コーヒー豆の売り場やカフェのメニューで「カスカラ」という名前を見かけて、これは豆なのか、お茶なのか、と迷ったことはありませんか。カスカラは、コーヒーの果実(コーヒーチェリー)から豆を取り出したあとに残る、乾燥した果皮や果肉の部分です。欧州食品安全機関(EFSA)の意見書では、外果皮・果肉・ミューシレージ・パーチメント・銀皮の一部をまとめたものとして説明されています。
見た目は乾いた木の実の殻のようで、コーヒー豆のように挽いて抽出するのではなく、お湯に浸して成分を引き出す「浸出」で飲み物にするのが基本とされています。そして見落とされやすいのが、カスカラにもカフェインが含まれるという点です。EUでは、浸出液のカフェイン量に応じた表示ルールまで定められています。
この記事では、カスカラが果実のどこから来るのか、精製方法とのつながり、欧州で食品として認められた経緯、カフェイン量の正しい読み方、家で淹れるときの分量の考え方までを、公的機関の資料をもとに理屈から整理していきます。
・カスカラがコーヒーの果実のどの部分で、どんな層を含むのか
・ナチュラル(非水洗式)などの精製方法とカスカラの関係
・EUやスイスで食品として認められた経緯と、安全性評価の中身
・カフェイン量の数字の読み方と、家で淹れるときの分量の上限の目安
カスカラとは?コーヒーの実の「豆じゃないほう」を飲む

正体は乾燥させたコーヒーチェリーの殻
結論から言うと、カスカラはコーヒーの果実を乾燥させ、中の種子(いわゆるコーヒー豆)を取り出したあとに残る外側の部分です。EFSAの意見書は、評価対象の食品について「アラビカ種(Coffea arabica L.)の果実の乾燥した殻(husk)」と説明しています(EFSA意見書)。
ここで意外に思われるのが、私たちが普段「コーヒー豆」と呼んでいるものが、実は果実の種だという点です。コーヒーノキには赤や黄色に熟す実がなり、その中心にある種を焙煎したものがコーヒー豆になります。つまり、コーヒーの一杯は果実の「種」だけを使っていて、それを包んでいた皮や果肉は、豆を取り出す工程で外されてきました。カスカラは、この外された側を乾燥させ、飲み物の原料として扱うものです。
やりがちな誤解は、「カスカラ=コーヒー豆の一種」と思い込んでしまうことです。豆とは果実の中の位置も役割も違うので、焙煎して挽く、という豆の扱い方がそのまま当てはまるわけではありません。EFSAの意見書でも、カスカラそのものを食べるのではなく、水に浸して作った飲み物として消費者に届けられる、と書かれています(EFSA意見書)。
見分けるコツは、パッケージの原材料欄を見ることです。「コーヒー豆」ではなく、果皮・果肉・コーヒーチェリーの殻などと書かれていれば、それは豆ではなくカスカラの系統だと判断できます。
中身は5つの部分。外果皮から銀皮の一部まで
カスカラは「皮」とひとことで呼ばれがちですが、実際には複数の層を含んでいます。EFSAの意見書によると、評価対象の食品は、外果皮(exocarp)、果肉(mesocarp)、ミューシレージ(ペクチン質の粘液)、パーチメント(内果皮)、そして銀皮(シルバースキン)の一部で構成されています(EFSA意見書)。
なぜこれだけの層が一緒になるのかは、作り方を考えると理解しやすくなります。果実を丸ごと乾燥させてから機械で殻を外すと、種のすぐ外側にあるパーチメントや銀皮の一部まで、外側の層がまとめて剥がれます。層ごとに丁寧に分けるのではなく、「種以外の外側」がひとまとまりになったものがカスカラ、とイメージするとよいでしょう。
具体的に、果実を外から順に見ていくと、いちばん外の薄い皮(外果皮)、その内側の果肉、種を包むぬるっとした粘液質(ミューシレージ)、種を守る硬めの殻(パーチメント)、さらに種に張りつく薄い膜(銀皮)という並びになります。焙煎のときに出る薄皮を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、カスカラに含まれるのはそのうちの「一部」とされている点に注意が必要です。
注意点として、この5つの部分の説明はEFSAが評価した申請品についてのものです。製品によって外し方や含まれる部分が異なる可能性もあるため、構成を知りたいときは商品の原材料表示や説明を確かめてください。
呼び名が多いのは「何を指すか」が一つではないから
カスカラには別名がいくつもあります。EFSAの意見書では、「cascara」のほか、「コーヒーチェリーの乾燥した殻」「コーヒー果実の乾燥した殻」「乾燥コーヒーパルプ」「husk cascara」「乾燥コーヒー果実パルプ」などが一般的な呼び名として挙げられています(EFSA意見書)。
呼び名が多い理由は、どの層に注目するかで言い方が変わるからです。「殻(husk)」と言えば乾燥させた外側全体、「パルプ(pulp)」と言えば果肉に注目した呼び方になります。同じものを指していても、地域や業界によって使う言葉が違うため、英語の資料を読むときには表記ゆれに戸惑いやすいのです。
やりがちな失敗は、海外の資料や商品説明を検索するときに「cascara」だけで調べて、「coffee cherry pulp」や「coffee husk」と書かれた情報を見落とすことです。欧州の規則の題名では「dried cherry pulp(乾燥チェリーパルプ)」という言葉が使われているので、規制の情報を探す場合はこちらの表記でも調べると漏れが減ります。
コツは、日本語の商品名がカタカナの「カスカラ」でも、原材料欄の言葉や英語表記を合わせて確認することです。呼び名に惑わされず、「コーヒーの果実の、種以外の乾燥した部分」かどうかを軸に判断しましょう。
カスカラ(cascara)=コーヒーの果実を乾燥させ、種子(コーヒー豆)を取り出したあとの乾燥した殻。EFSAの意見書では、外果皮・果肉・ミューシレージ・パーチメント・銀皮の一部で構成されると説明されています。別名に「乾燥コーヒーパルプ」「コーヒーチェリーの乾燥した殻」などがあります。
見た目は不定形の小片。色に幅があるのはなぜ?
