MENU

コーヒーの産地は約70ヵ国以上!世界の生産量ランキングと日本が豆を買う上位10か国

コーヒーの産地は約70ヵ国以上!世界の生産量ランキングと日本が豆を買う上位10か国のアイキャッチ画像

スーパーの棚でコーヒー豆を手に取ると、袋には「ブラジル」「コロンビア」「エチオピア」と国名が並んでいたり、「モカ」「キリマンジャロ」「マンデリン」のように国名ではない名前が書かれていたりします。コーヒーの産地は結局どこに集まっていて、どの国がどれくらいつくっているのか。日本に届く豆はどこから来ているのか。ここが分かると、袋の表示を見たときに「この豆は世界の中でどんな位置づけの産地なのか」がつかめるようになるんですよ。

結論から言うと、全日本コーヒー協会によればコーヒーは世界約70ヵ国以上で栽培され、その多くが赤道をはさむ北緯25°から南緯25°の「コーヒーベルト」に集中しています。国際コーヒー機関(ICO)の統計では生産量1位はブラジルで、日本の生豆輸入でもブラジル・ベトナム・コロンビアの3か国が2021〜2025年の各年で上位3位を占めています。

この記事では、「約70ヵ国」という数字の読み方、ICO統計の順位の読み方、そして日本が生豆を買っている上位10か国を中心に、一次情報だけを材料に産地の「地図」を組み立てていきます。味の好みを決めつけるのではなく、豆を選ぶときの判断材料になる事実を整理しました。

📌 この記事でわかること

・「約70ヵ国以上」の数え方と、5つの地域に分けた主な産地
・ICO統計(2024生産年度)の順位を読むときの注意点
・日本の生豆輸入の上位10か国と、世界の生産順位とのズレ
・精製と選別の仕組みと、産地の情報を豆選びに生かす見方

目次

コーヒーの産地は約70ヵ国以上、どう数えてどう読む?

コーヒーの産地は約70ヵ国以上、どう数えてどう読む?の解説画像

産地が集まる「コーヒーベルト」(北緯25°〜南緯25°)の範囲や、なぜ赤道近くに産地が集まるのかは、コーヒーベルトの記事でくわしく整理しています。ここでは要点だけ押さえて、「約70ヵ国」という数字の読み方から始めます。

「約70ヵ国以上」は産地の広がりを示す数字

全日本コーヒー協会の産地紹介では「コーヒーは世界約70ヵ国以上で栽培され、その多くは赤道を中心に北緯25°と南緯25°に挟まれた『コーヒーベルト』と呼ばれる熱帯地域に集中しています。」と説明されています(全日本コーヒー協会「コーヒーの生産地」)。

やりがちなのが、「約70ヵ国以上で栽培」と聞いて、どの国も同じくらいの量をつくっていると思い込むことです。実際には後で見るように、生産量はブラジルを筆頭に一部の国に偏っています。70ヵ国という数字は「産地の広がり」を示すもので、「量の分布」を示すものではないんですね。

コツは、豆の袋に書かれた生産国名を見たら、まず協会の地域区分のどこに入る国かを頭の中で地図に置いてみることです。地域が分かるだけで、ほかの豆と比べるときの軸ができます。

5つの地域に分けると、産地の顔ぶれが見えてくる

約70ヵ国を一つずつ覚えるのは大変なので、協会の産地紹介にならって地域ごとにまとめてみましょう。全日本コーヒー協会のページでは、アフリカ・南米・アジア・中東・中米・オセアニアの区分で主な産地が挙げられています。

この区分が便利なのは、袋に書かれた国名や銘柄名をすぐに「どのあたりの豆か」へ結びつけられるからです。たとえば「キリマンジャロ」はタンザニア、「マンデリン」はインドネシアの項に並んでいます。国名と銘柄名が混在している売り場でも、地域で整理しておけば迷いにくくなります。

