スーパーやコーヒー豆の売り場で、コロンビアという名前はブラジルと並んでよく目にします。ところが、ラベルにあるスプレモやエクセルソの意味、どんな土地で育った豆なのか、なぜブレンドにもよく使われるのかまで説明できる人は多くありません。名前は知っているのに選び方の軸がない。そこがコロンビアコーヒーのいちばんの悩みどころかもしれません。
先に結論をお伝えします。全日本コーヒー協会は、コロンビアの豆を華やかな香りと豊かなコクがありながらマイルドな味わいが特徴で、ブレンドにも適していると紹介しています。そしてスプレモは味のランクというより、ふるいの目で豆の大きさを分けた区分として、コロンビア・コーヒー生産者連合会(FNC)が定めているものです。
この記事では、全日本コーヒー協会・FNC・World Coffee Research・ユネスコ・世界知的所有権機関(WIPO)などの一次情報をもとに、味の特徴、等級の読み方、産地と世界遺産、品種の移り変わり、日本の輸入統計、焙煎度と淹れ方の考え方、産地の名前を守る仕組みまでを、理屈から順番にほどいていきます。
・全日本コーヒー協会が紹介するコロンビアの味の特徴と、ブレンドに向くとされる理由
・スプレモ/エクセルソの本当の意味(FNCのふるい区分)
・世界遺産になった生産地帯と、カトゥーラからカスティージョへの品種の移り変わり
・日本の生豆輸入量でコロンビアが第3位にいる統計と、焙煎度の選び方
コロンビアコーヒーの特徴は華やかな香りとマイルドな味わい

まずは協会の紹介文を一文ずつ読んでみる
コロンビアの味を語るときの基準にしたいのが、全日本コーヒー協会の紹介文です。協会のコラムでは「山岳地帯で地質・気候ともにコーヒーの栽培に適した地でとれる豆は高品質。華やかな香りと豊かなコクがありながらも、マイルドな味わいが特徴。他の豆との相性も良く、ブレンドにも適している。」と紹介されています(全日本コーヒー協会のコラム)。
この短い文には、産地の条件(山岳地帯・地質・気候)、香り(華やか)、味の厚み(豊かなコク)、全体の印象(マイルド)、使われ方(ブレンドとの相性)という5つの要素が詰まっています。産地全体の特徴として公的な団体が示しているのはこの範囲だ、と押さえておくと、売り場の説明を読み比べるときの物差しになります。
やりがちなのが、ある1袋に書かれた果実の名前や細かな風味の説明を、コロンビア産すべての特徴だと受け取ってしまうことです。袋の説明はその豆1つの説明で、産地の傾向とは別物です。コツは、産地全体の話は協会の紹介文、個別の豆の話は袋の説明、と分けて読むこと。そうすると、思っていた味と違ったときにも、産地のせいなのか、その豆の個性なのか、焙煎度の違いなのかを切り分けやすくなります。
マイルドなのにコクがある、は矛盾しない
マイルドとコクは反対の言葉に見えますが、指しているものが違うので両立します。一般的な言葉の使い方として、マイルドは角が立たない・尖りすぎない全体の印象を、コクは口に残る味の厚みを表します。つまり、刺激は穏やかでも味が薄いわけではない、というのが協会の紹介文の読み方です。
ここで効いてくるのが焙煎度です。全日本コーヒー協会は、一般的には浅く炒るほど酸味が強く、深く炒るほど苦味を感じると説明しています(全日本コーヒー協会「焙煎」のコラム)。同じコロンビアでも、浅煎りなら酸味が前に出て、深煎りなら苦味が前に出るので、マイルドという印象は焙煎度しだいで揺れます。
よくある失敗は、たまたま浅煎りのコロンビアを飲んで酸っぱいと感じ、コロンビア自体が合わないと決めつけてしまうことです。原因は産地ではなく焙煎度だった、ということは十分に考えられます。コツは、袋の焙煎度表示を必ず見ること。協会の区分で中間にあたる中煎りを基準に一度飲んでおくと、浅い側・深い側に振ったときの変化を比べやすくなります。
ブレンドに向くといわれるのは相性の良さから
協会の紹介文の最後にある、他の豆との相性も良くブレンドにも適しているという一文は、コロンビアを理解するうえで外せないポイントです。香りとコクがありながら全体はマイルド、という性格は、ほかの豆の個性を邪魔しにくい土台として使いやすい、と読み取れます。
全日本コーヒー協会の別のコラムでも、「また雑味がなくスッキリとした味が楽しめるのは、キリマンジャロやコロンビアも同様。」と書かれています(全日本コーヒー協会のコラム)。スッキリした味わいの例としてコロンビアが挙げられていることも、ブレンドの土台に使われる理由の説明と重なります。
