家でエスプレッソを淹れようとして、「粉はどれくらい細かければいいの?」「ドリップ用の粉じゃだめ?」「何グラム入れて、どのくらい押せばいいの?」と手が止まったことはありませんか。マシンの説明書を開いても、挽き目・量・押し方がばらばらのページに書かれていて、全体像がつかみにくいんですよね。
先に結論を言うと、エスプレッソの粉は「極細挽き」が基本です。全日本コーヒー協会は、極細挽きの粉に約9気圧の圧力をかけて短時間で抽出するのがエスプレッソだと説明していて、粒の大きさは「上白糖くらい」が目安とされています。ただし、粉の細かさだけでは味は決まりません。粉の量・詰め方(タンピング)・挽き具合の3つのバランスで、抽出の速さも味もはっきり変わります。
この記事では、全日本コーヒー協会・全日本コーヒー公正取引協議会の表示規約・デロンギやビアレッティの取扱説明書など、一次情報に書かれていることだけを使って、エスプレッソの粉の「なぜそうするのか」を理屈から解説します。直火式のマキネッタ(モカポット)には極細挽きを使わない理由や、余った粉の扱い方まで、家で迷いやすい点をまとめて整理しました。
・エスプレッソの粉が「極細挽き」になる理由と、細かさの目安
・1杯あたりの粉の量と、詰め方(タンピング)で味が変わる仕組み
・抽出が速すぎる・遅すぎるときに、粉のどこを見直せばよいか
・直火式マキネッタやドリップに、エスプレッソ用の粉を使うときの注意点
エスプレッソの粉とは?「極細挽き」が基本になる理由

答えは「上白糖くらいの細かさ」の極細挽き
エスプレッソ用の粉は、5段階ある挽き方のうち一番細かい「極細挽き」が基本です。全日本コーヒー協会のエスプレッソ式の解説ページでは、エスプレッソを「極細挽きのコーヒー粉に約9気圧の圧力をかけて短時間で抽出するコーヒー」と説明しています。
なぜここまで細かくするのかというと、抽出にかける時間が短いからです。同じページでは、粒度を細かくすると湯と触れる面積が増え、短時間で抽出することで旨味が凝縮されると説明されています。ハンドドリップのように数分かけて湯を通すのではなく、20〜30秒間という短い時間で一気に成分を引き出すので、粉の表面積を大きくしておく必要があるわけです。
家でやりがちなのは、「細かいほど濃くなるなら、とにかく細かく挽けばいい」と考えてしまうこと。細かすぎると湯が通りにくくなり、抽出が遅くなったり、マシンによっては抽出されなかったりします(詳しくは後半の「抽出が速い・遅い」のセクションで説明します)。
目安として覚えやすいのは、同じく全日本コーヒー協会の焙煎・配合・粉砕のページにある「極細挽き=上白糖くらい」という表現です。指でつまんだときに、グラニュー糖より細かくしっとりした手触りになっていれば、エスプレッソ向けの範囲に近いと考えられます。
9気圧の圧力が「細かい粉」を必要とする仕組み
エスプレッソの粉が細かいのは、圧力をかけて湯を押し通す抽出方法だからです。全日本コーヒー協会はエスプレッソを約9気圧の圧力をかける抽出と説明しています。
理屈はこうです。粗い粉を圧力で押すと、粒と粒のすき間が大きいので湯がすぐに抜けてしまいます。湯が通り抜ける時間が短すぎると、成分が十分に溶け出す前に抽出が終わってしまう。そこで、粉を細かくしてすき間を狭め、さらに押し固めることで「湯が通りにくい層」をつくり、圧力をかけても一定の時間がかかるようにしているわけです。
この「通りにくさ」のさじ加減は、粉の細かさだけでなく、粉の量や押し固める強さでも変わります。デロンギのエスプレッソ・カプチーノメーカー(デディカ EC680)の取扱説明書では、粉の量・押し詰め具合・挽き具合の3つを「おいしいエスプレッソ」のための要素として並べています。
やりがちな失敗は、挽き目だけを何度も変えて、量や押し方をそのままにしてしまうことです。3つのうち1つずつ動かして確かめると、どこが原因かがわかりやすくなります。
