エスプレッソを淹れたのに、表面の泡が白っぽくてすぐに消えてしまう。お店で見るような、カップ全体を覆う茶色の泡の層にならない。家でエスプレッソマシンや直火式の器具を使い始めると、多くの人がこの泡の出来ばえでつまずきます。この泡が、今回のテーマのクレマです。
先に結論をお伝えすると、クレマはエスプレッソの表面を覆う細かい泡のことで、名前はイタリア語のクリームにちなんでいます。メーカーの取扱説明書では、理想的なクレマはクリーミーなキャメル色とされ、白っぽくてすぐ消えるときの原因として、粉の量・押し詰め・挽き目・粉の鮮度・温度などが挙げられています。つまり、クレマは偶然できるものではなく、淹れ方の条件を映す鏡のような存在なんです。
この記事では、デロンギの取扱説明書、Specialty Coffee Association(SCA)のコラム、ビアレッティの公式資料など、メーカーと業界団体の一次情報だけをもとに、クレマの定義と由来、見た目でわかる抽出の状態、味や香りとの関係、そして器具別の見直しポイントまでを順番に整理します。
・クレマの定義と、名前がクリームに由来する理由
・理想のクレマの色と、白っぽい・濃い茶色で薄いときの意味
・クレマが出ない、すぐ消えるときに見直す原因と対処
・全自動マシンや直火式(ブリッカ)でクレマを作るときの注意点
コーヒーのクレマとは?エスプレッソの表面を覆う細かい泡のこと

取扱説明書の定義は「表面を覆う細かい泡」
クレマとは、エスプレッソを抽出したときに液体の表面を覆う、きめの細かい泡の層のことです。黒っぽいコーヒー液の上に、茶色い泡がふたのように乗っている、あの状態を指します。
根拠として、デロンギの手動式エスプレッソ・カプチーノメーカーの取扱説明書では、エスプレッソには表面を覆う細かい泡ができ、それをクレマと呼ぶと説明されています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。同じデロンギの全自動コーヒーマシンの取扱説明書でも、クレマのあとに括弧書きで表面を覆う細かい泡と添えられていて、メーカーとしての説明が一貫しているのがわかります(デロンギ 取扱説明書(マグニフィカS))。
家で淹れるときにやりがちなのが、表面に大きな泡がぽつぽつ浮いているだけの状態を、クレマができたと受け取ってしまうことです。説明書が言っているのはあくまで細かい泡で、表面を覆う層になっているかどうかがポイント。大きな泡がまばらに浮き、すぐに割れてしまうなら、後で紹介する抽出条件の見直しが必要なサインかもしれません。
見るタイミングは、カップに注ぎ終わった直後です。真上から見て、液面が泡の層で覆われているか、色はどうかを確かめてみてください。エスプレッソそのものの特徴や、カプチーノなどミルクを合わせた飲み物との違いは、こちらで詳しくまとめています。

理想の色は「キャメル色」とされている
クレマの出来を判断するいちばんわかりやすい手がかりは色です。取扱説明書では、理想的なクレマは褐色から焦げ茶色に近いキャメル色とされています。
デロンギの取扱説明書には、「理想的なクレマはクリーミーで、褐色または焦げ茶色に近いキャメル色をしています。」と書かれています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。ここで大事なのは、色だけでなくクリーミーという質感にも触れている点です。泡が粗くてざらついて見えるのではなく、なめらかに液面を覆っている状態が理想とされているわけですね。
具体的な失敗例として多いのは、白っぽいクレマを見て、泡が出ているから大丈夫と判断してしまうケースです。同じ取扱説明書のトラブル表では、白っぽくてすぐに消えるクレマは、抽出がうまくいっていない症状として扱われています。泡の有無だけで判断すると、改善のきっかけを逃してしまいます。
コツは、明るい場所で白いカップを使って見ることです。カップの内側が白いと、クレマの色味が比べやすくなります。キャメル色かどうか、白っぽいか、逆に濃い茶色で層が薄いかの3パターンを意識しておくと、次に何を調整すればいいかが見えてきます。
クレマ(crema)=エスプレッソの表面を覆う細かい泡。デロンギの取扱説明書では、理想的なクレマはクリーミーで、褐色または焦げ茶色に近いキャメル色と説明されています。SCAのコラムによれば、名前はイタリア語でコーヒーのクリームを意味する呼び名から来ています。
実は、クレマが安定する仕組みはまだ研究の途中
クレマの成分やできる仕組みについては、さまざまな説明を見かけます。ただ、学術的な一次情報をたどると、すべてが解明されているわけではありません。意外と知られていないけれど、クレマがなぜ泡のまま保たれるのかは、研究者のあいだでもまだ謎が多いテーマなんです。