📊 地域ごとの主な産地(全日本コーヒー協会の産地紹介より)
地域 協会が挙げる主な産地(カッコ内は併記された名前)
アフリカ エチオピア(モカ)、ケニア、タンザニア(キリマンジャロ)
南米 ブラジル(世界第1位の生産国)、コロンビア
アジア・中東 インドネシア(マンデリン)、ベトナム
中米 グアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、ジャマイカ(ブルーマウンテン)、ハワイ
オセアニア パプアニューギニア、オーストラリア

協会のページでは、上の国に続けて「そのほか」として、アフリカにウガンダ・ルワンダ・ブルンジ・ザンビア、南米にエクアドル・ペルー、アジアにラオス・インド、中米にメキシコ・ホンジュラス・ニカラグアも挙げられています。注意点として、この表は「主な産地」の紹介であって、生産量の順番ではありません。量の順位はこの後のICO統計で確かめます。

「モカ」「キリマンジャロ」は国名ではない、という落とし穴

売り場で混乱しやすいのが、国名と銘柄名が同じ棚に並んでいることです。全日本コーヒー協会の産地紹介では、エチオピアの項に「モカ」、タンザニアの項に「キリマンジャロ」、インドネシアの項に「マンデリン」、ジャマイカの項に「ブルーマウンテン」が併記されています。袋に書かれたカタカナの名前が、必ずしも国の名前ではないということですね。

なぜこんなことが起きるかというと、コーヒーの名前は国名のほかに、地域名・山の名前・積み出し港の名前など、流通の歴史の中で定着した呼び名が使われてきたからです。名前の由来は豆ごとに違うので、気になる銘柄は一つずつ調べるのが確実です。

あわせて読みたい
コーヒーモカとは?イエメンの港町が名前の由来、マタリとハラーの違いと淹れ方 「コーヒーモカ」と聞いて思い浮かべるものは、人によって違います。豆売り場に並ぶ「モカ」の銘柄、直火にかけて淹れるイタリア生まれの器具「モカポット」、カフェの...
⚠️ やりがちな失敗:銘柄名を国名だと思って比べてしまう

「モカ」と「エチオピア」を別の国の豆だと思って飲み比べ、違いの理由を産地の差に求めてしまうケースです。原因は、銘柄名と国名の対応を確かめていないこと。対策は、袋の表示の生産国欄を見て、銘柄名がどの国の豆を指しているかを確認してから比べることです。

ICO統計の生産量ランキングはどう読む?表の分かれ方と生産年度

ブラジルは65,400千袋、2位の2倍以上をつくっている

生産量の順位を確かめるときの一次資料は、国際コーヒー機関(ICO)の統計です。全日本コーヒー協会は、ICO(2025.10)資料をもとにした「輸出国別総生産量(生産年度)」の表を公開しています(全日本コーヒー協会掲載 ICO資料(PDF))。単位は1,000袋で、1袋は60kgです。

この表で2024生産年度を見ると、ブラジルが65,400千袋で1位、2位のベトナムが29,185千袋なので、ブラジルは2位の2倍以上をつくっていることになります。世界総合計は174,820千袋なので、ブラジル1か国で全体の3分の1を超えています。協会の産地紹介でも、ブラジルの項に「世界第1位のコーヒー生産国でとれる、アラビカ種のコーヒー豆。」と書かれています(全日本コーヒー協会「コーヒーの生産地」)。

やりがちな誤解は、「有名な産地=生産量が多い産地」と考えてしまうことです。ジャマイカやハワイのように名前がよく知られていても、ICO統計の上位12か国には入っていません。知名度と量は別の物差しだと覚えておくと、統計を見たときに驚かずにすみます。

読むときのコツは、単位が「千袋」であることを最初に確かめること。「65,400」をそのままトンや袋だと読み違えると、桁がずれてしまいます。

加盟国表と非加盟国表を合わせて並べ替える

ICOの表は「加盟国」と「非加盟国」の2つに分かれています。上位の顔ぶれを正しくつかむには、この2つの表を合わせて全行を並べ替える必要があります。加盟国の表だけを見ると、ウガンダやグアテマラが抜け落ちてしまうからです。