家でやりがちなのは、ブレンドの袋を買って気に入ったのに、何が入っているかを見ずに次も同じ雰囲気の豆を探してしまうことです。配合の中身を確かめないと、好みの理由がつかめません。コツは、ブレンドの表示で産地名を確認し、コロンビアが入っていたら次はコロンビア単体の豆も試してみること。単体と配合の違いを知ると、自分がどの要素を好んでいたのかが見えてきます。

コロンビアの豆はどの種?アラビカとカネフォラの基本
産地の話の前に、種の基本も押さえておきましょう。全日本コーヒー協会は「植物学的には、コーヒーは数十の種を持ちますが、飲用目的で栽培され流通しているのは「アラビカ種」「カネフォラ種(通称ロブスタ)」の2つです。」と説明しています(全日本コーヒー協会「栽培」のコラム)。協会の表では、アラビカ種の原産地はエチオピアとされています。
コロンビアで話題にのぼるカトゥーラやカスティージョは、種よりもう一段細かい品種の名前です。種と品種を混同すると、カトゥーラとアラビカは別の豆なのか、といった疑問が出てきます。種は大きな分類、品種はその中の系統、と順番に考えると整理しやすくなります。
World Coffee Researchは、コロンビアを世界のアラビカコーヒー輸出国の上位3か国の一つで、高品質なウォッシュドのアラビカコーヒーで知られる国と紹介しています。ただし、すべての豆がアラビカ種だとまでは書いていません。気になるときのコツは、袋の表示に種名や品種名が書かれているかを見ることです。書かれていれば、その豆についてはそれが一次情報になります。書かれていなければ、販売元の説明で確認するのが確実です。
| 主な産地・生産国 | コロンビア。国の32県のうち23県で栽培(World Coffee Research)。カルダス・キンディオ・リサラルダ・バジェ・デル・カウカの生産地帯は世界遺産 |
| 主な品種・精製方法 | カトゥーラ、さび病耐性のカスティージョなど。精製方法は豆ごとの表示で確認 |
| 味の傾向 | 華やかな香りと豊かなコクがありながら、マイルドな味わい(全日本コーヒー協会の紹介) |
| 淹れ方のコツ | まず焙煎度の表示を確認。ブレンドにも適しているとされ、単体と配合の両方で楽しめる |
スプレモとエクセルソは何が違う?ふるいの目で決まる等級の読み方
スプレモは「ふるいに残る豆の大きさ」で決まる
コロンビアの豆の袋でよく見るスプレモは、FNCが定める生豆の区分の名前です。FNCの生豆(Café verde)のページでは、豆を番号つきのふるい(スペイン語でmalla=網目)にかけ、どの番号の網目に残るかで区分しています(FNC「Café verde」)。
たとえばスプレモの18番については、「Café retenido sobre la malla 18 con tolerancia del 5% inferior a esta, pero retenido por la malla 14.」と書かれています(FNC「Café verde」)。18番のふるいに残る豆で、それより小さい豆が5%までは混じってよいが、その分も14番のふるいには残るもの、という意味です。FNCの粒度表では、95%が18番の上、5%が14番の上という形でも示されています。
FNCのページでは、スプレモには18番・17番・16番の3つがあり、そのほかにヨーロッパ(15番)、UGQ(14番)という区分も並んでいます。コツは、袋にスプレモとあれば、まず大きめの粒をそろえた区分なのだと読み、番号まで書いてあればその数字でどのふるいの区分かを確認することです。
エクセルソはコロンビアの典型的な味わいの商業品という区分
エクセルソはスプレモと並んでよく見る名前ですが、FNCの現行ページでの説明は、ふるいの番号とは少し角度が違います。FNCはエクセルソを、商業的なコロンビアの典型的な味わいのコーヒーであり、買い手が求める調製や欠点の基準に合わせて提供されるもの、と説明しています(FNC「Café verde」)。
つまりエクセルソは、粒の大きさを1つに絞った名前というより、輸出先の注文に合わせてそろえられる、コロンビアの標準的な商業品として位置づけられている、と読むのが原文に沿った理解です。スプレモが大きさの区分の名前、エクセルソが流通の形の名前、と考えると混乱しにくくなります。