コーヒー科学の書籍 The Craft and Science of Coffee(2017年)に収録された、Folmer、Blank、Hofmannの3氏によるクレマの章では、クレマができる仕組みはある程度研究されている一方で、「the molecular science on the stabilization of the crema is still shrouded in mystery」と記されています(ミュンヘン工科大学 研究成果ポータル)。訳すと、クレマの安定化に関する分子レベルの科学は今も謎に包まれている、という意味です。
よくある失敗は、ネットで見かけた成分の説明を、そのまま絶対の理屈として覚えてしまうことです。その説明が一次情報で裏付けられているとは限りません。この記事でも、クレマの成分を言い切る書き方は避けています。
家で淹れる立場で役立つのは、仕組みの細部よりも、どんな条件でクレマが薄くなるかというメーカーの実用的な情報です。成分の話は研究が続いている分野と受け止め、まずは取扱説明書のトラブル表を手元の器具で確かめていくのが近道です。
なぜクリームと呼ばれる?クレマという名前が定着するまで
名付けたのはGaggia、意味はコーヒーのクリーム
クレマという呼び名は、イタリア語のクリームにちなんだものです。泡の層を、厚くて濃いクリームになぞらえたのが始まりとされています。
SCAのコラム Coffee Decoded(寄稿:Peter Giuliano氏)では、「Gaggia called this crema caffé—’coffee cream’—drawing a comparison between this coffee and thick, rich cream.」と紹介されています(SCA「Coffee Decoded: Coffee Crema」)。Gaggiaがこれをクレマ・カフェ、つまりコーヒーのクリームと呼び、この泡を厚く濃いクリームと比べた、という内容です。
名前の由来を知らないままだと、クレマを単なる泡、あるいはミルクの泡と同じものだと思い込んでしまうことがあります。けれどもクレマはミルクを加えてできるものではなく、エスプレッソそのものの表面にできる泡です。カプチーノやラテのミルクフォームとは別物と覚えておくと、メニューの説明を読むときにも混乱しません。
ポイントは、クリームのたとえが厚さと濃さを表していることです。薄くてすぐに消える泡ではなく、ある程度の厚みを持って表面を覆う状態がクレマのイメージだと考えると、次に紹介する理想の見た目ともつながってきます。
名前が定着し、エスプレッソに欠かせない要素に
クレマという呼び名は、その後広く使われるようになり、今ではエスプレッソの大切な要素の一つとして扱われています。
同じSCAのコラムでは、「The name stuck: today we refer to the foam on top of an espresso as ‘crema,’ and we consider it an essential element of espresso.」と書かれています(SCA「Coffee Decoded: Coffee Crema」)。名前が定着し、今日ではエスプレッソの上の泡をクレマと呼び、エスプレッソに欠かせない要素と考えている、という意味です。
ここでやりがちなのは、欠かせない要素という言葉を、クレマさえあればおいしいと読み替えてしまうことです。コラムが言っているのは、クレマがエスプレッソを構成する大切な部分だという位置づけで、クレマの有無だけで味のすべてが決まるという話ではありません。実際、デロンギの取扱説明書でも、クレマの状態と一緒に抽出時間や味の出方を確かめるよう案内されています。
クレマは、エスプレッソの出来を外から見て判断できる数少ない手がかりです。味見とあわせて表面の状態も見る習慣をつけると、日によって違う仕上がりの理由を考えやすくなります。
持続する厚いクレマは品質と結びつけられてきた
厚く、長く残るクレマは、品質の高いコーヒーと結びつけて受け止められてきました。家でクレマの出来が気になるのも、こうした見方が広く共有されているからだと考えられます。
SCAのコラムでは、持続する厚いクレマが品質の高いコーヒーと結びつけられていることが紹介されています(SCA「Coffee Decoded: Coffee Crema」)。また、デロンギの取扱説明書でも、グラニュー糖をのせてもすぐに沈まない厚みのあるクレマが、おいしいエスプレッソの目安として挙げられています。業界団体のコラムとメーカーの説明書の両方で、厚みと持続性が評価の軸になっているわけです。
具体的な場面で言うと、抽出直後はクレマがあったのに、カップを運んでいるうちに消えてしまう、ということがあります。これは、取扱説明書でいう白っぽいクレマですぐに消える状態に近く、厚みと持続性が足りていないサインと読めます。