カスカラの見た目は、形がそろった粒ではなく、ばらばらの小片です。EFSAの意見書では、形は不定形で、色は「蜂蜜色から明るい茶色、赤みを帯びた暗い茶色まで」と幅をもって記されています(EFSA意見書)。
形がそろわないのは、果実の殻を機械で外したものだからです。豆のように一粒ずつ形が決まっているわけではなく、剥がれ方によって大きさも形も変わります。色に幅があるのは、果皮・果肉・パーチメントなど色の違う層が混ざっていることに加え、乾燥の具合によっても見え方が変わるためと考えられます。
家でパッケージを開けたときに、「茶色い小片と、少し明るい色のかけらが混ざっている」と感じても、それ自体はカスカラの性質として説明できる範囲です。逆に、見た目だけで品質の良し悪しを決めつけるのはおすすめしません。色の幅は規格の説明にも書かれている性質だからです。
注意したいのは湿気です。乾燥した殻は、湿気を吸うと見た目や状態が変わりやすくなります。保存方法や期限は商品ごとに表示されているので、開封後はパッケージの表示に従い、袋の口をしっかり閉じて保管してください。
| 原料 | コーヒーノキの果実(EFSAの評価対象はアラビカ種。EU規則の題名はアラビカ種・カネフォラ種を対象) |
| 含まれる部分 | 外果皮・果肉・ミューシレージ・パーチメント・銀皮の一部 |
| 見た目 | 不定形の小片。蜂蜜色〜明るい茶色〜赤みを帯びた暗い茶色 |
| 飲み方 | 湯に浸して成分を出す浸出飲料。カスカラそのものは食べない |
豆はどこで取り出され、皮はどこに残るのか
コーヒーの果実は「種を何重にも包んだ構造」
カスカラを理解する近道は、コーヒーの果実の構造を知ることです。果実は、種(豆)を中心に、外果皮・果肉・粘液質・パーチメント・銀皮が何重にも包んだ構造になっています。前の章で見たカスカラの5つの部分は、この「包んでいる側」にあたります。
なぜこれが大事かというと、コーヒー豆を作るためには、この何重もの包みを必ず外さなければならないからです。豆を取り出す作業は産地で行われ、その方法は「精製」と呼ばれます。精製の方法によって、皮や果肉をいつ・どの状態で外すかが変わり、その結果としてカスカラのような乾燥した殻が得られるかどうかも変わってきます。
具体的に思い浮かべてみると、さくらんぼの実を丸ごと干してから種を取り出す場合と、生の実から果肉をこそげ落として種を洗ってから乾かす場合とでは、残る「外側」の状態がまったく違いますよね。前者なら乾いた殻がまとまって残り、後者なら果肉は生のうちに取り除かれます。コーヒーでも同じことが起きています。
覚えておきたいのは、カスカラは「コーヒーとは別の植物」ではなく、毎日飲んでいるコーヒー豆と同じ果実から生まれるという点です。豆と殻は同じ実の内側と外側、という関係で捉えると、この先の精製の話がすっと入ってきます。
非水洗式(ナチュラル)は「干してから外す」
カスカラにいちばん近い工程が、非水洗式(ナチュラル)です。全日本コーヒー協会は、非水洗式を「果肉がついたままのコーヒーチェリーを天日干しで乾燥させて、その後、脱穀してコーヒー豆を取り出す」方法と説明しています(全日本コーヒー協会)。
この方法では、果実を丸ごと乾かしてから殻を外すので、豆を取り出したあとに乾燥した外側がまとまって残ります。EFSAの意見書でも、評価対象のカスカラは「乾燥したコーヒーの果実を機械的に脱穀して」作られると書かれています(EFSA意見書)。つまり、乾燥した果実から豆を外す、という点でナチュラルと同じ流れの中に位置づけられます。
よくある混同は、「ナチュラル精製の豆を買えば、カスカラも一緒についてくる」と考えてしまうことです。実際には、脱穀の段階で豆と殻は分けられ、豆だけが焙煎用として流通します。カスカラとして飲むには、殻の側を食品として扱える状態で集め、加工したものが必要です。
ポイントは、ナチュラルという精製方法の名前と、カスカラという製品の名前を分けて理解することです。精製方法は「豆の取り出し方」、カスカラは「取り出したあとの殻を飲み物の原料にしたもの」です。

水洗式・スマトラ式では果肉を先に外す
一方、水洗式(ウォッシュド)では順番が逆になります。全日本コーヒー協会は水洗式を「コーヒーチェリーから果肉を除去し、豆についた粘液質(ミューシレージ)を発酵させてから、きれいな水で洗い、乾燥させる」方法と説明しています(全日本コーヒー協会)。スマトラ式(セミウォッシュド)についても、同じページで「コーヒーチェリーを水洗いしてから、外皮と果肉を除去し」と書かれています。
なぜこの違いが大事かというと、果肉を外すタイミングが「乾燥の前」か「乾燥の後」かで、外側の部分がどんな状態で残るかが変わるからです。水洗式やスマトラ式では、果肉は乾かす前に取り除かれます。果実を丸ごと乾かして殻をまとめて外すナチュラルとは、外側の部分の扱い方が出発点から違うのです。
