スーパーや通販でコーヒー豆の棚を見ると、「ドリップ用」「中細挽き」「シティロースト」「ブレンド」と、袋ごとに違う言葉が並んでいます。家でハンドドリップを始めたばかりだと、どれを選べば自分の器具に合うのか、苦すぎたり薄すぎたりしないのか、迷ってしまいますよね。
結論から言うと、ドリップ用の豆選びで見るべきなのは「挽き方」「焙煎度」「豆のままか粉か」の3つです。ペーパードリップなら、全日本コーヒー協会の対応表では中細挽きが目安とされています。焙煎度は浅煎りほど酸味、深煎りほど苦味の傾向があり、粉で買うか豆で買うかで開封後に使い切りたい期間が変わります。パッケージの表示は公正競争規約というルールに沿って書かれているので、読み方さえ知っていれば袋の裏で中身を判断できます。
この記事では、表示規約・全日本コーヒー協会の解説・器具メーカーやコーヒーメーカーの公式の抽出ガイドをもとに、ドリップ用の豆の選び方と、その豆を生かす淹れ方の考え方を理屈から整理します。お店の紹介やランキングではなく、どの豆を手に取っても自分で判断できる「ものさし」を持ち帰ってもらうための記事です。
・袋の「挽き方」「品名」「原材料名」の表示から、ドリップに合う豆を見分ける方法
・焙煎度8段階と、酸味・苦味の傾向の関係
・豆で買うか粉で買うかで変わる、開封後の目安と保存のコツ
・苦い・薄いと感じたときに、豆を替える前に見直したい挽き目と分量
ドリップ豆とは?袋の「挽き方」表示を見れば中身がわかる

「ドリップ用」は法律上の区分ではなく、挽き方の目安です
「ドリップ豆」「ドリップ用」という呼び名は、ドリップで淹れることを想定した粗さに挽いた粉、またはドリップに向く豆を指す売り場の言葉で、表示のルールで決まった区分ではありません。袋の中身を正確に知る手がかりは、情報ラベル(一括表示)に書かれた「挽き方」の欄です。
理由は、レギュラーコーヒーの表示を定めた公正競争規約にあります。レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約・同施行規則では、粉の製品は「挽き方」の文字の後に粗(荒)挽き・細挽きなどと表示することになっています。一方で、豆のままの製品とインスタントコーヒーには挽き方の表示はしない、と定められています。
やりがちなのは、表の大きな文字の「ドリップ用」だけを見て買い、家のサイフォンやフレンチプレスに使ってしまうケースです。器具によって合う粗さが違うので、抽出の速さが想定とずれ、味が濃すぎたり薄すぎたりする原因になります。
買う前に袋の裏を返し、一括表示の「挽き方」の欄を確かめる習慣をつけましょう。欄がなければ豆のままの製品です。その場合は自分のミルで挽き目を決めることになります。
表示規約が定める挽き方5段階の「粗さの物差し」
挽き方の表示には、規約の施行規則(別表1)に基準が書かれています。粗い順に、粗(荒)挽き・中挽き・中細挽き・細挽き・極細挽きの5段階です。全日本コーヒー協会の「情報ラベル(一括表示)の見方」でも「挽き方には粗挽き(荒挽き)、中挽き、中細挽き、細挽き、極細挽きの5種類があります。」と説明されています。
別表1は、砂糖の粒にたとえて粗さを示しているのが特徴です。中挽きはグラニュー糖程度の粗さ、細挽きはグラニュー糖と白砂糖の中間の粗さ、粗挽きはザラメ状またはそれ以上の粗さとされています。前文では、一定の粒度分布を守ることと、熱の発生を極力抑えることが重要とされています。
家で挽くときに失敗しやすいのは、ミルの目盛りの数字だけで判断し、粉の見た目を確かめないことです。ミルの目盛りはメーカーや機種ごとに基準が違うため、同じ「3」でも粗さは一致しません。
挽いた粉を少量だけ白い紙の上に広げ、グラニュー糖と並べてみると、別表1の物差しと照らし合わせやすくなります。粒がそろっているか(大きな粒と粉っぽい微粉が混ざっていないか)も同時に見ておきましょう。
| 挽き方 | 粗さの基準(規約 別表1) | 対応する器具の例(協会) | 1杯分の粉量(協会) |
|---|---|---|---|
| 粗挽き | ザラメ状またはそれ以上 | パーコレーター | 約15g |
| 中挽き | グラニュー糖程度 | サイフォン・布ドリップ | 12~13g |
| 中細挽き | 中挽きと細挽きの中間 | ペーパードリップ | 約10g |