注意したいのは、結びつけられてきたという表現のとおり、これは評価のされ方の話だということです。クレマが厚いことが品質を保証するとまでは書かれていません。目安の一つとして、抽出時間や味とあわせて判断するのがおすすめです。
クレマの語源はクリーム。SCAのコラムによると、Gaggiaがこの泡を厚く濃いクリームになぞらえて呼んだ名前が定着し、今ではエスプレッソに欠かせない要素とされています。厚く長く残るクレマは品質と結びつけて見られてきましたが、クレマだけで味のすべてが決まるわけではありません。
良いクレマと失敗したクレマは何が違う?色と厚みで見分ける3パターン

理想はクリーミーなキャメル色
理想のクレマは、なめらかな質感で、褐色から焦げ茶色に近いキャメル色をしています。これが、抽出がうまくいったときの基準になる見た目です。
先ほども紹介したとおり、デロンギの取扱説明書では、理想的なクレマはクリーミーでキャメル色と説明されています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。同じ説明書では、エスプレッソは1杯約30mLあたり約20秒で抽出するのが理想とされていて、色の基準と抽出時間の基準がセットで示されています。
家でよくあるのは、色だけを見て時間を測っていないケースです。キャメル色に近いように見えても、抽出時間が極端に短かったり長かったりすれば、味は理想から外れているかもしれません。逆に、時間はほぼ基準どおりなのに色が白っぽいなら、粉の鮮度や温度など、時間以外の原因を疑うことになります。
コツは、抽出のたびにクレマの色と抽出時間、出来上がった量の3つをセットで見ることです。スマートフォンのストップウォッチで時間を測り、カップの目盛りや計量カップで量を確かめておくと、次回の調整がぐっと楽になります。
白っぽくてすぐ消えるのは抽出が足りないサイン
クレマが白っぽく、すぐに消えてしまう場合は、抽出が足りていない状態と考えられます。取扱説明書のトラブル表でも、この症状には抽出時間が短くなる原因が並んでいます。
デロンギの取扱説明書では、白っぽいクレマですぐに消える症状の原因として、粉の押し詰めが弱い、フィルターホルダーが給湯口にしっかり取り付けられていない、粉の量が少ない、挽き目が粗い、粉が古い、カップとフィルターを湯煎していない、抽出温度の設定や水温が低い、といった項目が挙げられています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。
具体的には、ドリップ用に挽いてもらった粉をそのままエスプレッソマシンに使ったときに起こりやすい症状です。挽き目が粗いと湯が通り抜けやすく、抽出時間が短くなります。また、開封してしばらく経った粉を使ったときも、同じ説明書で原因の一つとされている粉が古い状態に当てはまります。
見直すときは、まず抽出時間を測ってみてください。約30mLの抽出が約20秒より明らかに短ければ、挽き目・粉の量・押し詰めのどれかを調整する方向です。時間はおおむね合っているのに白っぽいなら、粉の鮮度や温度、カップの予熱を見直します。
濃い茶色で層が薄いのは抽出しすぎのサイン
反対に、クレマが濃い茶色で、層が薄い場合は抽出しすぎの状態とされています。白っぽい症状とは逆向きの調整が必要になります。
デロンギの取扱説明書では、濃い茶色のクレマで層が薄い症状を抽出しすぎとしており、原因として粉の押し詰めすぎ、粉の量が多い、挽き目が細かい(抽出に時間がかかる)が挙げられています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。対処は、押し詰めを弱くする、粉の量を減らす、挽き目を粗くする、の3つです。
家でやりがちなのは、クレマを厚くしたい一心で粉を細かく、量を多く、押し詰めを強くしすぎることです。そうすると湯が通りにくくなって抽出時間が延び、今度は濃い茶色で層が薄い状態になってしまいます。同じ説明書では、抽出時間が長すぎるとえぐみが感じられるとも書かれているので、味の面でも注意が必要です。
見分け方のコツは、色の濃さと層の厚みを分けて見ることです。色が濃いのに層は薄い、という組み合わせなら抽出しすぎ。色が薄くて層もすぐ消えるなら抽出不足。2つの軸で見ると、どちらに調整すべきかを取り違えにくくなります。
厚みの目安はグラニュー糖が沈まないかどうか
クレマの厚みを確かめる目安として、取扱説明書ではグラニュー糖をのせる方法が紹介されています。のせてもすぐに沈まなければ、厚みのあるクレマと言えるわけです。