2つの表を合わせて並べ替えると、2024生産年度は1位ブラジル、2位ベトナム、3位コロンビア、4位インドネシア、5位エチオピア、6位ウガンダ(非加盟国表)と続き、グアテマラ(非加盟国表)は11位です。上位10か国の数値の一覧はコーヒーベルトの記事にまとめているので、ここでは「加盟国表と非加盟国表の両方を必ず確かめる」という読み方だけ覚えておいてください。

生産量は年によって動く、ブラジルの増減の幅

順位表を見ると「ブラジルは毎年65,400千袋」と思いがちですが、生産量は年ごとに上下します。同じICO資料でブラジルの推移を見ると、2019年58,211千袋、2020年68,960千袋、2021年58,960千袋、2022年60,000千袋、2023年67,240千袋、2024年65,400千袋。2020年と2021年では差10,000千袋もの開きがあります。

これは農作物である以上、天候などの条件で収穫量が変わるためと考えられます。どの年がなぜ増減したかは資料に書かれていないので、ここでは「年による増減が大きい」という事実にとどめます。

一方で、エチオピアは2019年7,343千袋、2020年7,581千袋、2021年7,853千袋、2022年7,932千袋、2023年8,911千袋、2024年9,911千袋と、6年間毎年増えています。コロンビアは2022年に10,617千袋まで下がったあと、2024年は13,633千袋に戻っています。

やりがちな失敗は、ある1年の数字だけで「この国は伸びている」「減っている」と判断すること。コツは、少なくとも3〜5年分を並べて傾向を見ることです。

同じ「2024年」でも国ごとに期間が違う生産年度

ICO資料を読むときにもう一つ気をつけたいのが、表の年が「生産年度」だという点です。表には国ごとに年度の始まりと終わりを示す欄があり、ブラジルやインドネシアなどは4月から翌3月、コロンビアやエチオピアなどは10月から翌9月となっています。同じ「2024」と書かれていても、国によって対象の12か月がずれているわけです。

なぜこうなっているかというと、産地ごとに収穫の時期が違うためで、収穫の区切りに合わせて年度を設定していると読めます。国によって季節が異なる北半球・南半球の産地が混ざっているので、暦の1月〜12月ではそろえにくいんですね。

やりがちなのは、生産年度の数字と、日本の輸入統計のような暦年(1月〜12月)の数字を同じ年として並べて比べてしまうことです。ICOの表でも、輸入国側の「輸入国別総輸入量(暦年)」は暦年で集計されています。

コツは、統計の表題に「生産年度」「暦年」「コーヒー年度」のどれが書かれているかを最初に確かめること。年の定義がそろっていない数字は、差を計算しても意味がずれてしまいます。

中南米・アフリカ・アジア・オセアニア、地域ごとに押さえたい国は?

中南米・アフリカ・アジア・オセアニア、地域ごとに押さえたい国は?の解説画像

地域ごとの国を見る前に、種の違いを要点だけ押さえておきます。全日本コーヒー協会の栽培の解説では、アラビカ種は原産地がエチオピアで生産量全体の6割弱を占め、「低地から高地にかけて栽培可能だが、サビ病等の病害虫に弱い」、ロブスタ種(カネフォラ種)は原産地がビクトリア湖周辺から西アフリカで生産量の4割強、「低地で湿潤な土地で栽培される」とされています(全日本コーヒー協会「コーヒーの栽培」)。また、World Coffee Research の品種カタログ(What’s included)では、ブラジル・インド・インドネシア・ウガンダがアラビカとロブスタの両方の収録国に入っていて、1つの国が1つの種だけを育てているとは限りません。

南米:ブラジルとコロンビア、そしてペルー

南米で押さえたいのは、生産量1位のブラジルと3位のコロンビアです。ICO統計(2024生産年度)ではブラジルが65,400千袋、コロンビアが13,633千袋。さらにペルーが3,750千袋で10位に入っています。協会の産地紹介でも、南米の項にはブラジルとコロンビアが挙げられています。