| 細挽き | グラニュー糖と白砂糖の中間 | ウォータードリップ | 8~10g |
| 極細挽き | 細挽き以下 | エスプレッソマシン・イブリック | 6~8g |
出典:粗さの基準は公正競争規約施行規則 別表1、器具の対応は全日本コーヒー協会「焙煎・配合・粉砕」、粉量は同「基本原則」の挽き方別の表をもとに編集部で整理。
品名「レギュラーコーヒー」と原材料名から、豆の正体を読む
挽き方の次に見たいのが「品名(名称)」と「原材料名」の欄です。この2つで、豆だけでできた製品か、どこの国の豆が入っているかがわかります。
規約では、レギュラーコーヒーを、生豆を焙煎したもの(煎り豆)と、煎り豆に生豆を加えたもの、さらにそれらを挽いたものと定義しています。品名欄には「レギュラーコーヒー」と書かれ、原材料名には「コーヒー豆」の後に括弧で生豆生産国名が続きます。ブレンドの場合は、主要な生産国を原則として重量の多い順に並べるルールです。全日本コーヒー協会は、品名を表示する理由について、外見上、挽いたコーヒーか豆のままのコーヒーかを識別できないこともあるため、と説明しています。
見落としやすいのは、インスタントコーヒーが混ざった製品です。規約では、インスタントコーヒーが入ってレギュラーコーヒーとみなされるものは、品名に『レギュラーコーヒー(インスタントコーヒー入り)』と書くことになっています。ドリッパーで淹れる豆を探しているなら、この括弧書きの有無も確認しておくと安心です。
原材料名の国名の並び順は、配合の多い順の目安になります。先頭にある国の豆の性格が、味の土台になりやすいと考えて選ぶと迷いが減ります。
実は、規約の「粗挽き」の英名は「ドリップグラインド」
意外と知られていないのが、規約の別表1で粗(荒)挽きの括弧書きに「ドリップグラインド」「コースグラインド」と書かれていることです。一方、全日本コーヒー協会の器具との対応では、ペーパードリップに合うのは中細挽き、布ドリップ(ネル)とサイフォンには中挽きとされています。
つまり「ドリップ」という言葉が付いていても、それだけで紙のフィルターに合う粗さとは限りません。英語のパッケージや輸入品で「drip grind」と書かれた粉を見かけたら、日本の一括表示の「挽き方」欄や、メーカーが案内している対応器具の記載を合わせて確かめるのが確実です。
やりがちな失敗は、粗めの粉をペーパードリップで使い、湯が早く落ちすぎて薄くなるケースです。粒が大きいほど湯と触れる面積が小さくなり、成分が出きる前に湯が通り過ぎてしまいます。
規約の別表1自体も、いれ方や器具に適した挽き方も求められるが、一般的にはこの表を基準とする、という書き方をしています。名前よりも、自分の器具に合うかどうかで選ぶのが基本です。
レギュラーコーヒー=コーヒー生豆を焙煎した煎り豆、煎り豆に生豆を加えたもの、およびそれらを挽いたもの(公正競争規約の定義)。
グラインド=焙煎したコーヒーをミルで粉砕すること(全日本コーヒー協会)。
一括表示=袋の裏などに一か所で書かれた品名・原材料名・挽き方・内容量・賞味期限などの欄。
焙煎度で味はどう変わる?8段階と酸味・苦味の関係
浅煎り・中煎り・深煎りは、8段階を3つにくくった呼び方
袋に書かれた「シティロースト」「フレンチロースト」などの名前は、焙煎度の段階を表しています。全日本コーヒー協会の解説では8段階に分けられ、浅煎り・中煎り・深煎りの3つにくくられています。
全日本コーヒー協会「焙煎・配合・粉砕」によると、浅煎りはライトロースト・シナモンロースト、中煎りはミディアムロースト・ハイロースト・シティロースト、深煎りはフルシティロースト・フレンチロースト・イタリアンローストです。浅煎り・中煎り・深煎りの言葉だけが書かれた袋もあれば、段階名だけの袋もあるので、両方を対応づけて覚えておくと棚で迷いません。
注意したいのは、シティローストの位置です。名前の響きから深煎り寄りと思われがちですが、協会の表では中煎りに入っています。シティを深煎りのつもりで買うと、想像より苦味が穏やかに感じることがあります。
初めて選ぶときは、まず袋の焙煎度がこの8段階のどこに当たるかを確かめ、前回の豆との位置関係で「もう一段深く」「一段浅く」と調整していくと、好みに近づけやすくなります。
| 項目 | 浅煎り | 中煎り | 深煎り |
