水を使うことは、協会の基本原則の一つにも入っています。
やりがちなのは、水を変えたことで味が変わったのに、豆や挽き目のせいだと思い込んで別の条件をいじってしまうことです。旅行先や引っ越し後に「いつもと味が違う」と感じたときは、水も疑ってみてください。
水道水を使うなら浄水器を通し、市販の水を使うなら、ラベルで軟水か硬水かを確かめてから選びましょう。味を比べるときは、水を固定したうえで挽き目や時間を動かすと、違いの原因がつかみやすくなります。
カフェイン量は「淹れ方の条件つき」で見る
急須で淹れたコーヒーのカフェイン量を考えるときは、公的資料の数値が「どんな条件で淹れたものか」をセットで見ることが大切です。
食品安全委員会のファクトシート「食品中のカフェイン」では、コーヒー(浸出液)は100mlあたり60mgで、浸出方法はコーヒー粉末10gに熱湯150mlとされています。インスタントコーヒーは100mlあたり57mgで、インスタントコーヒー2gに熱湯140mlという条件です。
やりがちなのは、この数値を「どんな淹れ方のコーヒーにも当てはまる値」として受け取ることです。粉の量・お湯の量・抽出時間が変われば、カップの中の値も変わりうるので、急須で濃いめに淹れた一杯が同じ値になるとは限りません。
カフェイン量が気になる人は、粉の量と杯数を把握し、公的資料の数値は条件つきの目安として参照しましょう。体調や妊娠中のカフェインについては、医師に相談してください。
急須コーヒーが向いている人・場面
急須コーヒーは、道具をそろえずに始めたい人や、味を条件で管理したい人に向いた淹れ方です。反対に、すっきりした口当たりを最優先したい人には、紙フィルターを使う淹れ方のほうが合う場面もあります。
浸して待つ仕組みなので注ぎ方の技術に左右されにくく、紙フィルターが不要で、急須の容量によっては複数杯を一度に淹れられます。一方で、微粉が入りやすいこと、陶器の扱いや網の手入れに気を配る必要があることは、知っておきたいデメリットです。
やりがちなのは、利点だけを見て「ドリップの代わりに全部急須で」と切り替え、口当たりの違いに戸惑うことです。器具はどちらが上というものではなく、場面ごとに使い分けるものと考えると選びやすくなります。
下のように、自分の生活の場面に当てはめて考えてみましょう。
・ドリッパーを買う前に、家にある道具でコーヒーを始めたい人
・ペーパーフィルターを切らした朝に、いつもの粉で淹れたいとき
・ドリップで味が安定せず、粉量と時間を数値で管理したい人
・前の晩に仕込んで、翌朝に水出しのアイスを飲みたい人
※口当たりのすっきり感を重視する日は、紙フィルターを使う淹れ方との使い分けがおすすめです。
まとめ:急須で淹れる一杯は「湯温・挽き目・待つ時間」で決まる
まずは手持ちの急須の取扱説明書で網の構造と直火・温度変化の注意を確かめ、95度前後のお湯、1杯分の粉量の目安、蒸らし1分ほど・待ち時間2〜3分という条件で一杯淹れてみてください。条件をメモしておけば、次は挽き目か時間のどちらか1つを動かすだけで、好みの味に近づけていけます。
※器具の仕様や使い方は製品によって異なります。最新情報は各製品の公式サイトや取扱説明書でご確認ください。

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