南米の豆が日本の売り場で目に入りやすいのは、輸入量の多さと結びついています。後で見る日本の生豆輸入統計では、2025年にブラジルが1位、コロンビアが3位、ペルーが9位でした。生産と輸入の両方で上位にいる国ほど、店頭で出会う機会が多くなるわけです。

やりがちなのは、「ブラジル」とひとくちに言っても豆の性格は一つだと考えること。WCRのカタログでブラジルがアラビカとロブスタの両方の収録国に入っていることからも分かるように、同じ国でも種や品種、精製方法が違えば別の豆です。

コツは、南米の豆を買うときに、国名のあとに書かれている地域名・農園名・精製方法まで見ること。同じ国の豆を比べるときの手がかりになります。

中米:グアテマラからジャマイカ、そしてハワイまで

中米は、生産量の上位に入る国が複数ある地域です。ICO統計ではホンジュラスが5,446千袋で8位、メキシコが4,265千袋で9位、グアテマラが3,537千袋で11位、ニカラグアが2,688千袋で12位。協会の産地紹介では、中米の項にグアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、ジャマイカ(ブルーマウンテン)、ハワイが並んでいます。

この地域で知っておきたいのは、グアテマラがICOの「非加盟国」の表に載っていることです。加盟国の表だけを見ると上位から抜け落ちてしまうので、順位を調べるときは注意が必要です。また、協会の区分ではハワイも中米の項に入っているので、「ハワイはどこの地域?」と迷ったら協会の分け方に合わせておくと整理しやすくなります。

やりがちな失敗は、ブルーマウンテンのように名前がよく知られた銘柄があることで、中米全体の生産量も大きいと思い込むことです。ジャマイカはICOの上位12か国には入っていません。名前の知名度と量は分けて考えましょう。

コツは、中米の豆の袋を見たら、国名とあわせて「ICOの上位に入る国か」を思い出してみること。売り場での出会いやすさの見当がつきます。

アフリカ:エチオピアとウガンダ、ケニアとタンザニア

アフリカは、コーヒーの原産地を抱える地域です。協会の栽培ページによれば、アラビカ種の原産地はエチオピア、ロブスタ種の原産地はビクトリア湖周辺から西アフリカ。つまり、主要な2つの種のふるさとがどちらもアフリカにあるということになります。

生産量では、ICO統計でエチオピアが9,911千袋で5位、ウガンダが7,050千袋で6位(非加盟国表)。協会の産地紹介では、アフリカの項にエチオピア(モカ)、ケニア、タンザニア(キリマンジャロ)が挙げられています。エチオピアは2019年から2024年まで毎年生産量が増えているのも見逃せないポイントです。

やりがちなのは、ウガンダを見落とすこと。日本の売り場では名前を見かける機会が少ないかもしれませんが、世界の生産量では6位です。WCRのカタログでもロブスタの収録国に入っています。

コツは、アフリカの豆を選ぶとき、銘柄名(モカ・キリマンジャロ)と国名(エチオピア・タンザニア)の対応を先に確かめておくこと。比べるときの混乱がぐっと減ります。

アジア・オセアニア:ベトナム、インドネシア、インドとパプアニューギニア

アジアには、世界2位の生産国があります。ICO統計ではベトナムが29,185千袋で2位、インドネシアが11,272千袋で4位、インドが6,264千袋で7位。協会の産地紹介では、アジア・中東の項にインドネシア(マンデリン)とベトナム、オセアニアの項にパプアニューギニアとオーストラリアが挙げられています。

ベトナムとインドネシアは、WCRのカタログでロブスタの収録国に入っています。協会の栽培ページにある「低地で湿潤な土地で栽培される」というロブスタの性質を思い出すと、アジアの産地を見る手がかりになります。ただし、各国の生産がどちらの種にどれだけ偏っているかは、ここで扱った資料では確かめていないので、断定はしないでおきます。