デロンギの取扱説明書には、「グラニュー糖をのせてもすぐに沈まない厚みのあるクレマなら、エスプレッソの香りが閉じ込められ、また冷めにくくもなり、おいしいエスプレッソを楽しむことができます。」と書かれています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。全自動マシンの製品紹介でも、グラニュー糖を載せてもすぐには沈まない厚みのあるクレマという表現が使われています(デロンギ公式 マグニフィカS 製品ページ)。
試すときの失敗例は、スプーンでたっぷりの砂糖を勢いよく落としてしまうことです。重さで泡の層を突き破ってしまい、厚みがあっても沈んで見えることがあります。少量を、液面の近くからそっとのせるほうが、クレマの厚みを判断しやすくなります。
砂糖を入れない飲み方の人は、無理に試す必要はありません。色と、注いでから泡が残っている時間を見るだけでも、ある程度の判断はできます。砂糖を入れて飲む日に、ついでに確かめてみる程度で十分です。
| 理想のクレマ | クリーミーで、褐色または焦げ茶色に近いキャメル色(デロンギ取扱説明書) |
| 白っぽくすぐ消える | 抽出が足りない状態。押し詰め・粉の量・挽き目・粉の鮮度・温度などを見直す |
| 濃い茶色で層が薄い | 抽出しすぎの状態。押し詰めを弱く・粉を減らす・挽き目を粗くする |
| 厚みの目安 | グラニュー糖をのせてもすぐに沈まないか |
クレマがあると味はどう変わる?香りと苦味の感じ方
クレマがあると香ばしさを強く感じたという調査
クレマは見た目だけの要素ではなく、飲む人の味の感じ方にも関わっているとされています。SCAのコラムでは、クレマの有無で香ばしさの感じ方が変わったという消費者調査が紹介されています。
SCAのコラムには、「The existence of crema increased consumers’ perception of ‘roasty’ flavors and, when crema wasn’t present, the coffee tasted more ‘carbony’ and bitter.」とあります(SCA「Coffee Decoded: Coffee Crema」)。クレマがあると消費者はロースト感(香ばしさ)をより強く感じ、クレマがないとコーヒーは炭のような風味で苦く感じられた、という内容です。
家での具体的な場面に置き換えると、同じ豆、同じ量で淹れたはずなのに、今日はなんだか焦げっぽく苦い、と感じる日があるとします。そのときクレマがほとんどできていなかったなら、調査の結果とも重なる状態です。味の違和感の原因を豆のせいにする前に、クレマの状態を振り返ってみる価値があります。
注意点として、これは飲む人の感じ方を調べた結果です。クレマが苦味の成分を取り除く、といった仕組みまで示されているわけではありません。クレマができる淹れ方を目指すことが、香ばしさを感じやすい一杯につながりうる、くらいに受け止めておくのが正確です。
なめらかさの感じ方もクレマで変わる
クレマは香りや苦味だけでなく、口当たりのなめらかさの感じ方にも影響すると紹介されています。クリームになぞらえた名前のとおり、舌ざわりにも関わっているわけです。
SCAのコラムでは、先ほどの調査とあわせて、クレマがあることでなめらかさの感覚も増したことが紹介されています(SCA「Coffee Decoded: Coffee Crema」)。デロンギの取扱説明書が理想のクレマをクリーミーと表現していることとも、方向性が一致しています。
よくある失敗は、抽出後にしばらく置いてから飲むことです。白っぽいクレマはすぐに消えると取扱説明書にある通り、クレマが弱い状態で時間を置くと、飲むころには泡がほとんど残っていないこともあります。せっかくクレマができても、口に運ぶまでに消えてしまえば、その違いは感じにくくなります。
コツは、抽出が終わったらなるべく早く飲み始めることです。最初の一口をクレマごと口に含むと、口当たりの違いを確かめやすくなります。カップを温めておくと冷めにくくなり、落ち着いて味わえます。
香りを閉じ込め、冷めにくくする役割
メーカーの取扱説明書では、厚みのあるクレマには香りを閉じ込め、冷めにくくする効果があると説明されています。クレマは液面のふたのような存在とも言えます。
デロンギの取扱説明書では、グラニュー糖をのせてもすぐに沈まない厚みのあるクレマなら、エスプレッソの香りが閉じ込められ、冷めにくくもなると案内されています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。エスプレッソは1杯の量が約30mLと少ないので、冷めやすさは味わいに直結します。
家でありがちなのは、冷えたカップに注いでしまうことです。同じ取扱説明書では、カップとフィルターを湯煎していないことが、白っぽいクレマですぐに消える原因の一つに挙げられています。カップが冷たいと、クレマの持ちにも、冷めにくさにも影響するわけです。