家でやりがちなのは、エクセルソと書かれているからスプレモより下の豆だ、と味まで決めつけてしまうことです。FNCの説明は味の上下を順位づけたものではありません。コツは、エクセルソの豆を選ぶときも、焙煎度・精製方法・焙煎日など、味に直接関わる表示を優先して見ること。等級名は豆の出どころと流通の形を知る手がかりにとどめておくと、選び方の軸がぶれません。
実は、FNCのページの中でも16番の呼び方は2通りある
日本の解説では、スプレモはスクリーン17以上、と説明されることがあります。FNCの「Café verde」ページを見ると、粒度(Granulometría)の表ではSupremo 17/18が「95%が17番の上・5%が14番の上」、Supremo 18が「95%が18番の上・5%が14番の上」とされ、16番は「Extra(95%が16番の上・5%が14番の上)」という別の名前です。こちらは、スプレモ=17番以上という説明と合っています。
一方、同じページの区分の一覧には「Supremo malla 16」も並んでいます。つまり16番は、一覧ではスプレモ、粒度の表ではExtraと書かれています。区分を定めている当事者はFNCなので、この記事ではFNCのページの両方の記載を紹介し、どちらか一方に決めつけないことにします。
読者として役に立つのは、等級の説明を1つの数字で覚えないことです。たとえば店頭の説明に17以上と書いてあっても、それが販売側の選別基準なのか、FNCの区分をそのまま書いたものなのかは、表示だけでは分かりません。コツは、気になるときは区分名と番号をセットで確かめること。スプレモ18のように番号まで書いてあれば、FNCの表と突き合わせて読めます。
| 区分名 | 残るふるいの番号 | 小さい豆の許容 | 許容分が残るふるい |
|---|---|---|---|
| スプレモ | 18番/17番/16番(粒度表では16番はExtra) | 5%まで | 14番 |
| ヨーロッパ | 15番 | 10%〜5% | 12番 |
| UGQ | 14番 | 1.5%〜5% | 12番 |
| エクセルソ | 番号ではなく流通の形で説明 | 買い手の調製・欠点の基準に合わせる | ― |
等級名を「味のランク」と読み違える失敗
等級まわりでいちばん多いのが、スプレモ=おいしい上位品、エクセルソ=その下、と味の順位として読んでしまう失敗です。FNCの区分は、どの番号のふるいに残るかという粒の大きさと、流通の形で説明されています。味の良し悪しを直接決める仕組みとしては書かれていません。
粒の大きさがそろっていることには意味があります。一般に、大きさのばらつきが小さいほうが焙煎の熱の入り方をそろえやすい、と考えられるからです。ただし、それは扱いやすさの話であって、香りやコクの強さを保証するものではありません。味に直接効くのは、焙煎度、精製方法、焙煎からの日数、そして淹れ方です。
原因は、等級名を味のランクだと読んでしまうことです。FNCの区分は粒の大きさ(ふるいの番号)で決まります。対策は、等級名より先に焙煎度の表示を見ること。苦味が好きなら深い焙煎、酸味も楽しみたいなら浅めの焙煎、と焙煎度で候補を絞ってから等級名を参考にすると、期待とのずれが減ります。
豆はどこで育つ?世界遺産になった生産地帯と急斜面の農園

全国32県のうち23県で栽培、小さな農家が支える
コロンビアのコーヒーは、国の一部の地域だけで作られているわけではありません。World Coffee Researchのコロンビアのページでは「Coffee is grown in 23 of the country’s 32 departments」と書かれています(World Coffee Research「Colombia」)。国の32県のうち23県でコーヒーが栽培されているという意味です。
同じページでは、55万を超える家族が生計をコーヒーに依存していること、生産の70%を小規模生産者が担っていることも紹介されています。コロンビアのコーヒーは、大規模な農園よりも、数多くの小さな生産者によって支えられている、という姿が見えてきます。
なお、全日本コーヒー協会の2014年のコラムでは栽培県を20県と記載していて、World Coffee Researchの値と食い違います。統計や数字は調べた年によって変わるので、年版を確かめずに混ぜるのは失敗のもとです。この記事では、新しい値としてWorld Coffee Researchの23県を採っています。コツは、県の数や家族の数といった数字を見かけたら、いつの資料かを一緒に確認することです。