|---|---|---|---|
| 段階名 | ライト/シナモン | ミディアム/ハイ/シティ | フルシティ/フレンチ/イタリアン |
| 豆の色の例 | ライトは黄色がかった小麦色 | ミディアムは茶褐色、シティは鮮やかなコーヒーブラウン | フルシティはダークブラウン、イタリアンは黒に近い |
| 味の傾向 | 酸味を感じやすい | 酸味と苦味の中間 | 苦味を感じやすい |
出典:全日本コーヒー協会「焙煎・配合・粉砕」の焙煎度の表と解説をもとに整理。
浅いほど酸味、深いほど苦味に寄るとされる理由
焙煎度と味の関係について、全日本コーヒー協会は「一般的には浅炒りほど酸味が強く、深炒りになるほど苦味を感じるようになります。」と説明しています。ドリップ用の豆を選ぶときの、いちばん基本の物差しです。
同じ解説では、生豆には感じられないコーヒー独特の香りは焙煎によるものとされています。つまり、焙煎は単に色を付ける工程ではなく、香りや味の性格そのものをつくる工程です。生産国や品種が同じ豆でも、焙煎度が違えば別の飲み物のように印象が変わることがあります。
やりがちなのは、「酸っぱいのが苦手」と感じたときに、豆の産地ばかり替えてしまうことです。原因が焙煎度にある場合、産地を替えても浅煎りのままなら酸味の印象は残りやすくなります。逆に苦味が強すぎると感じたら、深煎りから中煎りに一段戻すだけで落ち着くことがあります。
好みの方向がわからないうちは、袋の焙煎度を記録しておくのがおすすめです。「シティで飲みやすかった」「フレンチは苦かった」とメモしておけば、次に買う豆の段階を決める手がかりになります。

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焙煎日と鮮度:袋の情報で確かめたいこと
焙煎度と同じくらい大事なのが、焙煎してからどれくらい経っているかです。全日本コーヒー協会は、焙煎されたてのコーヒーが香気成分が最も多く、次第に劣化していくと説明しています。
協会がまとめたおいしいコーヒーを淹れるための基本原則でも、6項目のうち最初に「新鮮な焙煎豆を使用する」が挙げられています。どんなに器具や淹れ方をそろえても、香りが抜けた豆では取り戻せない部分があるということです。
袋で確認できるのは、一括表示の賞味期限です。焙煎日を別に記載している製品もありますが、表示が義務づけられた項目ではないため、書かれていない袋もあります。賞味期限は開封前の状態を前提にしたものなので、開封したら期限にかかわらず早めに使うのが基本です。
家で使い切れる量を考えて買うことが、鮮度を守るいちばん確実な方法です。毎日飲む人とたまに飲む人では、同じ量の袋でも使い切るまでの日数が変わります。自分のペースに合った量を選びましょう。
焙煎度に合わせて湯温を考える
焙煎度を選んだら、淹れるときの湯温も一緒に考えると味がまとまりやすくなります。メリタジャパンの公式の淹れ方ページでは、抽出に最適なお湯の温度は使うコーヒーの豆の種類によって異なるため、湯温を調整するよう案内されています。
一方で、全日本コーヒー協会のペーパードリップの手順では、湯温は95℃前後とされています。UCC上島珈琲のペーパードリップの解説では「沸騰したお湯が鎮まり落ち着いたぐらいが適温(92~96℃)です。」と案内されています。メーカーや団体によって示し方が違い、1つの温度が唯一の正解というわけではありません。
やりがちなのは、沸騰したての湯をそのまま注ぐことです。沸騰直後の湯は協会やUCCの目安より高い温度になっていることがあり、苦味が前に出やすくなります。深煎りの豆で苦味が強すぎると感じたら、まずこの点を疑ってみてください。
温度計があれば、協会やUCCが示す範囲の中で、深煎りは下寄り、浅煎りは上寄りというように数度ずつ変えて、味の変化を確かめると好みの温度が見つかりやすくなります。
豆のまま買う?粉で買う?開封後の鮮度はここで決まる

粉は表面積が増えるぶん、湿気と酸化の影響を受けやすい
ドリップ用の豆を「豆のまま」買うか「挽いた粉」で買うかは、味よりもまず鮮度の持ち方に差が出ます。全日本コーヒー協会の粉砕の解説には「豆は粉状になると表面積が増えるため、湿気を吸いやすく酸化が進んで劣化します。」とあります。