注ぐ前にカップへお湯を入れて温め、捨ててから抽出するのが手軽な対策です。フィルターも同じく温めておくよう説明書で案内されています。ひと手間ですが、クレマの持ちを確かめるうえでも条件をそろえやすくなります。
調査結果は「感じ方」の話として読む
ここまで紹介した調査は、クレマがあると味の感じ方が変わったという結果です。クレマそのものの成分が味をどう変えるのかまでは、一次情報では断定されていません。
前の章で触れたとおり、ミュンヘン工科大学の研究者らによる書籍の章では、クレマの安定化に関わる分子レベルの科学は今も謎が多いとされています(ミュンヘン工科大学 研究成果ポータル)。感じ方の調査と、成分や仕組みの研究は、分けて受け止める必要があります。
やりがちな失敗は、クレマがないから体に悪い、クレマに栄養がある、といった方向に話を広げてしまうことです。一次情報で確認できるのは、見た目・香り・苦味・なめらかさの感じ方との関係までで、それ以上のことは書かれていません。
実用面での受け止め方としては、クレマは抽出がうまくいったかを知らせるサインであり、香ばしさやなめらかさを感じやすくする要素、と理解しておけば十分です。その先の理屈は、研究の進展を待つ分野だと考えておきましょう。
クレマが出ない・すぐ消えるのはなぜ?手動マシンで見直す7つの原因
まずは基準を知る:1杯約30mLを約20秒
クレマの不調を直すには、まず理想の抽出がどんなものかを知っておく必要があります。デロンギの手動式マシンの取扱説明書では、1杯約30mLを約20秒で抽出するのが理想とされています。
同じ取扱説明書には、「抽出時間が長すぎるとえぐみが感じられ、短すぎれば味に深みが出ません。」と書かれています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。トラブル表もこの基準を前提に作られていて、白っぽいクレマは抽出時間が短い側、濃い茶色で層が薄いクレマは長い側の症状として整理されています。
家での失敗として多いのは、量を測らずに、カップがいっぱいになるまで抽出し続けることです。量が増えれば時間も延び、味もクレマの状態も基準から外れていきます。また、時間を測らずに感覚で止めると、毎回の条件がばらつき、どこを直せばいいのかわからなくなってしまいます。
なお、この約30mL・約20秒はデロンギの手動式マシン(EC680)の取扱説明書の例です。他の機種や他社の器具では基準が異なる場合があるので、お使いの機種の取扱説明書も確認してください。自分の器具の基準を一つ決め、それに合わせて量と時間を測るのが出発点です。
粉の量・押し詰め・挽き目の3つで濃さと時間が決まる
手動式のマシンで抽出時間とクレマを左右するのは、主に粉の量、押し詰め具合、挽き具合の3つです。取扱説明書では、この3要素の調整表が示されています。
デロンギの取扱説明書(EC680)では、粉の量の目安として1杯約10gの山盛り、または約8gの小山盛りが示され、押し詰めが強いほど、また挽き目が細かいほど濃く抽出され、抽出時間が長くなると説明されています。反対に、押し詰めが弱いほど、挽き目が粗いほど薄く、抽出時間は短くなります(デロンギ 取扱説明書(EC680))。
具体例として、クレマが白っぽくすぐ消えるなら、取扱説明書の対処は、タンパーでの押し詰めをやや強くする、粉の量を増やす、挽き目の細かい粉を使う、の方向です。逆に濃い茶色で層が薄いなら、押し詰めを弱く、粉を減らす、挽き目を粗くする方向に動かします。
コツは、取扱説明書の言葉どおり、やや強く、のように少しずつ変えることです。3つの要素はどれも抽出時間に効くので、少し動かすだけで結果が変わります。粉はスケールで量って、毎回同じ量から始めると、押し詰めや挽き目の影響を見分けやすくなります。
| 見直す要素 | 白っぽく、すぐ消えるときの原因 | その対処 | 濃い茶色で層が薄いとき |
|---|---|---|---|
| 押し詰め | 押し詰めが弱い | タンパーでやや強く押し詰める | 押し詰めすぎ→弱くする |
| 粉の量 | 粉の量が少ない | 粉の量を増やす | 粉が多い→減らす |
| 挽き目 | 挽き目が粗い | 挽き目の細かい粉を使う | 挽き目が細かい→粗くする |
| 粉の鮮度 | 粉が古い | 新鮮な粉を使う | (表の原因には挙がっていない) |
| 温度 | カップとフィルターを湯煎していない/抽出温度の設定・水温が低い | カップとフィルターを湯煎する/抽出温度を上げる | (表の原因には挙がっていない) |
| 取り付け | フィルターホルダーが給湯口にしっかり付いていない | しっかり取り付ける | (表の原因には挙がっていない) |
出典:デロンギ 取扱説明書(EC680)のトラブル表をもとに編集部が整理。他の機種・他社の器具では内容が異なる場合があります。