エヘ・カフェテロと「コロンビア・コーヒーの文化的景観」
コロンビアのコーヒーを語るうえでよく出てくる地域名が、エヘ・カフェテロ(Eje Cafetero、コーヒー生産軸)です。全日本コーヒー協会の2014年のコラムでは、カルダス・キンディオ・リサラルダの3県と、隣接するバジェ・デル・カウカを合わせた4県、約14万1000ヘクタールの地域が、「「コロンビア・コーヒーの文化的景観」としてユネスコの世界遺産に登録されている。」と紹介されています(全日本コーヒー協会のコラム)。登録は2011年です。
ユネスコの登録資料によると、この世界遺産は6つの農業景観で構成され、その中に18の都市が含まれます。場所は国の西部、アンデス山脈の西・中央の山並みの麓です。コーヒーの畑だけでなく、それを育ててきた町や暮らしをひとまとまりの景観として評価している点が特徴です。
ここで勘違いしやすいのが、世界遺産の地域の豆だけがコロンビアコーヒーだ、という読み方です。先ほどのとおり栽培は23県に広がっていて、世界遺産はその一部の地域です。袋に地域名が書かれているときは、その地名がどの県のものかを調べてみると、産地の地図が少しずつ頭に入っていきます。
25%を超える急斜面という土地の条件
協会の紹介文にあった、山岳地帯で地質・気候ともに栽培に適した地、という説明は、世界遺産の資料からも具体的に読み取れます。ユネスコの資料では、コーヒー農園は25%(55度)を超える急斜面の山並みに位置していて、それがこの地域の厳しいコーヒーの地形の特徴だと説明されています。
急な斜面にある畑が景観として評価されたということは、そこで代々コーヒー作りが続いてきたこと自体が価値として認められた、ということでもあります。ユネスコの資料によれば、この景観の管理は、文化省、FNC、カルダス・キンディオ・リサラルダ・バジェの各県知事などによる管理委員会が調整しています。生産者団体が行政と並んで名を連ねているのも、コーヒーが地域の暮らしの中心にあることを示しています。
注意したいのは、急斜面だから必ずこういう味になる、と土地の条件と味を直接結びつけすぎることです。一次情報で確かめられるのは、栽培に適した山岳地帯であること、そして急斜面の農園が景観として評価されていることまでです。コツは、土地の話は豆の背景を知る楽しみとして受け取り、実際の味の判断は焙煎度や袋の表示で行うことです。
象徴だったカトゥーラはなぜ減った?さび病と品種の入れ替え
カトゥーラはブラジルで見つかったブルボンの変異
コロンビアの品種の話で必ず出てくるのがカトゥーラです。World Coffee Researchの品種カタログでは「Caturra is a natural mutation of the Bourbon variety.」と説明されています(World Coffee Research品種カタログ「Caturra」)。ブルボンという品種から自然に生まれた変異、という意味です。
同じカタログによると、カトゥーラが見つかったのは1915〜1918年の間、ブラジルのミナスジェライス州の農園です。木の背が低くまとまる矮性という性質を持っています。コロンビアを代表する品種なのに、生まれはブラジルという点は、意外に感じる人も多いかもしれません。
World Coffee Researchは、コロンビアではカトゥーラが国の生産のほぼ半分を占めると考えられていた、とも書いています。かつてはコロンビアのコーヒーといえばカトゥーラ、という時代があったわけです。やりがちなのは、品種名を見て昔の情報のまま判断してしまうことです。次の見出しで見るように、コロンビアの品種はこの十数年で大きく入れ替わっています。コツは、品種の話を読むときも、いつの時点の話なのかを確かめることです。
さび病という弱点と2008年からの植え替え
カトゥーラには、コーヒーさび病にかかりやすいという弱点があります。World Coffee Researchの品種カタログでも、さび病への弱さが特性として挙げられています。さび病は葉に広がる病気で、品種そのものの性質として弱いと、畑全体の収穫に影響が出やすくなります。
そこでコロンビアでは、政府が支援する取り組みが2008年に始まりました。World Coffee Researchによると、この取り組みで30億本を超えるコーヒーの木が、さび病に強いカスティージョという品種に植え替えられています。カスティージョはカトゥーラを親に持つ品種です。弱点のある品種を捨てるのではなく、その系統を受け継ぎながら病気への強さを加えた品種に置き換えていった、という流れです。