エスプレッソは「豆の種類」ではなく「抽出方法」の名前
意外と混同されやすいのが、エスプレッソは豆の種類ではなく、淹れ方(抽出方法)の名前だという点です。全日本コーヒー協会の説明も、極細挽きの粉に圧力をかけて抽出する「コーヒー」として定義していて、特定の産地や品種を指してはいません。
そのため、店頭で見かける「エスプレッソ用」の粉は、「エスプレッソで淹れやすいように挽き方や焙煎度を合わせた粉」という意味合いで読むのが自然です。デロンギEC680の取扱説明書では、粉の選び方として、エスプレッソ用として売られているものや、やや深煎りの豆(ハイロースト、シティロースト、フルシティローストなど)がよいとし、挽き具合は極細挽きや細挽きが適しているとしています。
ここで焙煎度の呼び名を整理しておくと、全日本コーヒー協会の区分では、ハイロースト・シティローストは「中煎り」、フルシティローストは「深煎り」に入ります。説明書の「やや深煎り」は、中煎りの後半から深煎りの入口あたりを指していると読めます。
コツとしては、袋の表示で「焙煎度」と「挽き方」を別々に確認すること。深煎りでも中細挽きの粉なら、エスプレッソマシンでは抽出が速くなりやすくなります。

カフェのメニューに「エスプレッソ」と「カプチーノ」が並んでいると、どちらも小ぶりなカップで出てくることが多く、何がどう違うのか迷いますよね。濃いのはどっちなのか…
グラインド=焙煎したコーヒー豆をミルで粉砕すること。
ドーシング=使用する分量の粉をフィルターに均等に入れる作業。
レベリング=フィルター内の粉を均等に広げ、抽出ムラを防ぐ作業。
タンピング=タンパーで粉に圧力をかけて押し固める作業。
(用語の説明は全日本コーヒー協会・同協会の粉砕の解説による)
極細挽きはどれくらい細かい?5段階の挽き方と袋の表示の読み方
5段階の挽き方は「砂糖の粒」で覚えると迷わない
挽き方は、粗挽き・中挽き・中細挽き・細挽き・極細挽きの5段階で呼ばれるのが一般的です。全日本コーヒー協会の焙煎・配合・粉砕のページは、それぞれの粒の大きさを砂糖にたとえ、向いている器具も添えて説明しています。
同ページの内容を整理すると、粗挽きは「ザラメ糖」くらいでパーコレーターなど、中挽きは「グラニュー糖とザラメ糖の中間」くらいでサイフォンや布ドリップ(ネルドリップ)など、中細挽きは「グラニュー糖」くらいでペーパードリップや家庭用のコーヒーメーカーなど、細挽きは「上白糖とグラニュー糖の中間」くらいでウォータードリップ(水出しコーヒー)など、極細挽きは「上白糖」くらいでエスプレッソマシンやイブリック(ターキッシュコーヒー用)など、とされています。
やりがちなのは、「細挽き」と「極細挽き」を同じものだと思ってしまうことです。袋に「細挽き」とあれば、協会の区分では水出し向けの粒の大きさで、極細挽きより一段粗いことになります。
ミルで自分で挽く場合は、上白糖とグラニュー糖を小皿に出して見比べておくと、粒の大きさの感覚がつかみやすくなります。ミルの目盛りの数字はメーカーごとに意味が違うので、数字より「砂糖のどれに近いか」で合わせるのが確実です。
実は「極細挽き」の物差しは2つある
意外と知られていないけれど、挽き方の説明は、全日本コーヒー協会の解説と、袋の表示ルール(公正競争規約)とで言い回しが少し違います。
コーヒー粉の袋の表示は、全日本コーヒー公正取引協議会のレギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約で決められています。この規約では、レギュラーコーヒーの粉製品は「挽き方」の文字の後に、別表1の基準に基づいて「粗(荒)挽き」「細挽き」などと表示することになっています。
