夏が近づくと飲みたくなる水出しコーヒー。お湯で淹れて冷やす方法とは別に、上のタンクから一滴ずつ水を落として抽出するガラスの器具を見かけたことはありませんか。何が違うのか、どれくらい待てばいいのか、気になっている人も多いはずです。ポットに粉を漬けておく方法もあって、どちらも水出しと呼ばれるので、余計にわかりにくいんですよね。
先に結論をお伝えします。水出しコーヒードリップは、お湯を使わずに水をコーヒー粉へ少しずつ滴下して、時間をかけて成分を引き出す淹れ方です。HARIOの案内では、コックをひねって1秒に1~1.5滴に調節し、そのまま約3~5時間待つ流れが紹介されています。粉を水に漬けて冷蔵庫で待つ浸漬式とは、仕上がりの甘味の質が違うと説明されています。
この記事では、全日本コーヒー協会とHARIOの公式情報をもとに、滴下式と浸漬式の違い、手順と失敗の原因、豆と挽き目の選び方、器具ごとの容量と待ち時間、保存と手入れ、お湯で淹れるアイスコーヒーとの違いまで、理屈から順番に整理していきます。
・水出しの滴下式と浸漬式で、味の特長と待ち時間がどう違うか
・1秒に1~1.5滴という滴下速度の合わせ方と、やりがちな失敗
・HARIOの水出し器具4つの容量と抽出時間の比較
・できあがりの保存、目詰まり・におい移りを防ぐ手入れ
水出しコーヒードリップとは?お湯を使わず時間で引き出す淹れ方

お湯ではなく、最初から水で淹れる低温抽出
水出しコーヒーは、お湯で淹れたものを冷やすのではなく、最初から水で抽出するコーヒーです。HARIOの水出しコーヒーの紹介ページでは、お湯ではなく水で淹れる低温抽出の方法で、ゆっくり時間をかけて抽出すると説明されています。
ここで混同しやすいのが、熱いコーヒーを氷で冷やすアイスコーヒーです。見た目はどちらも冷たいコーヒーですが、抽出するときの温度がまったく違います。水出しは抽出の最初から最後まで水を使うので、お湯を沸かす工程そのものがありません。
やりがちなのは、水出しを熱いコーヒーを冷蔵庫で冷ましたものと同じだと考えてしまうことです。これは別の方法で、全日本コーヒー協会も、熱いコーヒーを氷で冷やすアイスコーヒーを別の淹れ方として紹介しています。器具を選ぶときは、パッケージや製品ページに水を注ぐのか、お湯を注ぐのかが書かれているので、まずそこを確認すると迷いません。
時間をかけるのは、水だと成分がゆっくり出てくるから
水出しに時間がかかるのは、低い温度でじっくり成分を引き出す方法だからです。HARIOは「ゆっくり時間をかけて抽出するので、茶葉やコーヒー本来の旨味が味わえます。」と紹介しています(HARIO 水出しコーヒー)。
さらにHARIOは、水出しは高温による酸化を防ぎ、苦みや渋みのもとになるタンニンやカフェインが溶け出しにくいので、苦味や雑味が抑えられたまろやかな味わいになると説明しています。ただしこれはメーカー自身による説明で、第三者が測った数値ではありません。この記事でも、味の特長はメーカーの説明の範囲で扱います。
家でやりがちな失敗は、待ちきれずに案内より早く抽出を切り上げてしまうことです。時間をかける前提の淹れ方なので、途中で止めると狙った味から外れやすくなります。器具ごとに案内されている時間は違うので、使う器具の製品ページや取扱説明書の時間をそのまま守るのが近道です。前の晩に仕込んで朝に飲む、といった段取りで考えると無理がありません。
ウォータードリップ、ダッチコーヒー、コールドブリューは同じ仲間
水を一滴ずつ落とす滴下式の水出しには、いくつか呼び名があります。全日本コーヒー協会のいろいろな器具(知る・楽しむ)では、水出しコーヒー滴下式について「ウォータードリップ、ダッチコーヒー、コールドブリューともいわれ、コクのある甘味が特長です。」と紹介されています。
つまり、お店のメニューや器具の名前で見かけるこれらの言葉は、協会の器具紹介では同じ滴下式の別名として並んでいる、ということです。なお、それぞれの呼び名の由来や発祥については、今回確認した一次情報では裏付けが取れなかったため、この記事では扱いません。