その結果、World Coffee Researchのコロンビアのページでは「87 percent of Colombia’s coffee area is planted with rust-resistant varieties」と書かれています(World Coffee Research「Colombia」)。コロンビアのコーヒー栽培面積の87%が、さび病耐性品種になっているということです。いまのコロンビアの豆を理解するには、カトゥーラだけでなくカスティージョの名前も覚えておくと話がつながります。
研究機関セニカフェとカスティージョ2.0
こうした品種の入れ替えを支えているのが研究機関です。World Coffee Researchによると、国立コーヒー研究センター(Cenicafé、セニカフェ)はコロンビアの主要なコーヒー研究機関で、1938年に設立されました。生産者連合会の設立から10年あまりで研究の拠点が生まれていることになり、コロンビアが早い時期から研究に取り組んできたことが分かります。
品種の改良はいまも続いています。World Coffee Researchのコロンビアのページでは、カスティージョ2.0が2024年に公開されたことが紹介されています。一度植え替えて終わりではなく、新しい系統が出てくる分野だということです。
やりがちな失敗は、カスティージョとほかのさび病耐性品種の交配の系統を、ネットの記事で見かけた説明のまま覚えてしまうことです。コツは、品種の系統を知りたいときは、World Coffee Researchの品種カタログのような研究機関のページで確かめることです。
さび病=コーヒーの葉に広がる病気。カトゥーラはさび病に弱いとされます(World Coffee Research)。
さび病耐性品種=さび病に強いよう選ばれた品種。コロンビアではカスティージョが代表例で、栽培面積の87%がさび病耐性品種です(World Coffee Research)。
矮性=木の背が低くまとまる性質。カトゥーラの特性の1つです。
品種名から読み取れること・読み取れないこと
袋に品種名が書かれていると、それだけで味まで分かる気がしますが、品種名から確かに読み取れるのは、その豆の系統と背景です。カトゥーラならブルボンから生まれた矮性の品種、カスティージョならカトゥーラを親に持つさび病耐性の品種、という具合です。
一方で、味は品種だけでなく、焙煎度、精製方法、焙煎からの日数、淹れ方で大きく動きます。品種名だけで、この品種は酸味が強い、苦い、と決めるのは早すぎます。
家でやりがちなのは、品種名の違う2つの豆を、焙煎度も焙煎日も違う状態で比べて、品種の差だと結論づけてしまうことです。比べたい要素以外の条件がそろっていないと、違いの原因は分かりません。コツは、品種名を楽しむときは、同じ焙煎度の表示がある豆どうしで比べること。条件を1つずつそろえていくと、何が味に効いているのかが見えやすくなります。
数字で見る:日本の輸入は第3位、生産量はどう動いた?
日本の生豆輸入でコロンビアは第3位
日本で飲まれているコーヒーの中で、コロンビアがどのくらいの位置にいるのかを、全日本コーヒー協会の統計資料で見てみましょう。協会の2025年のコーヒー生豆の輸入量のデータでは、コロンビアは第3位です。協会のデータページには「ブラジル、ベトナム、コロンビアの上位 3 ヶ国からの輸入が4分の3近くを占めています。」と書かれています(全日本コーヒー協会「統計資料」)。
| 順位 | 国 | 輸入量 |
|---|---|---|
| 第1位 | ブラジル | 146,619,058kg |
| 第2位 | ベトナム | 89,997,950kg |
| 第3位 | コロンビア | 38,034,499kg |
| 参考 | 日本の生豆輸入総量 | 359,381,973kg |
出典:全日本コーヒー協会の統計資料(2025年確々報、脱カフェイン含む)をもとにコーヒーの教科書編集部が整理。
表を見ると、ブラジルとベトナムが大きく、コロンビアはそれに続く位置にいます。結論としては、コロンビアは日本の輸入で上位3か国に入る主要な産地の1つです。数字を読むときのコツは、出典の年版を必ず見ること。この表は2025年の確々報の値で、年が変われば順位や量も変わりえます。

5年分の推移で見るコロンビアからの輸入