豆の状態では外側の面だけが空気に触れますが、粉にすると細かい粒の一つひとつが空気や湿気に触れます。そのため、同じ量でも粉のほうが香りが抜けやすく、時間が経つと味がぼやけやすくなります。
やりがちなのは、粉の大袋を買い、毎日少しずつ使って数週間かけて飲み切るパターンです。最初の数日はおいしく感じても、後半になるほど香りが立たなくなり、「豆が悪かった」と誤解してしまうことがあります。
粉で買うなら、使い切れる量を小さめの袋で選ぶのが基本です。豆で買って淹れる直前に挽けば、この劣化の影響を小さくできます。ミルを持つかどうかが、豆で買うか粉で買うかの分かれ目になります。
開封後の目安:UCCの案内では粉は7~10日程度、豆は1ヶ月程度
開封後どれくらいで飲み切ればよいかは、メーカーごとに案内が異なります。ここではメーカー公式の数字として、UCC上島珈琲の案内を紹介します。
UCC上島珈琲のよくある質問では、開封後は賞味期限の日付に関わらず、コーヒー粉に挽かれた商品は7~10日程度、コーヒー豆商品は1ヶ月程度を目安に飲むよう案内されています。同社の保存方法のページでは、粉タイプは1週間~10日程度、豆タイプは1か月程度で飲み切るのが理想とされています。
この差は大きく、同じ量の袋を買っても、粉なら短い期間で使い切る計画が必要です。毎日1杯程度しか飲まない人が粉の大袋を選ぶと、目安の期間内に飲み切れないことがあります。
この日数はUCCの製品についての案内で、ほかのメーカーや店ではまた別の目安を示している場合があります。買った製品のメーカーが目安を出していれば、そちらを優先してください。全日本コーヒー協会の表示例にあるように、開封後は密封保存し、できるだけ早めに飲むのが共通の考え方です。
「一度に多く買えば手間が減る」と粉の大袋を選ぶと、飲み終わる前に香りが抜けてしまうことがあります。原因は、粉は表面積が大きく湿気と酸化の影響を受けやすいこと。対策は、粉なら使い切れる小さめの袋を選ぶか、豆で買ってその都度挽くことです。UCCの案内では、開封後の目安は粉が7~10日程度、豆が1ヶ月程度とされています。

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挽くときの熱とムラが、香りと抽出の安定を左右する
豆で買って自分で挽く場合は、ミルの使い方にも気を配ると豆の良さを引き出しやすくなります。全日本コーヒー協会は、コーヒーを挽く際に発熱すると、コーヒーが変色し、抽出後の香りが減少すると説明しています。
同じ解説では、挽きムラがあるとコーヒー粉に湯が平均的に入り込まず、抽出濃度にムラが出ること、微粉末は過剰抽出の原因になりがちなことも挙げられています。規約の別表1が一定の粒度分布を守ることと熱の発生を極力抑えることを重視しているのも、同じ理屈です。
やりがちな失敗は、刃の回転で切るタイプのミルを長く回し続け、粉が熱を持ったり、粗い粒と微粉が混ざったりすることです。手挽きミルは粒がそろいやすい一方で、1杯分を挽くにも時間がかかるというデメリットがあります。
どのミルでも、挽いたら粉を確認し、極端な微粉が目立つなら挽き目を一段粗くしてみましょう。挽き目の調整方法や手入れは機種ごとに違うので、取扱説明書の該当ページを確認してください。
ミルがない人は「挽き方」欄と量で選ぶ
ミルを持っていない人や、毎朝挽く時間がない人は、粉の製品で問題ありません。選び方のコツは、自分の器具に合う「挽き方」と、飲むペースに合う量の2点です。
ペーパードリップなら、全日本コーヒー協会の器具との対応で中細挽きが目安とされています。UCC上島珈琲のペーパードリップの解説でも中細挽きの粉を使う手順になっており、HARIOの取扱説明書(耐熱ガラス本体とステンレスドリッパーのセット)にもコーヒー粉(中細挽き)と書かれています。袋の「挽き方」欄が中細挽きなら、まず合わせやすい粉と考えてよいでしょう。
やりがちなのは、店頭で豆を挽いてもらうとき、使う器具を伝えずに「ドリップ用で」とだけ頼むことです。前の見出しで見たように、ドリップという言葉が指す粗さには幅があります。ペーパーなのか布(ネル)なのかを具体的に伝えると、器具に合った粗さに挽いてもらいやすくなります。
粉は開封後の劣化が早いので、毎日1杯程度なら小さめの袋を選び、開封したら空気を抜いて口をしっかり閉じましょう。
ブレンドとストレート、毎日の一杯にはどちらが向く?