注意したいのは、コールドブリューという言葉が広く水出し全般を指して使われる場面もあることです。商品名だけで判断すると、粉を漬けるタイプなのに滴下式だと思い込んでしまうことがあります。買う前には、製品ページの説明に水を滴下するのか、粉を水に漬けるのかが書かれているかを確かめましょう。HARIOの場合、滴下式はウォータードリッパー、浸漬式は水出し珈琲ポットなどの名前で分かれています。
水出しコーヒー=お湯ではなく最初から水で淹れる低温抽出のコーヒー(HARIOの説明)。
滴下式=ポタポタと水をコーヒー粉に落として抽出する方法。全日本コーヒー協会の器具紹介では、ウォータードリップ・ダッチコーヒー・コールドブリューとも呼ばれると紹介されています。
浸漬式=コーヒー粉を水に漬けて抽出する方法。HARIOの水出し珈琲ポットやフィルターインコーヒーボトルがこのタイプです。
ポタポタ落とすか、漬けて待つか?2つの方式で変わる甘味
滴下式はコクのある甘味、浸漬式はスッキリとした甘味
水出しの方式は大きく2つあり、HARIOは味の特長をはっきり分けて紹介しています。滴下式については「ポタポタと水をコーヒー粉に落として抽出する方法。コクのある甘味が特長。」、浸漬式については「コーヒー粉を水に漬けて抽出する方法。スッキリとした甘味が特長。」です(HARIO 水出しコーヒー)。
どちらも甘味を特長に挙げている点は共通で、違うのはその方向性です。全日本コーヒー協会も滴下式についてコクのある甘味が特長と紹介しており、メーカーと協会で表現がそろっています。
やりがちなのは、どちらが上かで選ぼうとしてしまうことです。公式の説明は味の方向の違いを示しているだけで、優劣を付けてはいません。濃さや口当たりのしっかりした一杯を楽しみたいなら滴下式、軽やかに飲みたいなら浸漬式、というように、好みの方向で選ぶのが自然です。迷ったら、手持ちの冷蔵庫のスペースや待てる時間から決めてしまうのも一つの手です。
実は手順にドリップと書かれていても浸漬式のことがある
意外と知られていないのですが、水出しコーヒードリップという言葉どおりの滴下式だけが、ドリップの工程を持っているわけではありません。HARIOの水出し珈琲ポットは浸漬式ですが、製品ページの手順には「粉全体が湿るように少量ずつ水を注ぎ」、のの字を描くようにドリップする工程が書かれています。
この場合のドリップは、ストレーナーに入れた粉へ水を少しずつ注ぐ作業のことです。注ぎ終えたあとは冷蔵庫で8時間程抽出するので、抽出の本体はあくまで粉を水に漬けておく浸漬です。一方の滴下式は、タンクの水がコックを通って一滴ずつ粉に落ち続け、その間ずっと抽出が進みます。
手順の文中にドリップとあるだけで滴下式だと判断すると、思っていた味や待ち時間と違った、ということが起きます。器具を見分けるときは、注ぐ工程の有無ではなく、水が一滴ずつ落ち続ける仕組みかどうか(コックや滴下用のタンクがあるか)を見るのが確実です。
待ち時間は器具しだいで、45分~1時間から6〜8時間まで
水出しは何時間、と一つの数字で覚えてしまうのはおすすめしません。公式の案内を並べると、器具によって待ち時間がかなり違うからです。HARIOの水出しコーヒー紹介ページでは、滴下式はそのまま約3~5時間待つ流れ、浸漬式は冷蔵庫で約8時間と案内されています。
ところが同じHARIOでも、滴下式のウォータードリッパー・ドロップの製品ページには「45分~1時間で水たてコーヒーができます。」とあります。また全日本コーヒー協会の器具紹介では、ウォータードリップは6〜8時間(10杯分)かけて一滴ずつ水を落として抽出すると説明されています。
この違いは、器具の大きさや作る量、滴下の仕組みが違うためと考えられます。ネットで見かけた時間をそのまま別の器具に当てはめると、早すぎたり待ちすぎたりの原因になります。手持ちの器具の製品ページか取扱説明書に書かれた時間を基準にしましょう。
| 項目 | 滴下式 | 浸漬式 |
|---|---|---|
| 抽出のしかた | 水をポタポタとコーヒー粉に落とす | コーヒー粉を水に漬ける |
| 味の特長(HARIO) | コクのある甘味 | スッキリとした甘味 |
| 待ち時間の案内例 | 約3~5時間(HARIO紹介ページ)/45分~1時間(ドロップ)/6〜8時間・10杯分(協会) | 冷蔵庫で約8時間(HARIO) |