単年の数字だけでは、増えているのか減っているのかが分かりません。全日本コーヒー協会の統計資料で、コロンビアからの生豆輸入量を5年分並べてみます。単位はキログラムで、2021年が47,669,808、2022年が47,159,039、2023年が34,031,280、2024年が35,857,638、2025年が38,034,499です。この5年間、順位はいずれも第3位でした。
流れとしては、2023年に一度大きく減り、その後2年続けて増えています。ただし、なぜ2023年に減ったのかについて、協会の統計資料には理由が書かれていません。生産量の変化なのか、他の国からの輸入との兼ね合いなのか、推測で理由をつけることはしないでおきます。
やりがちなのは、ニュースで見た話題と統計の増減を結びつけて、勝手に原因を決めてしまうことです。統計の表に書かれているのは量の変化だけで、理由までは書かれていません。コツは、増減を見るときは同じ資料・同じ対象の数字で並べること。協会の資料は輸入量の表なので、ここから分かるのは、日本がコロンビアからどれだけ生豆を輸入したか、という事実までです。
生産量はICOの「千袋」単位で見る
コロンビアがどれだけコーヒーを作っているかは、輸入量とは別の統計で見ます。全日本コーヒー協会が掲載している国際コーヒー機関(ICO)のデータでは、コロンビアの総生産量(生産年度は10月から翌年9月)は、単位千袋で、2019年14,100、2020年13,394、2021年11,683、2022年10,617、2023年12,758、2024年13,633です。1袋は60kgです。
同じ表で2024年を見ると、ブラジルは65,400千袋、世界の総生産は174,820千袋です。コロンビアの生産量は、2022年にかけて減ったあと、2023年・2024年と持ち直している流れが読み取れます。
順位については、全日本コーヒー協会の2014年のコラムに、コロンビアの生産量はブラジル、ベトナムに次いで世界第三位という記述があります。ただしこれは2014年時点の記述で、現在の順位を示すものではありません。年によって順位が入れ替わることもあるので、生産量の順位を書くときは何年の資料かを必ず添えるのが、数字と付き合うときの基本です。
輸入量と生産量を混ぜてしまう失敗
コロンビアの数字を調べていると、輸入量と生産量の2種類が出てきます。この2つは対象も単位も別物です。輸入量は日本がコロンビアから買った生豆の量で、全日本コーヒー協会の資料ではkg単位です。生産量はコロンビアが国全体で作った量で、ICOのデータでは千袋単位、しかも生産年度は10月から翌年9月と、暦の年とずれています。
同じコロンビアの数字だからといって並べて比べると、まったく意味のない比較になってしまいます。年度の区切りが違うので、たとえ単位をそろえたとしても、同じ期間の数字にはなりません。
原因は、どちらもコロンビアの量の数字に見えることです。輸入量は日本向けの量(kg・暦年)、生産量は国全体の量(千袋・10月〜翌年9月の生産年度)で、対象・単位・期間がすべて違います。対策は、数字を書き写すときに対象(輸入か生産か)・単位・年版の3つを必ずセットでメモすること。これだけで取り違えはほぼ防げます。
コロンビアコーヒーはどう焙煎し、どう淹れる?豆の選び方と飲み方のコツ
焙煎度は8段階、まず中煎りを基準にする
コロンビアの豆を選ぶとき、味にいちばん直接効く表示が焙煎度です。全日本コーヒー協会は「焙煎度は最も浅いライトローストから真っ黒になるまで炒り上げたイタリアンローストまで8段階ありますが、大まかには浅炒り、中炒り、深炒りの3段階。」と説明しています(全日本コーヒー協会「焙煎」のコラム)。
協会の区分では、浅煎りがライトロースト/シナモンロースト、中煎りがミディアムロースト/ハイロースト/シティロースト、深煎りがフルシティロースト/フレンチロースト/イタリアンローストです。シティローストは中煎りに入るので、深煎りと混同しないよう注意してください。
協会は、生産国や銘柄、精製方法によって違いのある個性を引き出すように焙煎度を決める、とも説明しています。コロンビアの紹介にある華やかな香り・豊かなコク・マイルドさのバランスをつかむには、まず真ん中の中煎りを1つ飲み、そこから浅い側・深い側へ動かしていくのが比べやすい進め方です。焙煎度の表示がなく、色の名前だけが書かれている豆は、販売元に焙煎度を確かめるとよいでしょう。

浅煎り・深煎りに振ると何が変わる?