その別表1では、中挽きを「グラニュー糖程度の粗さ」、細挽きを「グラニュー糖と白砂糖の中間の粗さ」、極細挽きを「細挽き以下の粗さ」と定めています。協会の解説で「グラニュー糖くらい」とされているのは中細挽きなので、同じ「グラニュー糖」というたとえが、物差しによって1段ずれているわけです。
家で困るのは、この違いを知らずに「グラニュー糖くらいならエスプレッソに近い」と判断してしまうケースです。どちらの物差しでも、エスプレッソ向けの極細挽きは「グラニュー糖より細かい側」。迷ったら、表示の「極細挽き」という文字を優先して選べば外しません。
| 挽き方 | 協会の解説の粒の目安 | 表示規約(別表1)の基準 | 協会が挙げる主な器具 |
|---|---|---|---|
| 粗挽き | ザラメ糖くらい | ザラメ状又はそれ以上の粗さ | パーコレーターなど |
| 中挽き | グラニュー糖とザラメ糖の中間 | グラニュー糖程度の粗さ | サイフォン、ネルドリップなど |
| 中細挽き | グラニュー糖くらい | 中挽き、細挽きの中間の粗さ | ペーパードリップ、家庭用コーヒーメーカーなど |
| 細挽き | 上白糖とグラニュー糖の中間 | グラニュー糖と白砂糖の中間の粗さ | ウォータードリップ(水出し)など |
| 極細挽き | 上白糖くらい | 細挽き以下の粗さ | エスプレッソマシン、イブリックなど |
袋の「挽き方」表示はどこを見る?
市販の粉を選ぶときは、袋の一括表示(情報ラベル)にある「挽き方」の欄を見ます。全日本コーヒー協会の情報ラベル(一括表示)の見方では、挽き方は粗挽き(荒挽き)・中挽き・中細挽き・細挽き・極細挽きの5種類で、カタカナの英語で表示される場合もあると説明されています。
規約の別表1には英語の呼び名も添えられていて、極細挽きは「エキストラファイングラインド」、細挽きは「ファイングラインド」です。輸入品などでカタカナや英語で書かれていても、この対応を知っていれば読み取れます。
注意したいのは、豆のまま売られている製品には挽き方の表示がないことです。表示規約では、挽き方の表示はレギュラーコーヒーの粉製品が対象で、豆製品とインスタントコーヒーは挽き方を表示しないことになっています。豆の袋に「エスプレッソ用」「エスプレッソロースト」とあっても、それは挽き方ではなく、焙煎や用途を示す商品名側の表現と考えたほうが安全です。
粉を買うときは「挽き方:極細挽き」、豆を買うときは「焙煎度」の表示を確認し、挽き方は自分のミルで合わせる、という分担で考えると迷いにくくなります。
1杯に何グラム入れる?粉の量と抽出量・時間の関係

協会の目安は6〜9g、説明書は機種ごとに書き方が違う
エスプレッソ1杯分の粉の量は、全日本コーヒー協会のエスプレッソ式の解説では6~9gです。同ページの材料欄は「1杯25〜30mL分」で、抽出は20〜30秒間とされています。
一方、マシンの取扱説明書は、付属の計量スプーンと結びつけて量を書いていることが多いです。デロンギEC680の取扱説明書では、1杯の場合は計量スプーン小山盛り1杯(約8~10g)、2杯の場合は計量スプーンすりきり2杯(約12~14g)が目安です。全自動のデロンギ マグニフィカS(ECAM22112)の取扱説明書では、粉を使う場合は計量スプーンすり切り~山盛り1杯(6~11g)で、山盛り1杯を超える量は入れないよう書かれています。
やりがちなのは、協会の数字と説明書の数字のどちらかを「正解」と決めて、手元のマシンのフィルターに合わない量を詰めてしまうことです。フィルター(バスケット)の大きさは機種で違うので、まずは自分のマシンの説明書の量から始めるのが筋です。
キッチンスケールがあれば、計量スプーンで入れた粉を一度量っておくと、「小山盛り」「すりきり」が自分の手で何グラムになるのかがわかります。

| 出典 | 粉の量 | 抽出量・時間の目安 |