| HARIOの器具例 | ウォータードリッパー・ドロップ/クリア | 水出し珈琲ポット/フィルターインコーヒーボトル |
水出しコーヒードリップの淹れ方|1秒に1~1.5滴に合わせる手順

まず粉全体を湿らせてから水を落とし始める
滴下式の最初の工程は、いきなり水を落とすことではなく、コーヒー粉を湿らせることです。HARIOの水出しコーヒーの作り方では、手順の1番目にコーヒー粉を湿らせる工程が置かれています。
HARIOの滴下式の手順には、この工程の理由までは書かれていません。ただ、浸漬式の水出し珈琲ポットの手順にも、粉全体が湿るように少量ずつ水を注ぐ工程が入っていて、どちらの方式でも粉に水をなじませてから抽出に入る流れになっています。
やりがちなのは、乾いた粉の上でいきなり滴下を始めてしまうことです。水が一部にしか当たらず、粉全体に行き渡るまでに時間がかかる状態のまま進むことになります。粉をセットしたら、まず少量の水で表面だけでなく全体を湿らせ、それから上のタンクに水を入れるという順番を守りましょう。湿らせる水の量は器具ごとに違うので、取扱説明書の案内に合わせてください。
コックをひねって1秒に1~1.5滴に調節する
滴下式の味を左右するのが、水の落ちる速さです。HARIOの作り方には「水を滴下する。1秒に1~1.5滴落ちる程度にコックをひねり調節します。」とあります(HARIO 水出しコーヒー)。
滴下式では、水が一滴ずつ粉に落ち、粉の層を通ってから下の容器にたまります。滴下の速さが変わると、水が粉に触れている時間が変わるので、仕上がりの濃さにも影響すると考えられます。だからこそ、目安の速さに合わせる工程が手順に入っているわけです。
合わせ方のコツは、コックを少しずつ回し、時計の秒針を見ながら数秒間の滴数を数えることです。1秒に1滴から1.5滴の間に収まっていれば目安どおりです。HARIOのウォータードリッパー・クリアのように、製品ページに滴下速度は金属コックで調節すると書かれている器具もあります。調節の仕組みは器具ごとに違うので、手持ちの器具の説明書でコックの位置や回す方向を確認しておきましょう。
約3~5時間、そのまま待つあいだに見ておきたいこと
滴下速度を合わせたら、あとは待つだけです。HARIOの水出しコーヒー紹介ページでは、手順の3番目として、そのまま約3~5時間待つと案内されています。
ただし、前の見出しで見たとおり、待ち時間は器具によって違います。HARIOのウォータードリッパー・ドロップは製品ページで45分~1時間、全日本コーヒー協会の器具紹介では6〜8時間(10杯分)という例が示されています。手順の数字は、その器具とその量での案内だと考えておくと安全です。
待っているあいだに見ておきたいのは、滴下の速さが最初のまま保たれているかどうかです。抽出の途中で落ちる速さが変わってしまうこともあるので、仕込んだ直後に一度合わせて放置するより、ときどき滴数を数えて確かめると安心です。置き場所は、器具が倒れにくい平らな場所を選びましょう。ガラスの器具が多いので、手が当たりやすい場所や子どもの手が届く場所は避けておくと落ち着いて待てます。
滴下が速すぎる・遅すぎるまま気づかない失敗
滴下式で起こりやすい失敗が、滴下速度が目安から外れたまま抽出を終えてしまうことです。原因の多くは、最初にコックを合わせたあと一度も確認しないことにあります。
滴下が速すぎると、水が粉に触れている時間が短くなり、思ったより軽い仕上がりになる原因になると考えられます。逆に遅すぎると、案内された時間が過ぎてもまだ抽出が終わらず、予定していた時間に飲めないこともあります。どちらも、味の失敗というより段取りの失敗として起こるのがやっかいなところです。
対策はシンプルで、仕込み直後と途中で一度ずつ、1秒あたりの滴数を数えることです。目安はHARIOの案内どおり1秒に1~1.5滴です。また、器具ごとに想定の時間が違うので、終わりの時間を最初に決めておくと、外れたときに気づきやすくなります。たとえば寝る前に仕込むなら、起きた時点でまだ水が残っていないか、たまった量が想定に近いかを見ると判断しやすいですよ。