古い粉・低い温度・冷えたカップもクレマを弱くする
挽き目や量を合わせてもクレマが白っぽいときは、粉の鮮度と温度を疑ってみてください。取扱説明書では、どちらも白っぽくすぐ消えるクレマの原因として挙げられています。
デロンギの取扱説明書(EC680)のトラブル表には、「コーヒー粉が古い。」「抽出温度の設定が低い。」という原因が並んでいます(デロンギ 取扱説明書(EC680))。あわせて、カップとフィルターを湯煎していないことも原因とされ、対処として新鮮な粉を使う、カップとフィルターを湯煎する、抽出温度を上げる、が案内されています。
具体的な場面では、買ってきた粉を少しずつ使い、数週間かけて使い切るような飲み方をしていると、後半ほどクレマが弱くなっていくことがあります。また、冬場の冷えたキッチンで、マシンを温めきらないまま1杯目を淹れると、温度が足りない状態になりやすくなります。
対策は、粉は使い切れる量ずつ用意すること、そしてカップとフィルターをお湯で温めてから抽出することです。抽出温度を設定できる機種なら、取扱説明書の手順に沿って設定を確認してみてください。粉の保存方法については、こちらの記事も参考になります。

エスプレッソに向く粉と焙煎度を取扱説明書で確かめる
クレマの出来は、使う粉の種類にも左右されます。デロンギの取扱説明書(EC680)では、エスプレッソ用の粉、またはやや深煎りの豆で、極細挽きや細挽きにした粉が適しているとされています。
同じ取扱説明書では、やや深煎りの例として、ハイロースト・シティロースト・フルシティローストなどが挙げられています(デロンギ 取扱説明書(EC680))。焙煎度の名前と、浅煎り・中煎り・深煎りの区分の関係は、資料によって分け方が異なることもあるので、焙煎度そのものの整理は別の記事を参照してください。

家でありがちな失敗は、ペーパードリップ用の中挽きの粉を、そのままエスプレッソマシンに使うことです。取扱説明書が示す細挽き・極細挽きより粗いため、トラブル表でいう挽き目が粗い状態になり、白っぽくすぐ消えるクレマにつながりやすくなります。
豆や粉を買うときは、袋の表示でエスプレッソ用かどうか、挽き具合の記載があるかを確認しましょう。お店で挽いてもらう場合は、エスプレッソマシンで使うと伝えるのが確実です。
クレマが白っぽいからと、粉を増やし、挽き目を細かくし、押し詰めも強くする——と3つを同時に変えると、今度は抽出に時間がかかりすぎて、濃い茶色で層が薄いクレマ(抽出しすぎ)になりがちです。取扱説明書の調整表では、どれも濃く・抽出時間が長くなる方向に効く要素です。1回に1か所だけ、少しずつ変え、そのたびに約30mL・約20秒の基準と照らし合わせましょう。
全自動マシンでクレマが少ないときは何を調整する?
抽出が早すぎるときの4つの対処
豆を挽くところから自動で行う全自動マシンでも、クレマが少ない、コーヒーがクリーミーでないという悩みは起こります。デロンギの全自動マシン(マグニフィカS)の取扱説明書では、抽出が早すぎる場合の対処が4つ示されています。
その4つとは、抽出温度をレベル3か4に設定する、グラインダーノブを細かいほうへ1目盛り回す、新鮮なエスプレッソ用の豆を使う、粉の量を増やす(最大で計量スプーン山盛り1杯)、です。取扱説明書には「グラインダーノブを細かいほう(反時計回り)に 1 目盛り回してください。」とも書かれています(デロンギ 取扱説明書(マグニフィカS))。
家での失敗例は、グラインダーノブを一気に何目盛りも回してしまうことです。取扱説明書が1目盛りと案内しているのは、それだけで抽出に変化が出るからだと読めます。大きく動かすと、今度は抽出が遅くなりすぎることもあります。
なお、これらの数値や手順はマグニフィカSの取扱説明書の例です。他の機種や他社のマシンでは、設定の名前や段階が同じとは限りません。お使いの機種の取扱説明書で、クレマが少ない場合の項目を探してみてください。
抽出が遅すぎるときは逆方向に
反対に、抽出が遅すぎる場合は、早すぎるときとは逆方向に調整します。取扱説明書では、挽き目を粗くし、粉の量を減らす方向の対処が案内されています。
マグニフィカSの取扱説明書では、抽出が遅い場合の対処として、グラインダーノブを粗いほうへ1目盛り回す、豆量調節つまみをMINのほうへ回す、粉の量を減らす、が示されています(デロンギ 取扱説明書(マグニフィカS))。手動式マシンの調整表と同じく、挽き目と粉の量が抽出の速さを左右する、という考え方は共通しています。
やりがちなのは、クレマを増やそうとして細かくしすぎた結果、抽出が遅くなったのに、そのまま使い続けてしまうことです。抽出が遅すぎる状態は、手動式の取扱説明書でいう抽出時間が長すぎる状態に近く、えぐみにつながるおそれがあります。