|---|---|---|
| 全日本コーヒー協会(エスプレッソ式) | 6~9g(極細挽き) | 1杯25〜30mL分・20〜30秒間 |
| 全日本コーヒー協会(基本原則・挽き方別) | 極細挽き 6~8g | 挽き方別の1杯分の目安 |
| デロンギ EC680 取扱説明書 | 1杯:小山盛り1杯(約8~10g) 2杯:すりきり2杯(約12~14g) |
1杯(約30mL)あたり約20秒が理想 |
| デロンギ マグニフィカS 取扱説明書 | 粉:すり切り~山盛り1杯(6~11g) | 粉からは1杯抽出のみ |
出典:全日本コーヒー協会「エスプレッソ式」、同「基本原則」、デロンギ各機種の取扱説明書。機種の販売状況はメーカーで確認してください。
粉が多いと濃く遅く、少ないと薄く速くなる
粉の量を変えると、濃さと抽出時間の両方が動きます。デロンギEC680の取扱説明書の「3つの要素」の表では、粉が多い(約10g・山盛り)と抽出濃度が濃くなり抽出時間が長くなり、少ない(約8g・小山盛り)と薄くなり短くなる、と整理されています。
理由は、粉の層の厚さです。同じフィルターに粉を多く入れると層が厚くなり、湯が通り抜けるのに時間がかかります。そのぶん成分がよく溶け出すので濃くなる。逆に粉が少ないと層が薄くなり、湯がすぐ抜けて薄くなる、というわけです。
家で起きやすい失敗は、「濃くしたいから粉を増やす」を繰り返して、フィルターホルダーがマシンに取り付けにくくなるケースです。EC680の説明書では、フィルターホルダーが取り付けられない原因として「粉の量が多すぎる」が挙がっています。マグニフィカSでも、粉の上限は計量スプーン山盛り1杯です。
濃さを変えたいときは、粉の量を説明書の範囲の中で少しずつ動かし、上限を超えないこと。範囲内で足りなければ、挽き具合や押し方の調整に移るのが順番です。
抽出量と時間は「約30mLを約20秒」が一つの物差し
粉の量や挽き目が合っているかを判断する物差しが、抽出量と抽出時間です。デロンギEC680の取扱説明書では、エスプレッソは1杯(約30mL)あたり約20秒で抽出するのが理想としています。全日本コーヒー協会のエスプレッソ式の解説では、抽出は20〜30秒間です。
なぜ時間を見るのかというと、時間は粉の状態をそのまま映すからです。EC680の説明書は、抽出時間が長すぎるとえぐみが感じられ、短すぎれば味に深みが出ないとしています。全日本コーヒー協会の基本原則のページでも、抽出時間が短いと酸味が強く薄い味、長いと苦味が強くえぐみが出る、という関係が説明されています。
やりがちなのは、味だけで判断して、何を変えたら何が変わったのかがわからなくなること。スマートフォンのストップウォッチで抽出の開始から終わりまでを計っておくと、次に粉を調整するときの手がかりになります。
なお、抽出したエスプレッソがドリップコーヒーよりぬるく感じても、EC680の説明書では、エスプレッソの温度は67~70℃前後が理想とされ、一般的なドリップコーヒー(85℃前後)と比べてぬるく感じることがあるが異常ではない、と案内されています。
粉を詰める・ならす・押す:タンピングで味が変わる仕組み
「均等に入れる」が安定の一番のカギ
エスプレッソの味が日によってぶれるとき、まず見直したいのは粉の入れ方です。全日本コーヒー協会のエスプレッソ式の解説は、エスプレッソを適切に抽出するにはコーヒー粉を正確にフィルターに入れる技術が必要だとし、「一定量の粉をいかに毎回同じように均等に入れられるかが大きなカギとなります」と書いています。
理由は、湯の通り道です。フィルターの中で粉が片寄っていると、粉の薄いところに湯が集中して流れ、濃いところにはあまり湯が通りません。結果として、一部は抽出しすぎ、一部は抽出不足という状態が同じ1杯の中で起きてしまいます。