Q グアテマラやウガンダの生産量がICOの表で見つかりません。
A ICOの表は加盟国と非加盟国で2つに分かれていて、グアテマラとウガンダは非加盟国の表に載っています。順位を調べるときは2つの表を合わせて並べ替えてください。
Q 1つの国でアラビカとロブスタの両方を育てていることはありますか?
A あります。WCRの品種カタログでは、ブラジルがアラビカとロブスタの両方の収録国に入っています。袋の表示で種と生産国を別々に確かめるのが確実です。

日本の豆はどこから来る?輸入相手国の上位10か国と世界順位のズレ

2025年はブラジル・ベトナム・コロンビアで約4分の3

ここからは、日本に届くコーヒーの産地を見ていきます。全日本コーヒー協会は財務省の貿易統計をもとに「コーヒー生豆輸入量 上位24ヶ国」を公開していて、2025年(確々報)の生豆輸入量の総合計は359,381,973kgでした(全日本コーヒー協会「コーヒー生豆輸入量 上位24ヶ国」(PDF))。協会は統計資料のページで、これを359,382トンと表記しています。

国別に見ると、2025年は1位ブラジル、2位ベトナム、3位コロンビアの順で、この3か国は2021年から2025年までの各年で上位3位から動いていません。協会は統計資料のページで「ブラジル、ベトナム、コロンビアの上位 3 ヶ国からの輸入が4分の3近くを占めています。」と紹介しています(2025年の表で計算すると約76.4%)。つまり、日本で飲まれているコーヒーの生豆は、その大部分がこの3か国から来ているということです。

やりがちな誤解は、「産地は約70ヵ国以上あるのだから、日本にもいろいろな国の豆がまんべんなく入っている」と考えること。実際には上位24か国で99.71%に達していて、輸入元は限られた国に集中しています。

コツは、売り場で豆を選ぶとき、「この豆の生産国は輸入上位の国か」を意識してみることです。上位国の豆は流通量が多いぶん、銘柄や焙煎度の選択肢も見つけやすくなります。

4位以下は年ごとに入れ替わる

上位3か国は2021年から2025年まで各年で不動ですが、4位以下は年によって順位が入れ替わっています。同じ協会の統計で見ると、2021年は4位インドネシア、5位グアテマラ、6位エチオピア。2024年は4位エチオピア、5位グアテマラ、6位インドネシア、7位タンザニア。2025年は4位グアテマラ、5位エチオピア、6位タンザニア、7位インドネシアでした。

なぜ入れ替わるのかは、統計表そのものには書かれていません。ただ、先に見たようにICO統計でも産地の生産量は年ごとに上下しているので、日本に届く量も一定ではないということは読み取れます。

2025年の上位10か国を並べると、1ブラジル、2ベトナム、3コロンビア、4グアテマラ、5エチオピア、6タンザニア、7インドネシア、8ホンジュラス、9ペルー、10ウガンダです。上位3か国以外は、数百万kgから数千万kgの幅で並んでいます。

やりがちな失敗は、1年分の順位だけを見て「この国の豆が日本で人気になった」と結論づけること。コツは、数年分の順位を並べて「上位に入り続けている国」と「年によって動く国」を分けて見ることです。

実は、世界11位のグアテマラが日本では4位

意外と知られていないけれど、世界の生産量の順位と、日本の輸入の順位は一致していません。コーヒーの教科書では、ICO統計(2024生産年度)の世界順位と、全日本コーヒー協会の日本の生豆輸入量(2025年)を並べてみました。

📊 日本の輸入順位と世界の生産順位(コーヒーの教科書調べ)
日本の輸入順位(2025年) 国 輸入量(kg) 世界の生産順位(2024生産年度)
1ブラジル146,619,0581位
2ベトナム89,997,9502位
3コロンビア38,034,4993位
4グアテマラ19,629,88211位
5エチオピア15,068,8585位
6タンザニア11,623,044上位12か国の外
7インドネシア9,385,0474位
8ホンジュラス7,646,4578位
9ペルー4,754,31910位
10ウガンダ4,236,4126位

出典:全日本コーヒー協会「コーヒー生豆輸入量 上位24ヶ国」2025年(確々報)、ICO(2025.10)資料「輸出国別総生産量(生産年度)」。年の定義(暦年・生産年度)が異なるため、順位の目安として見てください。