最初にコックを合わせたきり確認せず、滴下が速すぎたり遅すぎたりしたまま抽出を終えてしまう。仕込み直後と途中で一度ずつ滴数を数え、1秒に1~1.5滴の目安に戻しましょう。
豆と挽き目はどう選ぶ?深煎りの中細挽きがすすめられる水出し
インスタントではなく、豆を挽いた粉を使う
水出しの器具に入れるのは、コーヒー豆を挽いた粉です。HARIOのよくあるご質問では、水出しコーヒー器具について「コーヒー豆を挽いたコーヒー粉をご使用ください。」と案内されています。
水出しの器具は、ストレーナーやフィルターで粉をとどめ、水だけを通して抽出する仕組みです。インスタントコーヒーのように水に溶かして飲むことを前提にしたものとは、使い方の前提が違います。器具の想定どおりに使うためにも、挽いた粉を使うのが基本です。
やりがちなのは、家にあるものを手軽に使おうとして、器具の想定と違うものを入れてしまうことです。思ったような仕上がりにならないうえ、ストレーナーの手入れの手間が増えることもあります。豆を買うときは、挽いてもらうか、家のミルで挽くかを決めておきましょう。挽いた粉は豆より香りが抜けやすいので、水出し用にまとめて挽くより、仕込むたびに必要な量を挽くほうが扱いやすいです。
HARIOのおすすめは深煎りの中細挽き
豆の焙煎度と挽き目について、HARIOはFAQで水出しコーヒー器具全般に「深煎りの中細挽きがおすすめです。」と案内しています(HARIO よくあるご質問)。水出しコーヒーの紹介ページでも、浸漬式の手順のなかで豆は深煎りの中細挽きがおすすめと書かれています。
なぜ深煎りなのかという理由までは、今回確認したHARIOのページには書かれていません。ここで理由を想像で付け足すことはしませんが、メーカーが器具に合わせて推奨している組み合わせなので、最初の一回はこの組み合わせから始めるのが失敗の少ない入り方です。深煎りがどのような焙煎度なのかは、次の記事でくわしく扱っています。

「深煎り」と書かれた豆を買ってみたけれど、思ったより苦かった。逆に、カフェで飲んだ深煎りのアイスコーヒーはコクがあっておいしかった。同じ「深煎り」なのに印象が違…
やりがちなのは、ハンドドリップ用に買った粉をそのまま使い、挽き目の違いを気にしないことです。挽き目が変わると、水と粉の触れ方も変わります。まずは深煎りの中細挽きで作り、好みに合わなければ焙煎度や挽き目を一つずつ変えていくと、何が味を変えたのかがわかりやすくなります。
粉の量は説明書で確認し、決まった杯数で作る
粉の量は、器具の取扱説明書やパッケージに書かれた量に従うのが基本です。ただし、2026年10月8日時点で、HARIOの水出し珈琲ポットについては、製品ページ・FAQ・取扱説明書PDFから粉量(g)をテキストで確認することはできませんでした。そのため、この記事では具体的なグラム数は書きません。手元の器具に付属する説明書を確認してください。
あわせて大切なのが、作る杯数です。HARIOのFAQでは、○杯専用と書かれた器具は、指定より少ない杯数だとストレーナーが十分に水に浸らず、十分に抽出できない場合があるとして、指定杯数での使用をすすめています。
やりがちな失敗は、少しだけ飲みたいからと半分の量で作ってしまうことです。浸漬式のポットでは、ストレーナーが水から出てしまうと粉の一部が抽出に参加できません。少量だけ欲しいときは、杯数の少ない器具を選ぶほうが確実です。HARIOの水出し珈琲ポットには8杯専用と5杯専用の2サイズがあり、飲む量に合わせて選べるようになっています。
水出しには豆を挽いた粉を使い、まずはHARIOがすすめる深煎りの中細挽きから始めましょう。粉の量は器具付属の説明書で確認し、○杯専用の器具は指定の杯数で作るのが、十分に抽出させるための前提です。
HARIOの水出し器具4つで比べる容量と待ち時間

ウォータードリッパー・ドロップは45分~1時間の滴下式
HARIOのウォータードリッパー・ドロップ(品番WDDR-5-PGR)は、自然な水の滴下でアイスコーヒーを作る滴下式の器具です。製品ページには「45分~1時間で水たてコーヒーができます。」とあり、実用容量は600mLです。