やりがちなのは、粉をフィルターの中央に山のように盛ったまま押してしまうことです。中央だけ固く、縁がゆるくなるので、縁のすき間から湯が先に抜けやすくなります。
コツは、押す前に一度ならすこと。協会の手順では、指をフィルターの縁に沿って前後左右に動かして粉を均等に広げる作業を「レベリング」と呼んでいます。デロンギEC680の説明書も、粉を均等にならしてからタンパーで軽く押す手順です。
押す強さは「協会は15〜20kg程度」「説明書は軽く」
タンピングの強さは、出典によって書き方が違うところです。全日本コーヒー協会のエスプレッソ式の解説では、タンピングを「タンパーを使用してフィルター内の粉に15〜20kg程度の圧力をかける作業」と説明しています。一方、デロンギEC680の取扱説明書では、粉を均等にならしたあと、タンパーを使って軽く押す手順になっています。
この違いは、どちらかが間違っているというより、想定しているマシンや付属のタンパーが違うためと考えるのが自然です。EC680の説明書は、押し詰めが強いと抽出濃度が濃く、抽出時間が長くなり、弱いと薄く短くなる、と「調整する要素」として扱っています。
家でやりがちなのは、「プロは強く押すらしい」と聞いて、家庭用マシンで目いっぱい押してしまうことです。EC680の説明書では、抽出が遅い・抽出されないときの原因の一つに「フィルターに入れたコーヒー粉が詰まりすぎている」を挙げ、タンパーで押し詰める力を弱めるよう案内しています。
コツは、まず説明書どおりの強さで淹れ、抽出時間を見ながら少しずつ強弱をつけること。強さを毎回そろえる意識のほうが、強さそのものより味の安定に効いてきます。
垂直に押す・縁の粉を払う、の2つで失敗が減る
押す強さより見落とされやすいのが、押す角度とフィルターの縁です。全日本コーヒー協会の手順では、タンパーを持ち、肘を直角にして均等に力を加え、傾きが出ないように垂直に力を加えるとしています。
斜めに押すと、粉の表面が傾き、片側だけが厚くなります。湯は薄い側から抜けやすくなるので、さきほどの「均等に入れる」と同じく抽出ムラの原因になります。
もう一つの落とし穴が、フィルターの縁についた粉です。デロンギEC680の取扱説明書では、フィルターの縁についたコーヒー粉は必ず払い落とすよう書かれていて、縁に粉が付いたまま取り付けると、給湯口とフィルターホルダーの取り付け部分からお湯がもれる原因になるとしています。
押し終わったら、指や乾いた布でフィルターの縁をひと拭きしてからマシンにセットする。この一手間を習慣にすると、湯もれと抽出ムラの両方を防ぎやすくなります。
抽出が速い・遅い・苦いときは?原因を「粉」から探す
抽出が速くクレマが白っぽいなら「粉が足りない側」
抽出がすぐ終わり、表面の泡(クレマ)が白っぽくてすぐ消えるときは、粉の条件が「湯が通りやすすぎる」側に寄っているサインです。デロンギEC680の取扱説明書の「おいしいエスプレッソ/カプチーノができない?」では、この症状を抽出が不十分・抽出時間が短い状態として整理しています。
説明書が挙げる原因と対処は、押し詰め具合が弱い→タンパーで押す力をやや強く、粉の量が少ない→量を増やす、挽き具合が粗い→細かい粉を使う、粉が古い→新鮮な粉を使う、の4つが粉に関わるものです。このほか、カップとフィルターを湯煎していない、抽出温度の設定が低い、といったマシン側の原因も挙がっています。
家でよくあるのは、ドリップ用の中細挽きの粉をそのままエスプレッソマシンに使っているケースです。粒が粗いぶんすき間が大きく、押しても湯が速く抜けてしまいます。全自動のマグニフィカSの説明書でも、クレマがない・抽出が早すぎる原因として「適切なコーヒー粉を使用していない」が挙がっています。
直すときは、4つを同時に変えず、まず粉を極細挽きに替える→次に量→最後に押す強さ、の順に1つずつ確かめると原因が絞り込めます。