上位3か国は世界も日本も同じ並びですが、グアテマラは世界11位なのに日本では4位、タンザニアは世界の上位12か国に入っていないのに日本では6位です。逆に、世界4位のインドネシアは日本では7位、世界6位のウガンダは日本では10位。日本の輸入元は、世界の生産量の順番をそのまま映しているわけではないんですね。豆の袋で見かける国名の印象は、世界の量ではなく日本の輸入の構成に近いと考えると腑に落ちます。

輸入統計を読むときに確かめたい3つの点

日本の輸入統計を使うときは、数字の「対象」を確かめることが欠かせません。1つ目は、協会の表は生豆の輸入量で、注として「注:脱カフェインを含む」と書かれていることです。焙煎した豆(レギュラーコーヒー)やインスタントコーヒーの輸入とは別の対象です。

2つ目は、2025年の値が「確々報」であること。速報・確報と段階を踏んで確定していく統計なので、どの段階の数字かを書き添えておくと後から見返したときに混乱しません。3つ目は、単位です。協会の表はkg、ICOの「輸入国別総輸入量(暦年)」は千袋で、ICO(2025.04)の表では日本の2024年の輸入量は6,874千袋となっています。単位も出典も違うので、同じ表に混ぜないほうが安全です。

⚠️ やりがちな失敗:世界の生産順位を「日本でよく見る豆の順位」だと思い込む

世界4位だからインドネシアの豆が日本で4番目に多い、と考えてしまうケースです。原因は、世界の生産統計と日本の輸入統計を区別していないこと。対策は、日本の話をするときは協会の生豆輸入統計を、世界の話をするときはICOの生産統計を使い、対象(生豆・レギュラー・インスタント)と年の定義(暦年・生産年度)をそろえて見ることです。

同じ国の豆でも表情が変わるのはなぜ?精製と選別のしくみ

同じ国の豆でも表情が変わるのはなぜ?精製と選別のしくみの解説画像

水洗式(ウォッシュド)は果肉を除いて、発酵させてから水洗い

産地では、収穫したコーヒーの実から生豆を取り出す「精製(加工処理)」が行われます。全日本コーヒー協会の解説では、3つの精製方法として水洗式(ウォッシュド)・非水洗式(ナチュラル)・スマトラ式(セミウォッシュド)が紹介されていて、ここでは前の2つを見ていきます。水洗式(ウォッシュド)は、まず「果肉除去機で、外皮と果肉を取り除き、ミューシレージ(粘液質)の付いたパーチメント(硬い殻)の状態にする」ところから始まります(全日本コーヒー協会「加工処理・選別」)。

⏱️ 水洗式(ウォッシュド)の流れ(全日本コーヒー協会の解説より)
Step1:果肉除去機で外皮と果肉を取り除き、ミューシレージの付いたパーチメントの状態にする
↓
Step2:1日発酵させたあと、水洗いする
↓
Step3:天日乾燥または機械乾燥をする(この時点ではパーチメントが付いた状態)
↓
Step4:脱穀機でパーチメントを取り除き、生豆を取り出す

ここで分かるのは、水洗式では早い段階で果肉を取り除き、粘液質を発酵と水洗いで落とし、パーチメントが付いたまま乾燥させてから脱穀して生豆にするということです(協会の解説では、果肉除去の前に水槽に入れて沈んだ完熟豆を選別する工程も挙げられています)。やりがちなのは、「ウォッシュド=豆を水で洗っただけ」と考えること。実際には選別・果肉除去・発酵・水洗い・乾燥・脱穀と複数の工程を経ています。袋に「ウォッシュド」と書かれていたら、この流れを思い出してみてください。

あわせて読みたい
コーヒーの生豆は味も香りもない?精製3方式と輸入の76.4%を占める3ヵ国 通販サイトや専門店の棚で、いつもの茶色い豆とは違う、淡い色の豆を見かけたことはありませんか。それがコーヒーの生豆です。焙煎する前のコーヒー豆のことで、家で焙...