精製方法を調べていて、「ウォッシュドの豆の産地なのに、カスカラが売られている」という情報に出会うと混乱するかもしれません。産地や生産者によっては複数の精製方法を使い分けていることもあり、カスカラがどの工程から得られたかは製品ごとに違う可能性があります。精製方法の名前だけで、カスカラの有無や中身を決めつけないことが大切です。
確かめ方としては、商品説明に精製方法や原料の部位が書かれているかを見ることです。書かれていなければ、販売元の説明を確認するのが確実です。
| 項目 | 水洗式(ウォッシュド) | 非水洗式(ナチュラル) | スマトラ式(セミウォッシュド) |
|---|---|---|---|
| 最初の工程 | 果肉を除去する | 果肉がついたまま天日干しで乾燥 | 外皮と果肉を除去する |
| 果肉を外すタイミング | 乾燥の前 | 乾燥の後(脱穀で外す) | 乾燥の前 |
| EFSA評価品との関係 | 流れが異なる | 乾燥果実を機械的に脱穀する点が共通 | 流れが異なる |
EFSAが評価した製品の作り方は「一つの例」
EFSAの意見書には、評価対象となったカスカラの製造工程が書かれていますが、これはあくまで申請された特定の製品の工程です。意見書が示しているのは、乾燥した果実を機械で脱穀し、種と殻を分けて殻のほうを製品にする、という流れです(EFSA意見書)。
なぜ「一つの例」と強調するのかというと、安全性評価は申請者が出した製品と製造条件に対して行われるものだからです。世界中のすべてのカスカラが同じ方法で作られているという意味ではありません。産地の気候や設備、生産者の判断によって、乾燥のさせ方や殻の外し方は変わりえます。
ありがちな失敗は、ある資料に書かれた乾燥日数や水分値などを「カスカラの作り方の標準」として覚えてしまうことです。数字が具体的なほど一般論のように見えますが、出どころが特定の申請品であれば、条件もその製品に限ったものです。家で読む情報としては「乾燥した果実を脱穀して殻を得る」という骨格だけを押さえておけば十分です。
コツは、資料を読むときに「この数字は誰の、どの製品についての値か」を一度確かめることです。それだけで、別の製品の条件を混ぜてしまう読み違いをかなり防げます。
コーヒーの「皮」はいつから飲まれてきた?

イエメン・エチオピア・ウガンダでの長い利用
カスカラは新しく開発された飲み物のように紹介されることがありますが、果実を食べたり飲んだりする習慣自体には長い歴史があります。EFSAの意見書は、コーヒーの果実丸ごと、あるいはその一部が、イエメン、エチオピア、ウガンダで長く消費されてきたこと、さらに近年はボリビアやブラジルでも消費されていることを記しています(EFSA意見書)。
この歴史がなぜ大事かというと、食品の安全性を考えるうえで「どのくらいの期間、どの地域で食べられてきたか」が判断材料の一つになるからです。EFSAの意見書でも、こうした利用の歴史が評価の背景として取り上げられています。アラビカ種の原産地がエチオピアであることも、同じ意見書で触れられています。
具体的に、イエメンやエチオピアはコーヒーの歴史そのものと深く結びついた地域です。コーヒー豆の名前として知られる「モカ」も、イエメンの港町に由来する呼び名です。豆だけでなく、果実の外側まで利用する文化が同じ地域で育まれてきたと考えると、カスカラの位置づけが見えてきます。

注意点として、地域ごとの呼び名や具体的な飲み方の伝承については、さまざまな説明が出回っています。この記事では公的な評価書で確認できた範囲、つまり「どの地域で消費されてきたか」に絞って紹介しています。
浸出液だけでなく料理の材料としても使われてきた
カスカラは飲み物の原料として知られていますが、伝統的な使い方はそれだけではありません。EFSAの意見書は、コーヒーの殻が中東、アフリカ、南米で、浸出液として、あるいはさまざまな料理の材料として伝統的に消費されてきたと書いています(EFSA意見書)。
この点から分かるのは、カスカラが「お茶のように煮出す」用途に限られていなかったということです。地域によっては料理の素材として扱われてきた歴史があり、食材としての顔も持っています。意見書は例として、エチオピアのオロモの人々が軽く炒ってバターで溶かした料理「bunaqalaa」や、殻を牛乳と混ぜた「hoja」、イエメンで16世紀から飲まれてきた香辛料入りの殻の浸出液「qishr」を挙げています。ただし作り方の分量までは書かれていません。
やりがちな誤解は、「伝統的に料理に使われてきたのだから、家でもそのまま食べてよい」と考えてしまうことです。EFSAが評価した申請品については、カスカラそのものを食べるのではなく、水に浸した飲み物として消費されることが前提とされています。伝統的な利用の歴史と、現在の製品の想定された使い方は分けて考える必要があります。
家で扱うときは、パッケージに書かれた使い方を基準にするのが確実です。浸出用として売られているものは、浸出液を飲むための製品だと理解しておきましょう。