ブレンドは「単体では出せない風味」をつくるために配合した豆
豆の袋には「○○ブレンド」と書かれたものと、「ブラジル」「コロンビア」のように国名や産地名だけが書かれたものがあります。この違いを知っておくと、毎日の一杯に向く豆を選びやすくなります。
全日本コーヒー協会は「単体では出せない風味を出すために、数種類の豆を配合することを「ブレンド」と呼びます。」と説明しています。配合するコーヒーの種類は多すぎるとバランスが崩れるため、一般的には3〜5品種が適当とされています。焙煎のしかたにも、豆ごとに焙煎してから配合する単品焙煎と、配合してから一緒に焙煎する混合焙煎があると紹介されています。
やりがちなのは、「ブレンド=寄せ集めで格下」という先入観を持つことです。協会の説明にあるとおり、ブレンドは狙った風味をつくるための配合で、味の調和を重視した設計と考えるのが自然です。
ブレンドを選ぶときは、原材料名の生産国の並びを見ましょう。重量の多い順に書かれる決まりなので、先頭の国が味の土台になっている目安になります。
ストレートは単品の豆。産地の個性がそのまま出る
ストレートは、ブレンドと対になる言葉です。UCC上島珈琲の用語辞典では「特定の産地など、単品のコーヒー豆のこと。」と説明され、数種を混合したブレンドに対比した言い方とされています。
単品の豆なので、その産地や品種の性格がカップに出やすいのが特徴です。一方で、収穫年や入荷の時期によって豆が替わると、同じ名前でも印象が変わることがあります。毎日同じ味を求めるならブレンド、豆ごとの違いを楽しみたいならストレート、という考え方で選ぶと整理しやすくなります。
やりがちな失敗は、ストレートの豆を選ぶときに産地名だけを見て、焙煎度を見落とすことです。同じ国の豆でも、浅煎りと深煎りでは味の方向が大きく変わります。産地と焙煎度の2つをセットで確認しましょう。
また、規約では、特定の産地・品種・銘柄などだけを使っている旨を表示する場合は、その生豆以外を使ってはならないと定めています。産地名の表示は、パッケージを信頼して選ぶための根拠の1つになります。

お店のメニューで「ブレンド」と書かれていると、とりあえずそれを頼んでいる。スーパーの豆売り場でも「○○ブレンド」がずらりと並ぶけれど、いったい何と何が混ざってい…
「○○ブレンド」の名前には30パーセント以上のルールがある
産地名が付いたブレンドには、表示上のルールがあります。公正競争規約の施行規則では、「○○○ブレンド」(○○○は生豆の産地・品種・銘柄など)と表示できるのは、その生豆を30パーセント以上使っているものに限るとされています。
たとえば産地名を冠したブレンドなら、その産地の豆が30パーセント以上入っているということです。逆に言えば、名前の産地の豆が半分以上とは限りません。名前から想像する味と、実際の配合の比率は分けて考える必要があります。
やりがちなのは、産地名入りのブレンドを、その産地のストレートと同じ味だと思って買うことです。ほかの豆と組み合わせた配合なので、ストレートとは違う味わいになります。
配合の中身をもう少し知りたいときは、原材料名の生産国の並びを確認しましょう。3か国以上を使う場合は、割合の高い国から2か国以上を書き、それ以外の国名は「その他」「他」と表示する決まりなので、すべての国が書かれていないこともあります。
アラビカ種とカネフォラ種:ドリップ用で多いのはどちら?
豆の種類として知っておきたいのが、アラビカ種とカネフォラ種(通称ロブスタ)です。全日本コーヒー協会「栽培」によると、アラビカ種はコーヒー生産量全体の6割弱を占め、ストレートの飲用に適しているとされています。
カネフォラ種は生産量がコーヒー全体の4割強で、単品で飲むにはあまり適さず、主にインスタントコーヒーの原料に使用されると説明されています。強健で病害虫にも強いという特徴もあります。
注意したいのは、袋に品種が書かれていないことが多い点です。一括表示の原材料名に求められているのは生豆の生産国名で、アラビカかカネフォラかの表示は義務ではありません。品種を知りたい場合は、パッケージの表面やメーカーの商品説明に書かれているかを確認しましょう。
ストレートの豆を探すなら、アラビカ種と明記された製品から選ぶと、協会の説明に沿った選び方になります。ブレンドでは、狙った味をつくるためにカネフォラ種が組み合わされていることもあります。
毎日同じ味を求めるならブレンド、豆ごとの個性を楽しむならストレートが選びやすい考え方です。ブレンドは原材料名の国名の並び(重量の多い順)で土台を読み、ストレートは産地名と焙煎度をセットで確認しましょう。「○○ブレンド」の名前は、その豆が30パーセント以上という意味で、過半数とは限りません。
粉の量と湯温は、協会・メーカーでどう違う?