非水洗式(ナチュラル)は実のまま約2週間の天日乾燥

もう一つの代表的な方法が非水洗式(ナチュラル)です。全日本コーヒー協会の解説では、「収穫したコーヒーの実を乾燥場に広げ2週間程度、天日で乾燥させる」と書かれていて、乾燥のあとに脱穀機で果肉とパーチメントを取り除いて生豆を取り出します(全日本コーヒー協会「加工処理・選別」)。

水洗式との違いは、果肉を取り除くタイミングです。水洗式は最初に果肉を除くのに対し、非水洗式は実のまま乾燥させ、最後に果肉とパーチメントをまとめて取り除きます。つまり、生豆になるまでの間、果肉と一緒にいる時間の長さが違うわけです。同じ国・同じ農園の豆でも、精製方法が違えば別の工程をくぐってきた豆になります。

やりがちな失敗は、産地だけを見て豆を比べ、精製方法の違いを見落とすことです。「同じエチオピアなのに印象が違う」と感じたとき、その理由が産地ではなく精製方法にある可能性もあります。

コツは、豆の袋で生産国名の近くに「ウォッシュド」「ナチュラル」といった表示がないかを確かめること。産地と精製方法をセットでメモしておくと、比べるときの条件がそろえやすくなります。

スクリーンと欠点豆、産地で行われる選別

精製のあと、生豆は選別にかけられます。全日本コーヒー協会の解説では、「生豆の大きさは穴のあいたふるい(スクリーン)を通して、大粒から小粒まで仕分けられ、選別されます」と説明されています(全日本コーヒー協会「加工処理・選別」)。さらに、鑑定は外観と風味の2つの要素で行われ、欠点豆は不完全な豆や混入した異物の数によって選別されるとされています。

この選別があるから、同じ産地の豆でも粒の大きさや欠点豆の混入の少なさで区分された豆が流通します。産地の名前だけでなく、「どれだけ丁寧に選別された豆か」も品質に関わるということですね。後で紹介する日本スペシャルティコーヒー協会の定義にも「選別」という言葉が入っています。

やりがちな誤解は、粒の大きさの区分を味の等級だと考えてしまうことです。スクリーンは穴のあいたふるいで大きさを仕分けるもので、それ自体が味の良し悪しを示すわけではありません。

コツは、袋に等級らしき表示があったら、それが「大きさ」の区分なのか「欠点豆の数」の区分なのかを、生産国の表示ルールに照らして確かめることです。

麻袋に書かれる生産国名・農園名・等級

選別された生豆は、産地から消費国へ運ばれます。全日本コーヒー協会の輸出入の解説では、「精製されたコーヒー生豆は輸出から輸入まで、さまざまな品質検査を経て、各工場へ配送されます」と書かれています(全日本コーヒー協会「輸出入」)。

同じページによると、生豆の輸送・保管には通気性がよく耐久性に優れた麻袋が使われ、麻袋には生産国名・内容量・農園名・銘柄・等級・管理番号などが記載されます。私たちが店頭で見る「生産国」「農園名」「銘柄」の情報は、もとをたどればこうした産地からの記録につながっているわけです。

やりがちなのは、袋に国名しか書かれていない豆と、農園名まで書かれた豆を同じ情報量だと考えることです。農園名や管理番号までたどれる豆は、どこで誰がつくったかがより具体的に分かります。

コツは、豆を選ぶときに、袋の表示が「国名だけ」なのか「地域・農園まで」なのかを見ること。産地の情報の細かさは、次の見出しで扱うトレーサビリティの考え方にもつながっています。

産地の情報を豆選びにどう生かす?