焙煎度を動かしたときの変化の方向は、協会の説明どおり、浅く炒るほど酸味が強く、深く炒るほど苦味を感じる傾向です。コロンビアの豆でも同じで、浅煎りは酸味が前に出やすく、深煎りでは苦味とコクが前に出やすくなります。
精製方法の表示も手がかりになります。全日本コーヒー協会の精製方法の説明では、ウォッシュドは完熟豆を水槽で選別し、「種子を覆っているパーチメントを取り除きやすくするために、1日発酵させたあと水洗いをする。」方法で、味わいは「透明感のあるフルーティな酸味、すっきりとした印象の味わいです。」と紹介されています(全日本コーヒー協会「精製方法」のコラム)。World Coffee Researchはコロンビアを高品質なウォッシュドのアラビカコーヒーで知られる産地と紹介していますが、豆ごとの精製方法は違うことがあるので、袋にウォッシュドとあれば、この説明が手がかりになります。
やりがちな失敗は、深煎りのコロンビアを飲んで苦すぎると感じ、コロンビアは苦い豆だと覚えてしまうことです。苦味の強さを決めているのは主に焙煎度で、産地ではありません。対策は、苦味が強すぎると感じたら、同じコロンビアの中煎りの豆に替えてみること。産地をそろえて焙煎度だけを変えると、自分の好みの位置が見つけやすくなります。
淹れ方は挽き目・湯温・時間を1つずつ動かす
コロンビアだから特別な淹れ方が必要、ということはありません。大切なのは、ほかの豆と同じく、抽出の条件を理屈で動かすことです。一般に、豆を細かく挽くほど湯に触れる面積が増えて成分が出やすくなり、粗く挽くほど出にくくなります。湯温を高くするほど成分は出やすく、抽出時間が長いほど多くの成分が出ます。
この理屈を知っておくと、味の調整が楽になります。苦味や渋みが強いと感じたら、出すぎている可能性があるので、挽き目を粗くする、湯温を下げる、時間を短くする、のどれか1つを試します。逆に薄い・物足りないと感じたら、反対の方向に1つ動かします。豆の量・湯量・湯温・蒸らし時間の具体的な数値は、使っている器具のメーカーが出している抽出ガイドを基準にしてください。メーカーによって案内は異なります。
家でやりがちなのは、味がしっくりこないときに挽き目も湯温も豆の量も一度に変えてしまうことです。どの変更が効いたのか分からず、次に再現できません。コツは、1回に動かす条件は1つだけにして、変えた内容と感じた味をメモしておくこと。コロンビアのマイルドさを生かすなら、まずはメーカー公式の基準どおりに淹れて、そこから少しずつ調整するのが近道です。
こんな人にはこう選ぶ:読者タイプ別の使い分け
コロンビアの楽しみ方は、飲む人の目的によって変わります。協会の紹介文と焙煎度の説明をもとに、タイプ別に整理してみます。
コーヒーを飲み始めたばかりで、何を選べばよいか分からない人は、中煎りのコロンビアから始めるのが分かりやすい選択です。華やかな香り・豊かなコク・マイルドさという協会の紹介を、焙煎度の真ん中で確かめられます。苦味のしっかりした味が好きな人は、深煎りの表示があるコロンビアを。苦味とコクが前に出る方向です。酸味が気になる人は、浅煎りを避けて中煎りから深煎りの側で選ぶと、酸味が前に出にくくなります。
家でブレンドを作ってみたい人は、ブレンドに適しているとされるコロンビアを土台にして、ほかの産地の豆を少しずつ加えていく方法があります。土台がマイルドだと、加えた豆の個性が分かりやすくなります。産地の背景を楽しみたい人は、品種名や地域名が書かれた豆を選び、カトゥーラやカスティージョ、世界遺産の地域の話と結びつけて飲むと、1杯の情報量が増えていきます。どのタイプでも、最初に見る表示は焙煎度です。
1927年の連合会からCafé de Colombiaまで:産地の名前を守る仕組み
1927年に生まれた生産者連合会FNC
コロンビアのコーヒーを語るとき、何度も名前が出てくるのがコロンビア・コーヒー生産者連合会(Federación Nacional de Cafeteros、FNC)です。FNCの公式サイトによると、設立は1927年6月27日です(FNC公式サイト)。FNCは自らを世界最大級の農村NGOの一つと紹介していて、営利を目的としない団体です。
FNCは、この記事で見てきた多くの話に関わっています。スプレモやエクセルソといった生豆の区分を定めているのもFNCで、世界遺産の景観を管理する委員会にも名を連ねています。小規模な生産者が生産の多くを担うコロンビアでは、生産者をまとめる団体の役割が大きい、と読み取れます。
やりがちなのは、FNCを国の役所だと思い込むことです。FNCは生産者の連合会で、行政機関そのものではありません。世界遺産の管理委員会でも、文化省や県知事と並ぶ一員として名前が挙がっています。コツは、コロンビアのコーヒーに関する情報を見たとき、それが政府の情報なのか、FNCの情報なのか、研究機関の情報なのかを分けて読むことです。