スリム形状で冷蔵庫保存が可能、という点も製品ページで紹介されています。材質は、上ボール・下ボールが耐熱ガラス、フタと上ボールの一部にAS樹脂などが使われています。また製品ページには「下ボールのみ電子レンジOK。」と書かれているので、電子レンジにかけられるのは下ボールだけだと覚えておきましょう。
注意したいのは、この45分~1時間という時間が、HARIOの水出しコーヒー紹介ページにある滴下式の約3~5時間とは違う点です。同じメーカーでも器具ごとに案内が違うので、この器具を使うときは製品ページの時間を基準にします。ここでの紹介は特定の機種の例としてのもので、他の器具より優れているという意味ではありません。
ウォータードリッパー・クリアは金属コックで速さを調節
同じ滴下式のウォータードリッパー・クリア(品番WDCR-6)は、2-6杯用の器具です。製品ページには「抽出の滴下速度は金属コックで調節します。出来上がり容量780ml。」と書かれています。
コックで滴下速度を自分で合わせる仕組みなので、前の見出しで紹介した1秒に1~1.5滴という目安を合わせる作業が、そのまま使い方の中心になります。手入れについては「スタンド以外は、食洗機の使用が可能です。」と案内されています。
やりがちなのは、スタンドまで一緒に食洗機に入れてしまうことです。製品ページの記載どおり、食洗機に入れられるのはスタンド以外のパーツなので、スタンドは手洗いにします。また、この器具の製品ページについては、抽出時間をこの記事の比較表には載せていません。時間の目安が必要なときは、付属の取扱説明書を確認してください。
浸漬式の水出し珈琲ポットとフィルターインコーヒーボトル
浸漬式の代表が、水出し珈琲ポットです。出来上がり容量1,000mLの8杯専用(MCPN-14-B)と、600mLの5杯専用(MCPN-7-B)があります。粉に水を注ぎ終えたら、冷蔵庫で8時間程抽出します。製品ページでは「ストレーナーの底が外れて洗いやすい仕様です。」と紹介されています。
もう一つのフィルターインコーヒーボトル(FIC-70-PGR/FIC-70-B)は、出来上がり容量650mLの5杯専用です。製品ページの手順には「水を注ぎ終えたら栓をして、ボトルをゆっくり左右に振って抽出を促します。」とあり、こちらも冷蔵庫で8時間程抽出します。
どちらも、冷蔵庫に入れて待つだけで抽出が進むのが浸漬式の扱いやすさです。一方で、仕込んでから飲めるまでの時間は長めなので、飲みたい時間から逆算して仕込む必要があります。ボトルは振る工程がある点が、ポットとの手順の違いです。
暮らしに合わせた使い分けの目安
どの器具が正解というより、暮らしの段取りに合うかどうかで選ぶのが現実的です。公式の情報から言えることを、使う場面ごとに整理してみます。
夜に仕込んで朝に飲みたい人は、冷蔵庫で8時間程待つ浸漬式が段取りに合わせやすい方法です。仕込んだら冷蔵庫に入れておくだけなので、寝ているあいだに抽出が進みます。休日の昼に作って、その日のうちに飲みたい人は、滴下式が候補になります。ウォータードリッパー・ドロップなら製品ページの案内は45分~1時間です。
家族の分までまとめて作りたいなら、出来上がり容量1,000mLの水出し珈琲ポット(8杯専用)、一人で飲む分なら650mLのフィルターインコーヒーボトル(5杯専用)や600mLのミニ(5杯専用)というように、容量で選ぶ方法もあります。冷蔵庫の扉ポケットに入れたいなど、置き場所が限られる場合は、製品ページのサイズと冷蔵庫の空きスペースを先に比べておきましょう。
| 器具 | 方式 | 容量(製品ページ) | 抽出時間・調節の案内 |
|---|---|---|---|
| ウォータードリッパー・ドロップ | 滴下式 | 実用容量600mL | 45分~1時間 |
| ウォータードリッパー・クリア | 滴下式 | 2-6杯用・出来上がり容量780ml | 金属コックで滴下速度を調節 |
| 水出し珈琲ポット | 浸漬式 | 1,000mL(8杯専用)/600mL(5杯専用) | 冷蔵庫で8時間程 |
| フィルターインコーヒーボトル | 浸漬式 | 650mL(5杯専用) | 冷蔵庫で8時間程 |