近年はボリビアやブラジルにも広がった
EFSAの意見書は、伝統的な産地に加えて、近年はボリビアやブラジルでもコーヒーの果実が消費されていると記しています(EFSA意見書)。古くからの地域だけでなく、南米の産地にも利用が広がっているということです。
なぜ広がったのかについて、意見書は理由を詳しく述べていません。ここで推測を重ねて理由を作るのは避けますが、事実として言えるのは、コーヒーの生産地であれば果実の外側が毎年必ず生まれる、という構造です。豆を取り出す以上、殻や果肉は必ず残ります。その部分を飲み物として扱う動きが、複数の産地で見られるようになったと整理できます。
具体的な場面として、カスカラの商品説明に南米の国名が書かれているのを見ることがあるかもしれません。それは珍しいことではなく、公的な評価書でも消費の広がりが確認されている地域です。逆に、産地名が書かれていない商品は、どこで作られたものかを販売元に確かめると安心です。
コツとしては、産地名を「味の良し悪し」の指標にしないことです。産地ごとの優劣を示す公的な資料はありません。産地名は、どこで生まれた果実かを知る手がかりとして読むのがちょうどよい距離感です。
EFSAの意見書によると、コーヒーの果実やその一部はイエメン・エチオピア・ウガンダで長く消費され、近年はボリビアやブラジルにも広がっています。浸出液としてだけでなく、料理の材料としても伝統的に使われてきました。「新しい飲み物」に見えて、実は古くからの利用の延長線上にあるのがカスカラです。
「新しい食品」として扱われるのはなぜ?
長い利用の歴史があるのに、欧州ではカスカラが新しい食品(ノベルフード)の枠組みで評価されました。これは一見矛盾しているようですが、「どこで食べられてきたか」がポイントです。EFSAの意見書は、ノベルフードとしての評価の中でカスカラの安全性を検討しています(EFSA意見書)。
理屈としては、ある地域で長く食べられてきたとしても、別の地域、たとえば欧州の市場で同じように食べられてきたとは限りません。そのため、新しい地域で販売するときには、その地域のルールに沿った評価や認可が必要になります。歴史があることと、特定の市場で販売が認められていることは、別の話なのです。
ありがちな誤解は、「欧州で評価を受けた=世界中どこでも同じ扱い」と考えることです。食品の扱いは国や地域ごとのルールで決まります。欧州での評価は欧州のルールに基づくものであり、他の国の扱いをそのまま示すものではありません。
注意点として、次の章で欧州の動きを詳しく紹介しますが、日本での食品としての扱いについては、この記事では断定しません。国内で購入する場合は、販売されている商品の表示を確認してください。
欧州ではどう認められた?スイスとEUの判断の流れ
2020年、スイスが乾燥果皮・果肉の販売を認可
欧州でカスカラに関する判断が表に出てきた例として、スイスの動きがあります。EFSAの意見書によると、2020年6月5日、スイス連邦食品安全・獣医局が、イエメン・エチオピア・ブラジル産のコーヒーチェリー(アラビカ種)の乾燥した果皮と果肉を、浸出用に限ってスイス市場で販売することを認可すると決定しました(EFSA意見書)。
スイスの判断がEFSAの意見書に書かれているのは、他の地域での評価や販売の実績も、安全性を検討するときの参考情報になるからです。ある国がすでに販売を認めているという事実は、その食品がどのように扱われてきたかを示す材料の一つになります。
具体的に、これは「スイスでの販売が認められた」という事実であり、EU全体での判断とは別のものです。スイスはEUの加盟国ではないため、スイスの認可がそのままEU全体に当てはまるわけではありません。ニュースや商品説明で「欧州で認可」と一括りにされていると、どの国・どの枠組みの話なのかが見えにくくなります。
読み方のコツは、「どの機関が・いつ・何を認めたのか」を分けて確認することです。スイスは2020年、EUは次に紹介する2022年の規則、という時系列で整理すると、情報の混線を防げます。
EFSAの結論は「提案された条件のもとで安全」
EFSA(欧州食品安全機関)は、アラビカ種の乾燥した殻をノベルフードとして評価した意見書(2021年12月16日採択)を出しています。EFSAのパネルは意見書の結論で、「The Panel concludes that the NF, dried husk of the fruit of Coffea arabica L., is safe under the proposed conditions of use.」と述べています(EFSA意見書)。日本語にすると「アラビカ種の果実の乾燥した殻は、提案された使用条件のもとで安全である」という意味です。
ここで大事なのは、「提案された使用条件のもとで」という限定がついている点です。どんな量でも、どんな使い方でも安全だと言っているわけではありません。申請で示された使用量や用途の範囲を前提にした結論です。安全性評価の結論は、必ず条件とセットで読む必要があります。