抽出が遅い・焼けたような味なら「粉が詰まりすぎ」
反対に、ポタポタとしか落ちない、時間がかかる、焼けたような味がするときは、粉の条件が「湯が通りにくすぎる」側です。デロンギEC680の取扱説明書では、濃い茶色のクレマで層が薄い・抽出に時間がかかる・焼けたような味がする症状を「抽出のしすぎ」としています。
原因として挙がっているのは、粉を押し詰めすぎた→押す力を弱く、粉の量が多い→量を減らす、挽き具合が細かい→粗い粉を使う、粉が古い→新鮮な粉を使う、です。マグニフィカSの説明書でも、抽出が遅い(ポタポタとしか抽出されない)ときに、グラインダーを粗いほうへ1目盛り回す、豆の量を減らすといった対処が案内されています。
ここで面白いのが、「粉が古い」は速すぎる側にも遅すぎる側にも原因として挙がっている点です。粉の状態が変わると、湯の通り方の予測がつきにくくなる、と読めます。
極細挽きは細かいぶん、少しの違いで抽出時間が大きく動きます。「極細挽きと書いてあるのに遅い」ときは、押す力と量から先に減らしてみて、それでも遅ければ一段粗い粉(細挽き)を試す、という順で考えると無理がありません。
原因:粉が細かすぎる・量が多すぎる・押しすぎると、湯が通らずに抽出が遅くなったり、抽出されなかったりします。デロンギEC680の取扱説明書では、抽出が遅い・抽出されない原因として「粉が詰まりすぎている」「粉の量が多すぎる」「粉が細かすぎる」を挙げています。
対策:押す力→粉の量→挽き具合の順に1つずつ戻し、抽出時間を計って変化を確かめましょう。マシンに無理な力をかけるのは故障の原因にもなります。
挽き目を変えたら「1段ずつ・1つずつ」
粉の調整で遠回りしないコツは、一度に動かすのは1つの要素だけ、しかも小さくです。デロンギEC680の説明書が粉の量・押し詰め具合・挽き具合の3つを「バランスが大切」としているのは、どれを動かしても抽出時間と濃さが同じ方向に動くからです。
たとえば、抽出が速すぎるからと、粉を増やし、強く押し、さらに細かい粉に替える、を同時にやると、今度は抽出が止まりそうなほど遅くなることがあります。何が効いたのかわからないまま、行ったり来たりしてしまうわけです。
全自動マシンの場合、マグニフィカSの説明書では、グラインダーノブを細かいほう・粗いほうに「1目盛り」回すという単位で案内されています。手動のミルでも同じ考え方で、目盛りは1段ずつ動かすのが基本です。
調整のたびに「粉の量・挽き目・押し方・抽出時間・味の印象」をメモしておくと、2〜3回で自分のマシンの落としどころが見えてきます。豆を替えたときも、このメモがあれば最初の1杯を外しにくくなります。
直火式マキネッタにエスプレッソの粉は使える?
ビアレッティの説明書は「極細挽きは使わない」
直火式のマキネッタ(モカポット)に、エスプレッソマシン用の極細挽きを入れるのは避けるべき使い方です。ビアレッティのモカエキスプレス取扱説明書は、本体を家庭用のモカ用に挽いたコーヒーと水のみを使うためのものとし、使用しないものの例にエスプレッソマシン用極細コーヒーを挙げています。アドバイスの欄でも、モカ用に挽いたコーヒーを使い、極細挽きのコーヒーは使わないよう書かれています。
理由は、抽出の仕組みの違いにあります。モカエキスプレスは直火にかけて使う器具で、ボイラーに水、ろうと形フィルターに粉を入れて抽出します。UCC上島珈琲の直火式エスプレッソの用語解説も、蒸気圧によって抽出するが「エスプレッソマシンでいれるときのようなきめ細かな泡(クレマ)は作れない」と説明しています。
粉が細かすぎると、湯の通り道がふさがりやすくなります。説明書の「よくある質問」では、安全バルブが漏れるときの確認項目として、モカ用に挽いたコーヒーを使っているかを最初に挙げています。