できあがった後の保存と器具の手入れ
抽出後はストレーナーを外してから冷蔵庫へ
浸漬式で作った水出しコーヒーは、抽出が終わったらストレーナーを外して保存します。HARIOのFAQには「抽出後はストレーナーを外して冷蔵庫に保存してください。」とあります(HARIO よくあるご質問)。
FAQでは、ストレーナーを付けたままにしておくと苦味の原因になると説明されています。浸漬式は粉が水に漬かっているあいだ抽出が続く仕組みなので、できあがったあとも粉を入れたままにすると、想定の時間を超えて抽出が進んでしまうわけです。
やりがちなのが、飲むたびに注げばいいからと、ストレーナーを付けたまま冷蔵庫に戻してしまう失敗です。翌日に飲んだら苦く感じた、という場合は、この扱いが原因になっていることがあります。抽出時間が過ぎたらストレーナーを外し、粉を捨ててから冷蔵庫に戻す、という流れを習慣にしましょう。外したストレーナーは、粉が乾いて張り付く前に洗うと手入れも楽になります。
ボトルは横に倒さず、立てて保存する
冷蔵庫のスペースが足りないと、ボトルを横にして入れたくなりますよね。ですがHARIOのFAQでは、フィルターインコーヒーボトルについて「横に倒しての保存はできません。」と案内されています(HARIO よくあるご質問)。
理由は、密閉用の容器ではないため中身が漏れるからです。栓や注ぎ口は、立てて置くことを前提に作られています。ワインボトルのように寝かせて入れると、冷蔵庫の中にコーヒーがこぼれてしまうおそれがあります。
対策としては、仕込む前に冷蔵庫の中でボトルを立てて置ける場所を確保しておくことです。ドアポケットに入るかどうかは、製品ページのサイズと冷蔵庫の寸法を比べて確かめましょう。持ち運び用の水筒のように扱わず、冷蔵庫で立てて保存する容器と考えておくと安心です。持ち出したいときは、密閉できる別の容器に移すほうが漏れの心配がありません。
保存日数の目安は公式情報で確認できなかった
作った水出しコーヒーを何日で飲み切ればよいかは、多くの人が知りたいところです。ただ、2026年10月8日時点で、HARIOのFAQと水出し器具の製品ページを確認した範囲では、作った水出しコーヒーの保存日数の記載は見つかりませんでした。
そのため、この記事では具体的な日数は書きません。出所の示せない日数を書くと、読者が誤った目安で判断してしまうおそれがあるからです。インターネット上には日数を書いた情報も見かけますが、根拠となる公的機関やメーカーの数値が示されているかを確かめてから参考にしてください。
公式情報から言えるのは、抽出後はストレーナーを外して冷蔵庫に保存する、という扱い方までです。現実的な工夫としては、指定杯数のなかで飲み切れる容量の器具を選ぶこと、作った日をボトルに書いておくことが挙げられます。においや見た目に違和感があるときは、無理に飲まないようにしましょう。
目詰まりとにおい移りを防ぐ洗い方
水出しの器具は、細かいメッシュのストレーナーを使うので、手入れのポイントがいくつかあります。HARIOのFAQでは、目詰まりしたときは「約60度のお湯に浸け、やわらかいスポンジに中性洗剤をつけ、やさしく洗ってください。」と案内されています(HARIO よくあるご質問)。解消しない場合は、薄めた家庭用漂白剤に浸けて洗浄しますが、長時間の浸け置きはプラスチックの耐久性を下げるので、漂白剤の説明書に従うよう書かれています。
もう一つの注意点がにおい移りです。HARIOの水出しコーヒーポットのFAQ資料では、コーヒーと緑茶などを同じストレーナーで使うと、飲み物ににおいが移る場合があると説明されています。また、水出し茶ポットとはストレーナーのメッシュの細かさが違い、茶葉より細かいコーヒー粉には目の細かいストレーナーを使うとされています。
お茶用のポットでコーヒーを作ったり、同じストレーナーを使い回したりするのは避けましょう。においが気になるときは、薄めた家庭用漂白剤で洗浄するか、ストレーナーのパーツを購入する方法が案内されています。
抽出が終わったあとも、ストレーナーを付けたまま冷蔵庫に戻してしまう。HARIOのFAQでは、付けたままにすると苦味の原因になると説明されています。抽出時間が過ぎたらストレーナーを外し、ボトルは横に倒さず立てて保存しましょう。