やりがちな読み違いは、結論の「安全」という言葉だけを切り取って、量の目安を気にせずに使ってしまうことです。後の章で紹介するように、評価の前提には用途ごとの使用量の上限があります。その範囲を超えた使い方まで評価が保証しているわけではありません。
また、この評価の対象はアラビカ種の乾燥した殻です。意見書を読むときは、評価対象の範囲を確認したうえで結論を理解するようにしましょう。
EU規則2022/47で販売が認可された
EUとしての判断は、規則の形で示されました。2022年1月13日付の「Commission Implementing Regulation (EU) 2022/47」は、アラビカ種およびカネフォラ種の乾燥チェリーパルプとその浸出液を、第三国の伝統的食品としてEUの認可食品リストに加える規則です(EU規則2022/47)。根拠になったのは、ネスレ(2020年5月6日)とラバッツァ(2020年11月13日)が出した第三国の伝統的食品(traditional food from a third country)としての届出と、それに対するEFSAの技術報告(2021年5月27日・9月2日公表)です。前の見出しで紹介したEFSAの意見書(別の会社がアラビカ種の乾燥した殻をノベルフードとして申請したもの)とは、別の手続きです。
規則の題名に注目すると、EFSAの意見書がアラビカ種を対象にしていたのに対し、この規則ではアラビカ種とカネフォラ種の両方が名前に挙がっています。これは申請者も手続きも別だからです。同じカスカラの話でも、資料によって対象の種や制度が違うことがあるので、どの資料が何を対象にしているかを確認することが大切です。
この規則には、カフェインに関する表示のルールも含まれています。浸出液のカフェインが一定量を超える場合には、「High caffeine content. Not recommended for children or pregnant or breast-feeding women」という表示が求められます(EU規則2022/47)。日本語にすると「カフェイン含有量が高い。子ども、妊娠中・授乳中の女性にはおすすめしない」という内容です。EFSAの意見書でも、カフェインが150mg/Lを超える飲料は、子どもや妊娠中・授乳中の女性にはすすめられないと記されています。
注意点として、これはEU域内での表示ルールです。体調や妊娠中のカフェインについては医師に相談してください。
日本での扱いはどう考える?
欧州の流れを知ると、日本ではどうなっているのかが気になるところです。この記事では、日本の公的機関がカスカラについて示した見解を一次資料で確認できていないため、国内での扱いを断定しません。
なぜ断定を避けるのかというと、食品の扱いは国ごとのルールで決まり、欧州の規則や評価を日本にそのまま当てはめることはできないからです。前の章で見たように、歴史がある食品でも、市場が変われば改めて扱いが検討されます。欧州で認可されたことは、欧州での事実として受け止めるのが正確です。
具体的に家で役立つのは、国内で売られている商品の表示を読むことです。名称や原材料、原産国、保存方法、使い方などが書かれているかを確認し、不明な点があれば販売元に問い合わせるのが確実です。
カスカラのカフェイン量はコーヒーと比べてどのくらい?
乾燥カスカラの規格は100gあたり100〜1,000mg
まず乾燥した状態のカスカラについて見ていきます。EFSAが評価した申請品の規格では、カフェインは乾燥カスカラ100gあたり100〜1,000mgとされています(EFSA意見書)。
実は、ここに多くの人が抱きがちな思い込みを覆すポイントがあります。「豆じゃなくて皮だから、カフェインはほとんど入っていないはず」と考える人は少なくありませんが、規格の数字を見るとカフェインははっきり含まれています。EUがわざわざカフェイン表示のルールを規則に盛り込んでいるのも、カスカラの浸出液にカフェインが含まれることを前提にしているからです。
もう一つ注目したいのは、幅の広さです。下限と上限で10倍の差があります。これは規格として許容される範囲を示したもので、製品ごとにカフェイン量が違いうることを意味します。「カスカラのカフェインは○mg」と一つの数字で語れない理由がここにあります。
注意点として、この数字は乾燥した原料そのものの値です。私たちが飲むのは浸出液なので、乾燥物の値をそのまま一杯の飲み物のカフェイン量として読んではいけません。次の見出しで、浸出液の数字を見ていきます。
浸出液は試算で最大600mg/L、コーヒー飲料と同程度
飲み物になったときのカフェイン量について、EFSAの意見書は試算を示しています。カスカラで作った浸出液のカフェイン濃度は、最大で飲料1Lあたり600mgになりうるとされ、これはコーヒー飲料と同程度の濃度だと説明されています(EFSA意見書)。600mg/Lを100mlあたりに直すと60mgです。