協会の表では、ペーパードリップの中細挽きは1杯約10g
豆を選んだら、次は1杯にどれだけ使うかです。全日本コーヒー協会の基本原則には、挽き方別のコーヒー粉の標準的分量(一杯分)が載っていて、中細挽きは約10g、中挽きは12~13g、粗挽きは約15gとされています。
粗い粉ほど1杯分の量が多くなっているのは、粒が大きいと成分が出にくいからです。湯と触れる面積が小さくなるぶん、量で補う考え方になっています。逆に、細かい粉ほど少ない量で味が出ます。
一方、同じ協会のペーパードリップの手順ページでは、1杯140mL分の例として中細挽きの粉12g・湯160mLが示されています。基本原則の表の約10gとは条件の示し方が違うので、どちらか1つを唯一の正解と考えず、「表は挽き方ごとの標準」「手順ページは1杯140mL分の例」と分けて理解するのがよいでしょう。
家で量るときは、計量スプーンよりキッチンスケールが確実です。スプーンは山盛りかすりきりかで量が変わり、焙煎度によって豆の大きさや重さの感じ方も違うためです。

UCC・HARIO・メリタの公式ガイドを並べると
器具メーカーやコーヒーメーカーも、それぞれ公式に目安を出しています。数字が少しずつ違うのは、想定している1杯の量や器具の構造が違うためです。記載のあるメーカーだけを並べると、次のようになります。
やりがちなのは、あるメーカーの数字を別のメーカーのドリッパーにそのまま当てはめることです。たとえばメリタの1つ穴のドリッパーは湯を一度に注ぐ方式で案内されており、複数回に分けて注ぐ方式とは前提が違います。使っている器具のメーカーの案内を基準にし、ほかの数字は参考にとどめましょう。
| 出典 | 挽き目 | 粉量・湯量 | 湯温 | 蒸らし |
|---|---|---|---|---|
| 全日本コーヒー協会(1杯140mL分の例) | 中細挽き | 粉12g・湯160mL | 95℃前後 | 20秒ほど |
| UCC上島珈琲 | 中細挽き | 1杯分あたり10~12g・湯160ml程度 | 92~96℃ | 20秒ほど |
| HARIO(取扱説明書 CJKF-01) | 中細挽き | 1杯分(120ml)10〜12g | 記載なし(沸騰後、静まりを待つ) | 30秒程 |
| メリタ | 記載なし(粗挽きなら粉を多めに) | 1杯分(125cc)は湯140cc・粉約8g | 豆の種類で調整 | 20秒から30秒 |
出典:全日本コーヒー協会「ペーパードリップ式」、UCC上島珈琲、HARIO取扱説明書、メリタジャパンの公式ページをもとに整理(コーヒーの教科書調べ)。
粗挽きの豆を使うなら、粉を多めにする理由
手持ちの粉が想定より粗い場合や、少し粗めの挽き目が好みの場合は、粉の量で調整するのが基本です。メリタジャパンの淹れ方ページには「粗挽きの場合はコーヒーの粉を多めにすることをおすすめします」と書かれています。
理由は、全日本コーヒー協会の挽き方別の表と同じです。粗挽きは約15g、中細挽きは約10gと、粗いほど1杯分の量が増えています。粒が大きいと湯が粉の内側まで届くのに時間がかかり、同じ量では成分が出きらずに薄く感じやすいからです。
やりがちな失敗は、粗めの粉で薄いと感じたときに、湯をゆっくり注いで時間を延ばすことで補おうとすることです。注ぎ方を変えすぎると、毎回の味が安定しなくなります。量を少し増やすほうが、再現しやすい調整です。
調整するときは一度に大きく変えず、少しずつ増やして味を確かめると、どこで好みに届いたかがわかりやすくなります。
HARIOのV60は粉量を基準に湯量を決める
HARIOのV60の公式ページでは、粉の量から湯量を決める考え方が紹介されています。蒸らしではコーヒー粉量の2倍のお湯を注ぎ、注ぎ切ってから30秒蒸らし、その後は1回の湯量を粉量×4倍とし、杯数分に関係なくお湯が落ちきるまでを3分以内とするよう案内されています。
この方法では、粉を正確に量ることがそのまま湯量の正確さにつながります。豆の量を目分量にすると、湯量も連動してずれてしまうため、スケールで粉と湯の両方を量る意味が大きくなります。