産地は将来も今と同じとは限りません。Ovalle-Riveraら(2015年、PLoS ONE)は、2050年代の気候でアラビカ種の栽培適性が低い標高と高い緯度で下がり、主要産地のあいだで生産が移る可能性があると予測しています(エチオピア・ケニアは適性が高まり、インド・ベトナムは下がるという予測)。これはあくまで研究の予測で、2050年問題の全体像はコーヒーベルトの記事で扱っています。

スペシャルティコーヒーの定義に「生産国」が入っている理由

産地の情報を豆選びに生かすうえで知っておきたいのが、日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)の定義です。SCAJは要件の一つとして「生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。」を挙げています(日本スペシャルティコーヒー協会「スペシャルティコーヒーの定義」)。

ここで注目したいのは、定義が産地での栽培・収穫・生産処理・選別という工程から書かれていることです。この記事で見てきた精製や選別の話が、そのまま品質の考え方につながっています。さらにSCAJは同じページで「スペシャルティコーヒーの要件として、サステナビリティとトレイサビリティの観念は重要なものと考える。」としています(日本スペシャルティコーヒー協会)。

トレーサビリティ、つまりどこでどうつくられたかをたどれることが重視されているのは、産地の情報そのものが品質を判断する手がかりになるからだと読めます。麻袋に農園名や管理番号が書かれるという話とも重なりますね。

やりがちなのは、「スペシャルティ=特定の国の豆」と考えること。定義は国名ではなく、産地での工程と品質管理の適正さで書かれています。

読者タイプ別、産地の情報の使い方

最後に、ここまでの情報を家での豆選びにどう生かすかを、タイプ別に整理してみます。

まず、豆選びを始めたばかりの人は、日本の輸入上位国(ブラジル・ベトナム・コロンビア)の豆から見てみるのが入りやすいでしょう。流通量が多いぶん、焙煎度や挽き方の選択肢を見つけやすいからです。次に、産地ごとの違いを知りたい人は、焙煎度をそろえたうえで国だけを変えて比べると、条件の差が分かりやすくなります。焙煎度で味が変わる仕組みは別記事で解説しています。

どこでどうつくられたかを知りたい人は、袋に地域名・農園名・精製方法まで書かれた豆を選ぶと、SCAJが重視するトレーサビリティの考え方に沿った選び方になります。統計や産地の動きに興味がある人は、ICO統計と協会の輸入統計を年ごとに見比べてみると、産地の変化が数字で追えます。

📌 押さえておきたいポイント

産地の情報は「生産国」「種(アラビカ/ロブスタ)」「精製方法」「地域・農園名」の4つに分けて読むと整理しやすくなります。比べるときは、変える条件を1つに絞り、ほかの条件(焙煎度など)をそろえるのがコツです。

注意点として、産地の情報だけで味を決めつけないこと。精製、焙煎、淹れ方が重なって一杯の味になるので、産地は「選ぶときの地図」として使うのがちょうどいい使い方です。

まとめ

☕ この記事の結論

コーヒーの産地は約70ヵ国以上、多くが北緯25°〜南緯25°のコーヒーベルトに集まります。まず袋の生産国名を輸入上位国と照らしてみましょう。

✅ 要点チェック
  • ✔ 生産量1位:ブラジル(ICO・2024生産年度)
  • ✔ 日本の輸入:上位3か国で約4分の3(2025年)
  • ✔ 順位のズレ:グアテマラは世界11位・日本4位
  • ✔ 2つの種:アラビカ6割弱・ロブスタ4割強
  • ✔ 精製:水洗式と非水洗式で工程が違う

次に豆を買うときは、袋の生産国名を見て「コーヒーベルトのどの地域の国か」「日本の輸入上位に入る国か」を思い浮かべてみてください。そこに種(アラビカ/ロブスタ)と精製方法(ウォッシュド/ナチュラル)の表示が加われば、その豆がどこでどう育ち、どんな工程を経て届いたのかが一枚の地図のように見えてきます。最初の一歩としては、焙煎度をそろえて生産国だけが違う豆を2種類選び、袋の表示を並べて読み比べてみるのがおすすめです。銘柄名と国名の対応、精製方法の違いに気づくだけでも、豆選びの軸がはっきりしてきます。

※統計は記事内に記載した年版の値です。最新情報は公式サイトでご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コーヒーの教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

コメント

コメントする

目次