ここでの「最大」という言葉が大切です。これは、規格の上限(乾燥物100gあたり1,000mg)のカフェインが100%浸出液に移ると仮定し、申請された用途ごとの最大使用量を当てはめた見積もりです。用途別に見ると、ソフトドリンクで200mg/L、ハーブなどの浸出飲料で400mg/L、エナジードリンクで600mg/Lで、600mg/Lはエナジードリンク区分の値です。つまり最大値であり、毎回この濃度になるという意味ではありません。実際にどれだけカフェインが出るかは、使う量や湯の温度、浸す時間、製品のカフェイン量によって変わります。試算は「多く見積もるとこのくらいになりうる」という安全側の目安として読むのが適切です。
比較のために、同じ意見書ではコーヒーのカフェインが270〜1,340mg/L、紅茶が150〜220mg/L、エナジードリンクがおよそ320mg/Lと紹介されています。国内の資料では、食品安全委員会のファクトシートが、コーヒー浸出液のカフェインを100mlあたり60mg(浸出方法:コーヒー粉10gを熱湯150mlで)、紅茶を100mlあたり30mgとしています(食品安全委員会「食品中のカフェイン」)。
コツは、カスカラを「カフェインの少ない飲み物」として選ばないことです。最大値で見るとコーヒーと同程度になりうる、という前提で量を考えましょう。
コーヒーの教科書調べ:飲料別カフェイン量の比較表
ここまでの数字を、出典と単位をそろえて一覧にしました。単位が「100mlあたり」と「1Lあたり」で混在するため、表では単位の列を分けています。数字はすべて公的機関の資料に記載された値です。
| 飲料 | カフェイン量 | 単位・条件 | 出典 |
|---|---|---|---|
| カスカラ浸出液 | 最大600mg | 1Lあたり(試算の最大値。抽出率100%仮定・エナジードリンク区分。浸出飲料区分では400mg) | EFSA |
| 乾燥カスカラ(原料) | 100〜1,000mg | 乾燥物100gあたり(規格) | EFSA |
| コーヒー | 270〜1,340mg | 1Lあたり | EFSA |
| 紅茶 | 150〜220mg | 1Lあたり | EFSA |
| エナジードリンク | 約320mg | 1Lあたり | EFSA |
| コーヒー浸出液 | 60mg | 100mlあたり(粉10g/熱湯150ml) | 食品安全委員会 |
| 紅茶浸出液 | 30mg | 100mlあたり | 食品安全委員会 |
表から読み取れるのは、カスカラ浸出液の試算の最大値が、コーヒーの幅の中に収まる水準だということです。紅茶の値よりも上に位置する可能性があることも分かります。ただし、表の値は資料ごとに測り方や前提が違うため、細かい大小を比べるより「同じくらいの範囲に入りうる」と捉えるのが適切です。
表を使うコツは、自分が気にしているのが「原料の量」なのか「一杯の飲み物」なのかを先に決めてから該当する行を見ることです。目的に合わない行を比べると、判断を誤りやすくなります。
やりがちな失敗:単位を取り違えて10倍に読み違える
カフェインの数字で最も起こりやすい失敗が、単位の取り違えです。カスカラの資料には、乾燥物の「100gあたり」、飲料の「1Lあたり」、国内資料の「100mlあたり」という3種類の単位が登場します。これを混ぜて比べると、桁がずれた結論になってしまいます。
たとえば、乾燥カスカラの規格「100gあたり100〜1,000mg」を、飲み物100mlあたりの値だと勘違いすると、「カスカラは一杯で最大1,000mgのカフェイン」という誤った理解になります。逆に、浸出液の「600mg/L」を100mlあたりの値と取り違えると、10倍の量を想定してしまいます。600mg/Lは、100mlあたりに直すと60mgです。
原因は、「乾燥物100gあたり」「飲料1Lあたり」「飲料100mlあたり」の3種類の単位が資料に混在していることです。対策は、数字を見たら必ず単位と対象(原料か飲み物か)を確認し、比べるときは同じ単位に直すこと。600mg/Lは100mlあたり60mg、と換算してから比べれば読み違いを防げます。
こうした取り違えが起きる理由は、どの数字も「mg」で書かれているため、一見同じものを比べているように見えるからです。数字そのものよりも、その後ろについている「何あたりか」の部分が重要です。
対策としては、数字をメモするときに単位まで必ず書き写すことです。パッケージにカフェイン量が書かれている場合も、100mlあたりなのか、一杯分なのかを確かめてから読みましょう。
成分の規格から読み取れること
中心は炭水化物と食物繊維、そして水分