やりがちなのは、粉の量を増やしたのに湯量を以前のまま注ぐことです。粉に対して湯が少なすぎると、濃く、苦く感じやすくなります。逆に粉を減らして湯量を変えないと、薄くなります。
V60を使う人は、HARIOの公式ページで注ぐ回数と比率を確かめ、粉の量を決めたら湯量も合わせて決める、という順番で準備すると味が安定しやすくなります。挽き目と湯温はこのページには数値の記載がないので、取扱説明書など別の公式資料を合わせて確認してください。
苦い・薄いを豆のせいにする前に見直したい3つのずれ
苦い・渋いときは、細かすぎる粉と微粉を疑う
買った豆が「苦すぎる」「渋い」と感じたとき、すぐに豆を替える前に挽き目を確認しましょう。全日本コーヒー協会は、微粉末は過剰抽出の原因になりがちだと説明しています。
細かい粉は湯と触れる面積が大きく、成分が短い時間で多く出ます。さらに、細かい粉はフィルターの目を詰まらせやすく、湯が落ちる時間が長くなります。その結果、本来は出てほしくない苦味や渋みまで引き出されてしまうことがあります。
やりがちなのは、香りを出そうとして挽き目を細かくしすぎたり、刃で切るタイプのミルを長く回して微粉を増やしたりすることです。深煎りの豆をこの状態で淹れると、焙煎由来の苦味と過剰抽出の苦味が重なって、強く出やすくなります。
対策は、挽き目を一段粗くすること、湯温を協会やメーカーの目安の範囲内で少し下げることです。HARIOの取扱説明書では抽出時間は杯数分に関係なく3分を目安とされているので、落ちきるまでの時間を測ってみるのも手がかりになります。
薄い・酸っぱいときは、粗すぎる粉と量不足を疑う
反対に、味が薄い、酸味ばかりが目立つと感じるときは、粉が粗すぎるか、量が足りていない可能性があります。成分が出きる前に湯が通り過ぎてしまうと、軽くて物足りない味になります。
全日本コーヒー協会の表で、粗挽きの1杯分が約15gと多めに設定されているのは、粗い粉は成分が出にくいためです。粗めの粉をペーパードリップの感覚で約10gだけ使うと、薄く感じやすくなります。浅煎りの豆の場合は、焙煎度による酸味の傾向も加わって、酸っぱさが前に出ることがあります。
やりがちなのは、薄いと感じて抽出の途中で湯を足し続け、結果としてさらに薄くなることです。湯量を増やすほど、カップの中の濃度は下がります。
対策は、まず粉の量を量り直すこと、次に挽き目を一段細かくすることです。協会のペーパードリップの手順では、おいしいドリップコーヒーの濃度の目安は約1.4%前後とされています。濃度計がなくても、粉と湯の量を毎回同じにすれば、変えたのが挽き目だけになり、原因を絞り込めます。
苦いと感じて、豆・挽き目・湯温・粉の量を同時に変えると、どれが効いたのかわからなくなります。原因は、変える条件が多すぎること。対策は、粉と湯の量をスケールで固定し、挽き目か湯温のどちらか1つだけを変えて淹れることです。豆を替えるのは、それでも好みに届かなかったときで十分です。
器具と挽き目の組み合わせがずれていないか
3つ目のずれは、器具と挽き目の組み合わせです。全日本コーヒー協会の対応では、ペーパードリップは中細挽き、布ドリップ(ネル)とサイフォンは中挽き、エスプレッソマシンは極細挽きとされています。
同じドリップでも、紙と布ではフィルターの目の細かさや湯の通り方が違います。ペーパー用の中細挽きを布フィルターで使ったり、ネル用の中挽きを紙で使ったりすると、抽出の速さが想定からずれ、濃すぎる・薄すぎるの原因になります。
やりがちなのは、家に複数の器具があるのに、粉を1種類だけ買ってすべてに使い回すことです。粉の製品は挽き目を変えられないため、器具に合わない粗さで淹れ続けることになります。
器具を使い分けたい人は、豆で買って器具ごとに挽き目を変えるのが合理的です。粉で買う場合は、いちばんよく使う器具に合わせた挽き方を選びましょう。挽き方の対応表は、この記事の最初の比較表を参考にしてください。
基準の淹れ方を1つ決めると、豆の違いがわかる
豆の違いを正しく感じ取るには、淹れ方を固定するのが近道です。基準として使いやすいのが、全日本コーヒー協会「ペーパードリップ式」の1杯140mL分の手順です。