Café de Colombiaは国とEUが認めた地理的表示
コロンビアのコーヒーには、産地の名前を守る仕組みもあります。それが地理的表示(GI)です。地理的表示は、産地と結びついた品質や評判を持つ産品の名前を保護する制度です。世界知的所有権機関(WIPO)の事例紹介では「In December 2004 the FNC presented the Colombian government with an application to recognize “Café de Colombia” as a GI.」と書かれています(WIPO「Making the Origin Count: The Colombian Experience」)。
WIPOによると、FNCが2004年12月にコロンビア政府へ申請し、3か月以内に承認されました。さらに2005年にEUの保護地理的表示(PGI)を申請し、2007年9月に正式に認められています。国内だけでなくEUでも、Café de Colombiaという名前が産地と結びついたものとして守られるようになったわけです。
実は、コロンビアと書かれた豆の名前の価値は、こうした仕組みで支えられています。やりがちなのは、地理的表示を味の保証書だと受け取ることです。地理的表示が守っているのは産地と名前の結びつきで、1袋ごとの味を約束するものではありません。コツは、産地名は豆の出どころの手がかり、味は焙煎度などの表示で判断、と役割を分けて考えることです。
日本との結びつき:1962年の支局開設と第二位のマーケット
日本とコロンビアのコーヒーには、長いつながりがあります。全日本コーヒー協会の2014年のコラムでは「日本はコロンビア・コーヒーの世界第二位のマーケットであり、またFNCがもっとも多くコーヒー(コーヒー豆やコーヒー製品)を販売している国でもある。」と紹介されています(全日本コーヒー協会のコラム)。同じコラムには「FNCが日本に支局を開設したのは1962年。」とも書かれています。
この記述は、駐日大使の発言を含む2014年6月27日付のコラムのもので、現在の順位を示すものではありません。それでも、半世紀以上前からFNCが日本に拠点を置き、日本を重要な市場として見てきたことは分かります。いまも日本の生豆輸入でコロンビアが第3位に入っていることと合わせると、日本の食卓とコロンビアのつながりが見えてきます。
注意したいのは、2014年の第二位という表現を、いまの数字として引用してしまうことです。古い資料の順位をそのまま使うと、事実と食い違う可能性があります。コツは、順位や割合の話を見たら、まず資料の日付を確かめること。最新の量を知りたいときは、全日本コーヒー協会の統計資料で最新の年版を見るのが確実です。
| 1915〜1918年 | ブラジル・ミナスジェライス州の農園でカトゥーラが見つかる(World Coffee Research) |
| 1927年 | コロンビア・コーヒー生産者連合会(FNC)設立(FNC公式) |
| 1938年 | 研究機関セニカフェ設立(World Coffee Research) |
| 1962年 | FNCが日本に支局を開設(全日本コーヒー協会のコラム) |
| 2004年12月 | FNCがCafé de Colombiaの地理的表示を政府に申請(WIPO) |
| 2007年9月 | EUで保護地理的表示(PGI)として正式に認定(WIPO) |
| 2008年 | さび病耐性のカスティージョへの植え替えを支援する取り組みが始まる(World Coffee Research) |
| 2011年 | コロンビア・コーヒーの文化的景観がユネスコ世界遺産に登録 |
| 2024年 | カスティージョ2.0が公開(World Coffee Research) |
まとめ
コロンビアコーヒーは、名前をよく見かけるわりに、等級名や品種名の意味が知られていない豆です。けれど、全日本コーヒー協会の紹介文、FNCのふるいの区分、World Coffee Researchの品種の情報を順に読むと、ラベルの1語1語に意味があることが分かります。最初の一歩としては、次に豆を買うとき、コロンビアの中煎りを1袋選び、焙煎度・精製方法・等級名の3つの表示を見比べてから淹れてみてください。表示を読んでから飲むだけで、同じ1杯から受け取れる情報がぐっと増えていきます。
※統計や区分は改定されることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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