カスカラの成分について、EFSAの意見書は、評価対象の食品が主に消化性炭水化物、食物繊維、水分で構成されていると説明しています(EFSA意見書)。規格表に示された値は、100gあたり、水分17g未満、たんぱく質6〜8g、脂質1%未満、灰分4〜7g、消化性炭水化物35〜41g、糖類24〜40g、食物繊維32〜38gです。
この構成から分かるのは、カスカラが果実の外側、つまり果皮や果肉を乾かしたものだという性質です。果肉には糖分が含まれ、果皮や殻には繊維質が多い、という果実の構造が、そのまま成分の比率に表れていると考えられます。脂質が少ないのも、油分を多く含む種の部分を取り除いたあとの殻だから、と理解すると筋が通ります。
やりがちな失敗は、これらの数字を「一杯のカスカラティーに含まれる量」と受け取ってしまうことです。規格の値は乾燥原料100gあたりのもので、浸出液にどれだけ移るかは別の話です。食物繊維のように水に溶けにくい成分は、浸出液にはそのまま移らない可能性もあります。
注意点として、この記事では成分を健康効果と結びつけません。成分表はあくまで「何でできているか」を知るための資料として読むのが適切です。
| 水分 | 17g未満 |
| たんぱく質・脂質・灰分 | たんぱく質6〜8g/脂質1%未満/灰分4〜7g |
| 消化性炭水化物(うち糖類) | 35〜41g(糖類24〜40g) |
| 食物繊維・カフェイン | 食物繊維32〜38g/カフェイン100〜1,000mg |
出典:EFSA意見書(申請品の規格であり、市販品の実測値ではありません)
「規格」は市販品の実測値ではない
成分の数字を読むうえで押さえておきたいのが、EFSAの意見書に載っているのは、評価対象となった申請品の「規格(specification)」だという点です。市販されているカスカラ製品を一つずつ測った実測値ではありません。
規格とは、その製品が満たすべき範囲を定めたものです。だからこそ「〜g未満」「〜から〜g」といった幅のある書き方になっています。実際の製品は、この範囲のどこかに入るように作られる、というのが規格の考え方です。ある一つの製品の成分が、規格の上限なのか下限なのか中間なのかは、規格表からは分かりません。
具体例として、カフェインの規格が100〜1,000mgと幅広いことを思い出してください。同じ規格に収まっていても、製品によってカフェイン量が大きく違う可能性があります。成分も同様で、規格の値を「カスカラの成分はこれ」と一つに決めつけるのは避けたほうがよいでしょう。
コツは、手元の商品に栄養成分表示があれば、そちらを優先して見ることです。規格表は「カスカラがどんな性質の食品か」を知るための資料、商品の表示は「この製品に何が入っているか」を知るための資料、と使い分けると混乱しません。
糖類の幅が広い理由をどう読むか
規格の中でも、糖類は100gあたり24〜40gと幅が広い項目です。消化性炭水化物が35〜41gなので、炭水化物の多くを糖類が占めうることになります(EFSA意見書)。
糖類が含まれるのは、カスカラに果肉が含まれていることと整合します。果実の果肉には糖分があり、それが乾燥によって凝縮された状態になっていると考えられます。幅が広いことについて、意見書は理由を詳しく述べていませんが、果実の熟し具合や産地、乾燥の条件などによって糖類の量が変わりうることは、果実を原料とする食品の性質として理解できます。
ここで注意したいのは、「糖類が多いから甘い飲み物になる」と短絡的に結びつけないことです。乾燥原料に含まれる糖類のうち、どれだけが浸出液に溶け出すかは、淹れ方によって変わります。また、味の感じ方は糖類の量だけで決まるものではありません。公的機関の資料は成分や安全性を中心に記しており、味の表現は販売者の説明に委ねられているのが実情です。
家で淹れるときは、まず商品の説明に書かれた味の案内を参考にし、自分の好みに合うかを確かめていくのが現実的な進め方です。
水分17g未満という上限が教えてくれる保存の考え方
規格の中で、保存の考え方につながるのが水分の上限です。EFSAの評価品では、水分は100gあたり17g未満とされています(EFSA意見書)。
水分に上限が設けられているのは、カスカラが「乾燥した」状態で扱われる食品だからです。乾燥食品は水分が少ないことで状態が保たれます。言い換えると、保存中に湿気を吸って水分が増えれば、乾燥食品としての前提が崩れてしまいます。上限の数字は、乾いた状態を保つことの大切さを示していると読めます。
やりがちな失敗は、開封後の袋の口を開けたまま、湯気の上がるキッチンの近くに置いてしまうことです。コーヒー豆や粉の保存と同じように、湿気・高温・光を避ける意識が役立ちます。カスカラの保存期間の目安を示す公的な資料は見つからないため、期限は商品のパッケージ表示に従ってください。
コツとしては、開封したら袋の空気を抜いて口を閉じ、パッケージに記載された保存方法を守ることです。保存方法が書かれていない場合は、販売元に確認するのが確実です。
家で淹れるなら、分量と温度はどう考える?