この手順では、中細挽きの粉12gに対して湯160mLを用意し、湯温は95℃前後とされています。蒸らしてから3回に分けて注ぎ、完成時の理想的な温度は約65℃とされています。数字がはっきりしているので、毎回同じ条件で淹れやすいのが利点です。
やりがちなのは、豆を替えるたびに淹れ方まで変えてしまい、味の違いが豆によるものか淹れ方によるものか区別できなくなることです。基準の淹れ方を決めておけば、焙煎度や産地による違いを感じ取りやすくなります。使っている器具のメーカーが別の手順を案内している場合は、そちらを基準にしてもかまいません。
ドリップ豆の保存と、飲み方・暮らし方別の選び分け
保存の基本は直射日光を避けた冷暗所、開封後は密封
選んだ豆の良さを最後まで保つには、保存の仕方が欠かせません。全日本コーヒー協会の情報ラベルの解説には「品質や香りを保つため、直射日光を避け冷暗所での保存が基本です。」とあります。
同じ解説では、レギュラーコーヒーは開封すると香りの成分が散逸しやすく、吸湿、酸化が進むので、きっちり閉めて冷暗所で保存するのが基本とされています。一括表示の保存方法の欄にも、直射日光、高温多湿をさけてください、と書かれていることが多いはずです。
やりがちなのは、袋の口を軽く折っただけでコンロの近くや窓辺に置いておくことです。熱や光、湿気に触れやすい場所では、香りの抜けが早まります。透明な容器に移して日の当たる棚に並べるのも、見た目はよくても保存の面では不利です。
開封後は袋の空気をできるだけ抜き、チャックやクリップで口を閉じましょう。遮光性があって密閉できる容器に袋ごと入れると、光と湿気の両方を防ぎやすくなります。
冷凍するなら、1回分ずつ小分けにして結露を防ぐ
飲み切るまでに時間がかかりそうなときは、冷凍庫を使う方法もあります。ただし、出し入れのしかたに注意が必要です。
UCC上島珈琲のよくある質問では、冷凍庫の内外の温度差が大きく、出し入れによって水滴がつき、コーヒーが湿気てしまうことがあると注意されています。そのうえで「湿気は、コーヒーの風味を損なう要因の一つです。」とし、一度に使用する分量ずつラップ等で小分けにすることがすすめられています。
やりがちな失敗は、大きな袋のまま冷凍庫に入れ、毎朝取り出して必要な分だけ取り、また戻すことです。そのたびに冷えた豆の表面に結露が起き、湿気を吸わせてしまいます。
冷凍するなら、買ってきた直後に1回分ずつ量って小分けにし、使う分だけを取り出すようにしましょう。取り出した豆はすぐ戻さず、その回で使い切るのがポイントです。
飲み方・暮らし方で変わる、豆の選び分け
ここまでの物差しを組み合わせると、自分に合う豆の買い方が見えてきます。暮らし方別に整理すると、次のような考え方ができます。
毎朝1杯をペーパードリップで飲む人は、中細挽きの粉か、豆とミルの組み合わせが候補です。粉なら開封後の目安を考えて小さめの袋を選びます。週末だけゆっくり淹れる人は、飲む間隔が空くので、豆で買って飲む直前に挽くほうが鮮度を保ちやすくなります。冷凍の小分けも組み合わせやすい場面です。
毎日同じ味を安定して飲みたい人はブレンドを、産地の違いを楽しみたい人はストレートを選ぶと迷いが減ります。苦味が苦手な人は浅煎り〜中煎り、苦味やコクを求める人は深煎りから試すのが、協会の示す傾向に沿った選び方です。
家に複数の器具がある人は、器具ごとに挽き目を変えられるよう豆で買うのが合理的です。どのタイプでも、袋の挽き方・焙煎度・原材料名の3つを確認する手順は共通です。
まとめ
次に豆を買うときは、袋を裏返して「品名」「原材料名」「挽き方」の3つの欄を読んでみてください。家では粉と湯の量をスケールで固定し、挽き目か湯温のどちらか1つだけを変えて淹れれば、その豆が自分の好みに合うかどうかがはっきりしてきます。
※表示のルールや各メーカーの抽出の目安は改定されることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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