調整のコツは、変えたら必ず何杯か淹れて結果を見ることです。1回の抽出だけで判断せず、同じ設定で数杯続けて様子を見てから、次の1目盛りを決めると、行き過ぎを防げます。
豆ホッパーの豆は3日以内に使うのが目安
全自動マシンでは、豆ホッパーに入れたままの豆の鮮度もクレマに関わります。マグニフィカSの取扱説明書では、ホッパー内の豆は3日以内に使うことがすすめられています。
取扱説明書には、「豆ホッパーふたには、ある程度の遮光性と密閉性があるため、残った豆はそのまま豆ホッパー内に入れておいてかまいませんが、3 日以内にお使いいただくことをおすすめします。」と書かれています(デロンギ 取扱説明書(マグニフィカS))。クレマが少ないときの対処にも「新鮮なエスプレッソ用の豆を使用してください。」とあり、鮮度が重視されていることがわかります。
家でやりがちなのは、ホッパーに豆をたっぷり入れておき、1日1杯ずつ何週間もかけて使い切ることです。手間はかかりませんが、取扱説明書の目安を大きく超えてしまいます。日がたつにつれてクレマが少なくなってきたと感じたら、豆の入れ方を見直すタイミングです。
対策は、ホッパーには3日以内に使い切れる量だけを入れ、残りの豆は密閉できる容器で別に保存しておくことです。飲む量が少ない家庭ほど、こまめに少量ずつ補充するほうが、取扱説明書の目安に沿いやすくなります。
冷凍・冷蔵した豆は結露をなくしてから
豆を冷凍庫や冷蔵庫で保存している場合は、取り出してすぐにマシンへ入れないことが大切です。取扱説明書では、結露をなくすために室内にしばらく置いてから使うよう案内されています。
マグニフィカSの取扱説明書では、冷凍・冷蔵した豆は結露をなくすため、室内にしばらく置いてから使用するよう書かれています(デロンギ 取扱説明書(マグニフィカS))。冷たい豆を暖かい部屋に出すと、表面に水滴がつきやすくなるためです。
具体的な場面で言うと、朝の忙しい時間に冷凍庫から豆を出して、そのままホッパーへ入れてしまうケースです。結露した豆をグラインダーに通すことになり、取扱説明書の案内からは外れた使い方になってしまいます。
前日の夜に、使う分だけを冷凍庫から出しておく、という段取りにすると、朝に慌てずに済みます。出す量を少量にしておけば、残りの豆を何度も出し入れせずに済み、結露の心配も減らせます。
全自動マシンは手軽なぶん、豆の管理がおろそかになりがちです。ホッパーに何週間分も入れっぱなしにすると、取扱説明書の目安(3日以内)を超えてしまいます。また、冷凍庫から出した豆をすぐ入れると、結露した状態で挽くことになります。ホッパーには3日以内に使い切れる量だけを入れ、冷凍・冷蔵した豆は室内にしばらく置いて結露をなくしてから使いましょう。
エスプレッソマシンがなくてもコーヒーにクレマは作れる?直火式とドリップの場合
ブリッカは圧力技術とシリコーンバルブで泡を作る
エスプレッソマシンがなくても、直火式の器具の中には、クレマをのせたコーヒーを作ることをうたったものがあります。その一つが、ビアレッティのブリッカです。
ビアレッティの公式製品ページでは、「Brikka uses patented pressure technology and a silicone valve」と説明されています(ビアレッティ公式 Brikka 製品ページ)。特許を取得した圧力技術とシリコーンバルブで、クレマをのせたコーヒーを作る器具として、標準的なモカポットとの違いが紹介されています。
注意したいのは、ブリッカの泡を、エスプレッソマシンのクレマとまったく同じものと考えてしまうことです。ブリッカの英語版取扱説明書では、この泡は froth(泡)という言葉で書かれています。器具の仕組みが違う以上、エスプレッソマシンのクレマと同一だとまでは言えません。
また、一般的なモカポットでも同じ泡ができる、とは書かれていない点にも注意してください。公式ページでは、ブリッカの特徴として標準的なモカポットとの違いが説明されています。直火式でクレマのような泡を楽しみたい場合は、この違いを理解したうえで器具を選ぶのがよいでしょう。
| 仕組み | 特許取得の圧力技術とシリコーンバルブで、泡をのせたコーヒーを作る |
| 熱源 | ガス・電気・キャンプ用コンロで使用可。IH調理器は別売のアダプタープレートが必要(公式US製品ページ) |
| 粉の入れ方 | モカ用の粉を、押し固めずにファンネルフィルターへ入れる |
| お手入れ | 使用後は洗剤を使わず水洗い。食洗機は使えない。安全弁の点検を定期的に |
手順の要点は「押し固めない・中火・すぐ外す」
ブリッカで泡を作るには、取扱説明書の手順を守ることが何より大切です。特に、粉を押し固めないこと、火加減、そして泡ができたらすぐに熱源から外すことがポイントになります。