EU規則の目安は「100mlに6gまで・75℃を超える湯」
家で淹れるときの分量の手がかりになるのが、EUの規則に書かれた浸出の条件です。規則では、カスカラを「up to 6 g of cascara pulp or husk in 100 ml of hot water (> 75 °C)」で浸出し、数分置いてから茶こしでこすのが典型的な淹れ方だと記されています(EU規則2022/47)。つまり、75℃を超える湯100mlに対して、カスカラは6gまで、という目安です。
この条件が示しているのは、カスカラはお湯に浸して成分を引き出す飲み物だ、ということです。コーヒー豆のように挽いてフィルターで湯を通すのではなく、紅茶やハーブティーに近い感覚で、湯の中に原料を浸す方法が想定されています。浸すタイプの抽出は、粉と湯が触れている時間で味が決まる、という点ではコーヒーの浸漬式と考え方が共通しています。

具体的に、200mlの湯で淹れる場合を考えると、規則の目安の上限は12gになります。ここで大事なのは、これが「上限」であって「この量で淹れなさい」という推奨ではない点です。次の見出しで、その違いを詳しく見ていきます。
なお、浸す時間について、EUの規則の説明は「数分(for a few minutes)」で、分単位の具体的な数字はありません。時間は商品のパッケージに書かれた案内を基準にしてください。
「上限」を「レシピ」と読み違えない
EUの規則に出てくる「6gまで」は典型的な淹れ方の説明、EFSAの意見書に出てくる数字は申請された使用量の上限です。家庭向けのおすすめレシピとして作られた数字ではありません。ここを読み違えると、量の考え方を誤ってしまいます。
なぜ上限が設けられているのかというと、安全性の評価が「この量までの使い方」を前提に行われているからです。前の章で見たように、EFSAの結論は「提案された使用条件のもとで安全」というものでした。上限の数字は、その「条件」を形にしたものです。そして、カスカラにはカフェインが含まれるので、量を増やせば浸出液のカフェインも増える方向に働きます。
ここで2つ目のやりがちな失敗を紹介します。カフェインを控えたい人が、「コーヒーの代わりにカスカラなら夜でも安心」と考えて、上限いっぱいの量で何杯も淹れてしまうケースです。原因は、「皮だからカフェインは少ない」という思い込みと、「上限=推奨量」という読み違いの組み合わせです。対策は、カスカラにもコーヒーと同程度になりうるカフェインがあると理解し、上限より少なめの量から試すことです。
器具メーカー公式の抽出ガイドで、カスカラの淹れ方を案内したものは今回確認できていません。そのため、分量の細かな最適値を示すことはできません。商品のパッケージの案内を第一の基準にし、EUの上限は「これを超えない」という外枠として使うのがおすすめの読み方です。
原因は「皮だからカフェインは少ないはず」という思い込みと、EUの上限(湯100mlに6gまで)を推奨量と読み違えることです。対策は、浸出液のカフェインが試算でコーヒー飲料と同程度になりうると知ったうえで、パッケージの案内を基準に、上限より少なめの量から始めること。夜に飲む場合は量と杯数を控えめにしましょう。
用途ごとに上限が違う。アレンジの考え方
カスカラはお湯で浸出するだけでなく、ほかの飲み物の原料としても使われることが想定されています。EFSAの意見書では、申請された用途ごとに使用量の上限が設けられており、たとえばコーヒー・茶・ハーブや果実の浸出飲料などの区分では、100mlあたり4gとされています(EFSA意見書)。ほかにも、フレーバー付きの飲料やエナジードリンク、ソフトドリンクなどの用途が申請に含まれていました。
用途ごとに上限が違うのは、飲み物の種類によって一度に飲む量や飲まれ方が違うからだと考えられます。上限は用途とセットで決められているので、ある用途の数字を別の用途にそのまま当てはめることはできません。EUの規則にある「100mlに6gまで」は典型的な淹れ方の説明、EFSAの申請区分の「4g」は浸出飲料の区分での上限、というように、数字の出どころを分けて読む必要があります。
家でのアレンジ、たとえば浸出液に牛乳を加える、炭酸で割る、甘みを足すといった使い方については、公的な資料に具体的な方法は書かれていません。アレンジを楽しむ場合も、ベースとなる浸出液の量の考え方は変わりません。割って薄めても、飲む量が増えればカフェインの総量も増える、という点は覚えておきましょう。
コツは、アレンジする前に「ベースの浸出液をどれだけ使うか」を決めておくことです。それが守れていれば、割り材を変えても量の管理がしやすくなります。
こんな人はこう試す:読者タイプ別の付き合い方
カスカラとの付き合い方は、何を求めて試すかによって変わります。ここでは、記事で確認した事実をもとに、読者タイプ別の考え方を整理します。
コーヒーの仕組みに興味がある人は、カスカラを「豆と同じ果実の外側」として、精製方法と合わせて知ると理解が深まります。ナチュラル精製の豆と並べて、果実の内側と外側がそれぞれどう使われているかを考えてみると、コーヒーの一杯がどこから来るのかがより立体的に見えてきます。
カフェインを控えたい人は、カスカラをカフェインの代替として選ばないほうが安全です。浸出液のカフェインは試算でコーヒー飲料と同程度になりうるため、コーヒーを減らす目的で置き換えると、思ったほどカフェインが減らない可能性があります。気になる場合は、量と飲む時間帯を控えめにしましょう。
紅茶やハーブティーをよく飲む人は、浸して淹れるという点で、いつもの感覚に近い方法で試せます。ただし、EFSAの資料では紅茶よりカフェインが多くなりうる数字も示されているので、紅茶と同じ量・杯数で考えないことがポイントです。どのタイプの人も、まずはパッケージの案内を基準に、少量から試すのがよいでしょう。
まとめ
カスカラは、毎日飲んでいるコーヒー豆と同じ果実の「外側」から生まれる飲み物です。まずは手元の商品の原材料欄とカフェインの表示を確かめ、パッケージの案内どおりの量で一杯淹れてみてください。数字は単位と対象をそろえて読み、上限は推奨量ではなく「超えない外枠」として使うと、カスカラと無理なく付き合えます。ナチュラル精製の豆と並べて飲めば、同じ果実の内側と外側を味わうという、コーヒーの新しい見方も見えてくるはずです。
※最新情報は公式サイトでご確認ください。

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