「エスプレッソ風」が飲みたくてマキネッタを使う場合も、粉はマシン用とは分けて考えるのが安全です。
原因:エスプレッソマシンと同じ感覚で極細挽きを入れ、タンピングまでしてしまうケースです。ビアレッティのモカエキスプレス取扱説明書では、極細挽きは使わないこと、粉をろうと型フィルターに押さえつけないことが明記され、安全バルブが漏れるときの確認項目にも「モカ用に挽いたコーヒーか」「押さえつけていないか」が挙がっています。
対策:モカ用に挽いた粉を使い、押さえつけずに入れて、縁に粉を残さないようにします。説明書では、熱源と圧力を使う器具なので、記載どおりに使わないとやけどなどの原因になると注意されています。
マキネッタは「押さえない」「縁に粉を残さない」
マキネッタでの粉の扱いは、エスプレッソマシンとはほぼ逆と考えると覚えやすいです。モカエキスプレスの取扱説明書の手順では、ろうと形フィルターにモカ用に挽いたコーヒーを入れる際、押さえつけず、本体の縁にコーヒー粉が残らないように注意するよう書かれています。
押さえつけない理由は、マキネッタがマシンのように粉を押し固めて抽出する前提の器具ではないからです。説明書の「よくある質問」では、安全バルブが漏れるときの確認項目に、ろうと型フィルターにコーヒーを押さえつけていないかが挙がっています。
縁の粉も大事なポイントです。説明書の「コーヒーメーカーから水が漏れる」の項目では、ボイラーの縁にコーヒー粉の残留物を残したままにしていないかを確認するよう書かれています。粉が挟まると、ねじ込んだ部分のすき間から水が漏れやすくなるわけです。
手順の前後も説明書どおりに。ボイラーに安全バルブの下まで冷水を入れ、ガス台なら弱火で炎が本体の端からはみ出さないようにし、電気コンロやガラスセラミック調理器では最大火力を使わない、とされています。抽出後はカップに注ぐ前にかき混ぜるよう案内されています。
| 項目 | エスプレッソマシン | 直火式マキネッタ(モカエキスプレス) |
|---|---|---|
| 粉の挽き方 | 極細挽き(説明書によっては細挽きも可) | モカ用に挽いた粉。極細挽きは使わない |
| 押し固め | タンパーで押す(タンピング) | 押さえつけない |
| 圧力のかけ方 | 協会の定義で約9気圧 | 直火で温めた蒸気の圧力 |
| 縁の粉 | 払い落とす(湯もれ防止) | 残さない(水漏れ防止) |
| クレマ | 表面を覆う細かい泡ができる | マシンのようなきめ細かな泡は作れない(UCCの解説) |
出典:全日本コーヒー協会、デロンギEC680取扱説明書、ビアレッティ モカエキスプレス取扱説明書、UCC上島珈琲「直火式エスプレッソとは」
「エスプレッソ用」の粉を買ってしまったときの考え方
マキネッタしか持っていないのに、極細挽きの「エスプレッソ用」の粉を買ってしまった――という場面もあると思います。この場合、マキネッタに入れて使うのは説明書の範囲外なので避け、ほかの淹れ方に回すのが安全です。
全日本コーヒー協会の焙煎・配合・粉砕のページでは、極細挽きに向く器具として、エスプレッソマシンのほかにイブリック(ターキッシュコーヒー用)が挙がっています。ただ、家でイブリックを持っている人は多くないでしょう。
ペーパードリップに使う手もありますが、協会の区分では、ペーパードリップに合うのは中細挽きです。極細挽きを使うと湯が落ちにくくなり、基本原則のページにある「抽出時間が長いと苦味が強くえぐみが出る」側に寄りやすくなります。使うなら、量を減らす・湯を注ぎすぎないなど、抽出時間を延ばしすぎない工夫が必要です。
次に買うときは、袋の「挽き方」表示を見て、自分の器具に合う粉を選ぶ。豆で買って器具ごとに挽き分けられるミルがあれば、こうしたミスマッチ自体が起きにくくなります。
エスプレッソの粉の選び方と保存:豆で買う?粉で買う?