英語版の取扱説明書では、付属の計量カップで冷水を入れ、「Fill the funnel filter (8) with ground coffee for Moka, without pressing it down」と、モカ用の粉を押し固めずに入れるよう案内されています。電気やセラミックの加熱面では「In case of electric/ ceramic glass plate, maintain a medium setting Fig. E.」と中火を保つよう書かれ、泡の形成が終わったら「Immediately remove Brikka from the heat source.」とすぐに熱源から外すよう指示されています(ビアレッティ Brikka 取扱説明書)。
やりがちな失敗は、エスプレッソマシンの感覚で粉をぎゅっと押し固めてしまうことと、抽出が終わったあとも火にかけたままにすることです。取扱説明書には「When the coffee has come out, do not leave Brikka on the heat source. The froth might disappear and the coffee might overflow from the upper part.」とあり、置いたままにすると泡が消え、上部からあふれるおそれがあると注意されています。
泡ができなかったときについて、取扱説明書のFAQでは、水位を確認すること(必ず付属の計量カップを使う)、泡の形成が終わったら熱源から外すことが案内されています。水を目分量で入れていないか、まず見直してみてください。
IH・安全弁・手入れで気をつけたいこと
ブリッカを長く使うには、熱源の確認と、安全弁の点検、使用後の手入れが欠かせません。どれも公式資料で案内されている内容です。
公式US製品ページでは、ガス・電気・キャンプ用コンロで使え、IH調理器で使う場合は別売のアダプタープレートが必要とされています(ビアレッティ公式 Brikka 製品ページ)。また取扱説明書では、飲料水に含まれる石灰がバルブの穴に付着して詰まるおそれがあるとして、洗浄のときにバルブの小さなピストンを軸に沿って動かし、定期的に点検するよう案内されています。
家でやりがちなのは、IHのコンロにそのまま載せてしまうこと、そして手入れのときに食器用洗剤や食洗機を使ってしまうことです。公式の案内では、使用後は洗剤を使わずに水洗いし、食洗機は使えないとされています。
コツは、使い終わったら冷めてから分解して水洗いし、そのついでに安全弁のピストンを動かして点検する、という流れを習慣にすることです。点検を後回しにしがちな人ほど、洗う工程とセットにしておくと忘れにくくなります。
ドリップの泡はクレマ?器具別に見直す場所
ペーパードリップで蒸らしたときにふくらむ泡を、クレマと呼んでいいのか迷う人もいるでしょう。今回確認した範囲では、クレマはエスプレッソ(とブリッカのような器具)の文脈で説明されていました。
2026年10月時点で、デロンギの取扱説明書2点、ビアレッティの公式資料、SCAのコラムを確認した範囲では、ドリップでできる泡をクレマと呼ぶ記述は見当たりませんでした(SCA「Coffee Decoded: Coffee Crema」)。SCAのコラムも、クレマをエスプレッソの上の泡として説明しています。ドリップの泡とクレマは、少なくとも同じ言葉で説明されているものではない、と考えておくのが無難です。
そのうえで、器具別に最初に見直す場所をまとめると次のとおりです。手動式マシンを使っている人は、まず1杯の量と抽出時間を測り、取扱説明書の基準と比べる。全自動マシンの人は、ホッパーの豆の鮮度と、グラインダーの目盛り。ブリッカの人は、付属の計量カップで水を量っているか、泡ができたらすぐ火から外しているか。ドリップ派の人は、クレマを目指すのではなく、蒸らしや湯温など、ドリップの基本を確かめるのが近道です。
器具ごとに見るべき場所が違うのは、クレマのでき方がそれぞれの仕組みに左右されるからです。自分の器具の取扱説明書を開き、クレマや泡についての項目を探すところから始めてみてください。
まとめ
クレマは、抽出がうまくいったかどうかを目で確かめられる手がかりです。名前のとおりクリームのような厚みとなめらかさが理想とされ、香ばしさの感じ方や冷めにくさにも関わると紹介されています。次に淹れるときは、まず1杯の量と抽出時間を測り、クレマの色と並べて記録してみてください。基準とのずれがわかれば、粉の量・挽き目・押し詰め・鮮度のどこを1か所だけ動かせばいいかが見えてきます。
※器具の仕様や取扱説明書の内容は改訂されることがあります。お使いの機種の最新の取扱説明書もあわせてご確認ください。

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