お湯で淹れて冷やすアイスコーヒーと何が違う?カフェインの数字の読み方
急冷式は、熱いコーヒーを氷で一気に冷やす
冷たいコーヒーの作り方には、水出しのほかに、お湯で淹れてから冷やす方法があります。全日本コーヒー協会のペーパードリップで淹れるアイスコーヒーでは、「ペーパードリップで淹れるアイスコーヒーは、抽出した熱いコーヒーを氷で一気に冷やして作ります。」と説明されています。
水出しが最初から水で抽出するのに対し、急冷式は抽出そのものはお湯で行い、そのあと冷やします。協会は冷やし方として、サーバーを氷水に浸して冷やす方法と、氷の入ったサーバーに直接注ぐ方法を紹介しており、後者は急冷されて透明度の高い清涼感のある仕上がりになると説明しています。
やりがちなのは、2つを同じものとして考え、水出しの器具にお湯を注いだり、急冷式の分量で水出しを作ったりしてしまうことです。協会のページは急冷式の作り方を紹介したもので、水出しとの味の優劣を比べたものではありません。どちらが良いかではなく、時間をかけて待つか、その場で淹れて冷やすかの違いとして選び分けましょう。
急冷式は粉を多め、お湯を少なめにして濃く淹れる
急冷式で失敗しやすいのが、氷で薄まってしまうことです。協会のページでは、ポイントとして「氷が溶けて薄まることを考慮して、粉は多めに、お湯は少なめにして濃く抽出すること。」と書かれています(全日本コーヒー協会)。
材料は1杯140mL分で、コーヒー粉(細挽き〜中細挽き)12〜15g、氷適量、湯140mLです。湯温は95℃前後で、20mLを注いで30〜40秒蒸らし、3回に分けて注ぐ流れが紹介されています。水出しのように時間をかけない代わりに、氷で薄まる分を見込んで濃く淹れるわけです。
お湯で淹れるアイスコーヒーの水量や氷の量、豆選びは、次の記事でくわしく扱っています。

暑い日に家でアイスコーヒーを作ろうとして、いつもどおりにドリップして氷を入れたら、水っぽくて味がぼやけた。そんな経験はありませんか。ホットと同じ感覚で淹れると薄…
その場ですぐ飲みたい日は急冷式、前もって仕込んでおける日は水出し、という使い分けが現実的です。
カフェイン60 mg/100mlは熱湯で淹れた条件の数値
水出しのカフェイン量を気にする人も多いと思いますが、ここは数字の条件に注意が必要です。食品安全委員会のファクトシート『食品中のカフェイン』(作成日:平成23年3月31日)では、コーヒーのカフェインは60 mg/100mlで、浸出方法はコーヒー粉末10 g、熱湯150 mlとされています。農林水産省の現行のカフェインのページでも、コーヒー(浸出液)は60 mg/100 mLで、同じ浸出法が示されています。
つまりこの数値は熱湯で淹れたコーヒーのもので、水出しの値ではありません。水出しコーヒーのカフェイン量を示す公的な数値は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。HARIOはカフェインが溶け出しにくいと説明していますが、これはメーカーの説明で、具体的な量は示されていません。
水出しだから量を気にしなくてよい、と判断してしまうのは早計です。体調や妊娠中のカフェインについては医師に相談してください。

まとめ|滴下の速さと待ち時間は器具の案内に合わせる
最初の一歩としては、手持ちの器具が滴下式か浸漬式かを確かめ、製品ページか取扱説明書に書かれた時間と杯数をメモしておくことから始めてみてください。滴下式なら仕込み直後に秒針を見ながら滴数を数え、浸漬式なら飲みたい時間から逆算して前の晩に仕込むだけで、仕上がりのぶれはぐっと小さくなります。豆は深煎りの中細挽きを用意し、抽出が終わったらストレーナーを外して保存する、という流れを一度通して試してみましょう。
※器具の仕様や案内は変更されることがあるため、最新情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

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