挽いた粉は表面積が大きく、劣化が早い
エスプレッソ用の極細挽きは、挽き方の中でもいちばん粒が小さい=表面積が大きい粉です。全日本コーヒー協会の焙煎・配合・粉砕のページは、「豆は粉状になると表面積が増えるため、湿気を吸いやすく酸化が進んで劣化します。」と説明し、淹れる直前に必要な分量だけを挽くことを勧めています。
開封後の目安としては、UCC上島珈琲のお客様FAQが、賞味期限の日付に関わらず、コーヒー粉に挽かれた商品は「7~10日程度」、コーヒー豆商品は「1ヶ月程度」を目安としています。粉と豆で目安に大きな差があるのは、表面積の違いがそのまま劣化の速さに出るからです。
エスプレッソでは、この劣化が味だけでなく抽出にも表れます。前のセクションで見たように、デロンギEC680の説明書は「粉が古い」を、抽出が速すぎる症状と遅すぎる症状の両方の原因に挙げていました。
粉で買うなら、使い切れる小さめの量を選び、開封後は早めに使う。袋の表示例にある「開封後は密封保存し、できるだけ早めにお召し上がりください。」(全日本コーヒー協会・情報ラベルの見方)のとおり、口をしっかり閉じて直射日光・高温多湿を避けるのが基本です。

袋を開けたコーヒー粉が、気づけば棚の奥で何週間も眠っていた。最初の一杯はふわっと香ったのに、最近はお湯を注いでも香りが立たない。そんな経験はありませんか。粉の香…
あなたはどっち?使っている器具別の粉の選び方
エスプレッソの粉を豆で買うか、粉で買うかは、手元の器具で決めるのがいちばん合理的です。器具ごとに整理すると、次のようになります。
グラインダーなしのエスプレッソマシンを使う人は、袋の「挽き方:極細挽き」と表示された粉を選ぶのが手軽です。デロンギEC680の説明書が勧めるように、エスプレッソ用として売られているものや、やや深煎り(ハイロースト〜フルシティロースト)の粉が選択肢になります。劣化が早いぶん、少量ずつ買うのが向いています。
全自動マシン(グラインダー内蔵)を使う人は、基本は豆で買います。マグニフィカSの説明書では、粉からの抽出は1杯のみで濃さも変えられないとされ、フレーバーコーヒーを使う場合はあらかじめ挽いたもの(粉)を使うよう案内されています。また、過度に油分の多い豆はグラインダーに引き込まれにくくなることがあるとも書かれています。
直火式マキネッタを使う人は、モカ用に挽いた粉を選び、極細挽きのエスプレッソマシン用は避けます。エスプレッソもドリップも淹れる人は、豆で買って器具ごとに挽き分けるのが、ミスマッチを防ぐいちばんの近道です。
水と下準備も「粉の力」を引き出す条件
粉の選び方と同じくらい、水とカップの下準備も粉の性能を左右します。デロンギEC680の取扱説明書では、水は水道水や軟水(硬度:90mg/L以下)のミネラルウォーターを使うよう案内し、硬水を使うとカルキ分が詰まりやすくなると注意しています。全日本コーヒー協会の基本原則のページでも、浄水器を通した軟水が勧められています。
カップとフィルターの湯煎も見落とせません。EC680の説明書では、白っぽいクレマですぐに消える原因の一つとして「カップとフィルターを湯煎していない」が挙がり、抽出前に湯煎するよう書かれています。粉の条件を整えても、冷えたフィルターやカップで温度が下がると、抽出が十分に進みにくくなるわけです。
カップ選びについては、同じ説明書で、厚みがあり底がすぼまった形のものが冷めにくく、エスプレッソ用は60mL前後のカップを用意するよう案内されています。
やりがちなのは、粉の挽き目や量ばかりを調整して、水やカップの温めを後回しにしてしまうこと。粉の調整に入る前に、「軟水を使う・カップとフィルターを温める」の2つを先にそろえておくと、粉の違いがはっきり見えるようになります。
まとめ
エスプレッソの粉は、細かさ・量・押し方の3つで湯の通りやすさが決まり、その結果が抽出時間と味に表れます。次に淹れるときは、説明書どおりの量の極細挽きを均等にならして押し、ストップウォッチで抽出時間を計るところから始めてみてください。速すぎるか遅すぎるかがわかれば、粉のどこを動かせばいいかが見えてきます。
※マシンの仕様や販売状況は変わることがあります。最新情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

コメント